第18話


洞窟の中へと入るにつれ、虫の数も増えてくる。

やっぱり虫ってこういう場所が好きなのか?

マリサさん達の使うフラッシュと魔法。

そのおかげで周りが明るくなり歩きやすいが、その光に蛾のような虫が集まってきている。

なんで虫って街灯とかの明るい所に集まってくるんだろうな…

そして俺はこの洞窟に入ってからずっと沙月の後ろにしゃがみついている。

男として情けないのだが、ほんとこればかりは…羽がついてるとかついてないとか関係なく“虫“ってのがほんとに無理なんだ。

それでさっきから沙月は機嫌がいいのか鼻歌を歌いながら歩いている。

「もうここにずっといよっかな〜」とかいってくるし…冗談だよな?

けどこういう時、沙月は一番頼りになる。

虫が近づいて来ないようにバリアみたいなの張ってくれるし。

どこで覚えたんだ?って聞けば

「なんとなくやってみたら使えた」

とのこと…

どっかのCMでの見えないバリアタイプの虫除けスプレーとかよりずっといいな!

そんなどうでもいい事を考えながらさらに奥へと進んでいく。


「なんだ?あれ」

洞窟が急に広くなる。

白いトカゲ?

「ん?初めて見るのか?アレが本来、私たちが受けていたホワイトドラゴンだよ」

「そうか…見間違いだったら悪いんだが、他にもいるように見えるんだけど」

一匹二匹とかじゃなくてぱっと見…二十くらい。

「なんだいってなかったか?あいつらは群れで生活し洞窟の中をこんなふうに広げて住むんだ」

いや、群れで生活するとか今初めて聞いたわ。

「じゃ、サッと倒しますか!」

そう言い勇者達がホワイトドラゴンへと向かっていく。

「俺たちも行くか」


「すごいんだな」

流石は勇者だ。

勇者というだけあってホワイトドラゴンの半分を一人で倒し、他の仲間へと指揮も完璧にこなしていた。

「ま、まぁね」

だが、こんなパーティーでも負けた

黒いドラゴンーー

「なんだ?風?」

洞窟の中に黒い風が吹き始める。

「来るぞ!」勇者がそう強く叫ぶ。

その時ーー

「もう来てるよ…」

耳元でそう囁く声が聞こえる。

「え?」

と振り返った瞬間、大きな爆風が巻き起こる。

「なにやってんのよ」

そして飛ばされそうになった所をリズの魔法で助けられる。

アレが…目の前には黒いドラゴン

さっきのホワイトドラゴンとは明らかに違う…あっちはトカゲっぽかったが…こいつは完全にドラゴンって感じた。

「あれ?殺すつもりで不意打ちしたのに…」

「は?」

モンスターが喋った?

目の前にいた黒いドラゴンが俺たちと同じ言葉を?

「って昨日の冒険者じゃん、折角逃してあげたのにまた来たの?」

「ふん、お前を倒すまで何度でも来るさ」

「そ、じゃあ面倒くさいから…こう来ないよう殺してあげるね」

そういうと急に空気が重くなったように感じる。

「なんだよ…これ?」

物理的な重さとかじゃなくて精神的にまるで虎がいる檻に入れられたような…

「威圧じゃない?まぁまぁだけどね」

リズはなんともない顔をしている。

勇者達や沙月も平気そうだ。

まぁ俺は普通の冒険者だからな…

「ゴミが増えたところで変わらないと思うけど、精々僕を楽しませて」

両手に黒い竜巻みたいなのを構え始める。

ほんとに勝てるよな…?


てか早く倒してくれ…


今俺が倒れてしまったら…


下にいる虫に触っちまうから…

まじで早くしてくれ


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