第17話
「くそ…こんなの受けるんじゃなかった…」
数時間前ーー
俺たちは勇者から依頼の内容を聞いた。
「私たちが受けた依頼…それはーー」
「それは…」俺も唾を飲み込む。
勇者が失敗するぐらいの依頼だ。
やっぱりそれなりの敵だって事だよな?
「白竜(ホワイトドラゴン)の討伐だ」
「ホワイトドラゴン…」
う、うん、ちゃんと難しいそうな依頼だった。
いや、俺は少しほんの少しね?
え!こんな奴がこの世界じゃ強いのか!みたいな面白い展開やこの世界にはこんな独特のモンスターが!みたいな感じを期待してたんだが…
ホワイトドラゴン…
まぁだって名前にドラゴン入ってるし、ねぇ…
「で…そのホワイトドラゴン?俺たちはその討伐を手伝えばいいのか?」
俺がそう勇者に聞き返すと、「は?」と不機嫌そうな顔になる。
「何言っての?私があんな“雑魚“に負けるわけないでしょ?馬鹿なの?」
馬鹿って…そんなの知るわけないし…
少しイラッときたがこんなところで言い争っても仕方ない。
「じ、じゃあなんで依頼に失敗したんだ?」
「それはっ!」何か言おうとしたが、言いにくいのか黙り込んで俯いてしまう。
これじゃ話が進まないな…
その時ー
「私が話すよ」
「キーラ!」
仲間の一人の女性が俺たちの会話に割り込み話始める。
見た目はドラクエの僧侶のような服装をしている。
「まず、私たちの名前を名乗っていませんでしたね。私の名前はキーラ、仲間の中で僧侶をしています。
そしてさっきまであなた方を話していた彼女は私たちのリーダーで名前はマリサ、知っているかも知れませんが勇者ですね、一応…」
「一応って何よ!ちゃんとした勇者よ!」
「はぁ、まぁこの通り無駄にプライドが高いところがあるので、さっきの会話でも不愉快に感じてしまったようなら謝ります」
「別に気にしてないですよ」
「優しいんですね」
ニッコリと微笑む彼女はまさに聖女様のようだった。
「ともくん…」
冗談です。あれ?さっきの口に出てた?
「話を進めますね、先程も言ったように私たちの受けた依頼はホワイトドラゴンです。
そして私たちはそのホワイトドラゴンがいると言われた洞窟へと討伐に向かいました。
しかし…そこで見たのは白いドラゴン
ではなく“黒いドラゴン“でした」
「黒いドラゴン?」
「はい、黒いドラゴンです。依頼と色が違いましたが、私たちは討伐することにし、勝負を挑みました。ですが、私や仲間の魔法も軽々しく打ち消され、マリサの剣を弾かれ、全く歯が立たず私たちは逃げるように戻ってきました」
「そんなに強いんですか?」
「はい…ホワイトドラゴンはBランクのモンスターなのですが、多分あの黒いドラゴンはS…いやそれ以上あるかもしれません」
そして俺たちに頭を下げてくる。
「だから!Sランクモンスターであるドラゴンフィッシュを倒した。あなた方に力を貸して欲しいのです!」
「そうですか…」
それよりドラゴンフィッシュってそんなにランク高かったの?
一応ドラゴンってついているとは言え魚よ?ホワイトドラゴンの方が名前的には強そうなのにな。
まぁ沙月もリズもいるし大丈夫だろ。
そして俺たちも協力する事を決め、明日出発になった。
………最悪だ。
何が最悪かだって?
俺たちは勇者と共にそのドラゴンがいるという洞窟へと行った。
そう洞窟だ…
そしてここは現実…ゲームとは違う。
なら洞窟にはなにがいる?
モンスター?いや違う…
大量の“アレ“だよ!アレ!
暗くてじめじめしたところに大量にいる…
“虫“だよ!!!!!!!!!!
俺…これだけは無理なんだ…
昔、沙月と鍾乳洞を見に行った時ーー
「楽しかったな」
「そうだねともくん」
あとちょっとで出口と言うところ…
トンっと肩を叩かれたんだ…
「どうしたんだ?沙月?」
「ん?どうしたのともくん?」
「え…さっき肩叩かなかったか?」
「えっ?叩いてないよ?」
………じゃあ俺の肩を叩いたのはーー
そして俺は恐る恐る肩へと目を向けた。
そしてそこにいたのは…………………
大きな黒い物体だった。
そうさっきのは肩を叩かれたんじゃない…
アレが肩に落ちてきたんだ…
そのまま俺は気絶したんだ。
それ以来、俺は虫全般がダメになってしまった。
そして今俺たちのいる洞窟…そこはあの場所に似ており、嫌な記憶も蘇ると共に岩場に目をやればムカデのような虫…この世界の虫だろうか?緑と紫が混じり合ったGのような見た目の虫…
いや、ほんと無理だって!
俺はこの依頼を受けたのを後悔するのだった。
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