第16話


「いねぇなぁ〜」

湖に着いた俺たちは討伐対象のモンスターが見つからず、俺は釣りをしながら沙月たちは湖で水浴びをしていた。

(別に水着とかではないです)

依頼にするぐらいだから大量発生でもして何か問題を起こしてるのかと思ったが、別に普通の湖だし今のところそれっぽい影もないな

沙月たちも普通にしてるし、最初は止めたがまぁあの二人なら大丈夫だろ。

「うぉっ!」

釣竿が引っ張られる。

これは…釣れたか!

モンスターが見つからなかったので…暇つぶしにでもと持ってきておいた釣竿ダメ元であのモンスター釣れないかなって思ったたらしといたんだけど…この重さ!

大きな水飛沫をあげ、それが水面から姿を表す。

「お!」

そして釣れたのはなんと大きな大きなーー


長靴だった。


いや、そこはモンスターが釣れてモンスターとの戦闘が始まる流れだっただろ…

こんなお決まりみたいなオチいらないって。

てか、この長靴馬鹿でかいな…

30センチ以上もありそうな大きな黒い長靴…

異世界ってすげ…

「ともくんー!お昼にしようよ」

沙月たちが呼びに来る。

「おう…俺の方はこれしか釣れなかったよ」

さっき釣れた長靴を見せる。

「え!こんな大きな長靴釣るなんてともくんすごい!」

「そ、そうかな」

ほんとすいません…多分沙月なら褒めてくれると思って見せました。

やめてリズ…そんなゴミを見るような目で俺を見ないで…

「けど…どうするかな」

そう俺はすぐにこの依頼が終わると思っており昼ご飯を持参してきていなかった。

一度街に戻るか?

「あ!大丈夫だよ。ともくんこっちで魚捕まえたからそれ食べよ」

「お!本当か」

なんだ沙月たちも魚捕まえてくれていたのか。

「こっちだよ!」

魚を焼いているとの事で沙月に手を引かれその場所へと連れて行かれる。

「これだよ!どう大きいでしょ?」

「…………えっと沙月さん?この魚は?」

目の前にいる“魚“を見て思考が停止する。

「ん?これ?私たちが水浴びしてたらこの魚が急に襲ってきたの、まぁ返り討ちにしてやったけどね」

「そうですか…」

俺の目の前にいる魚…

それは俺たちが依頼で受けたドラゴンフィッシュだった。

少し焼けているが…頭の角とか鋭い牙とかを見るに間違いないだろう…

いや、別に依頼自体は討伐でその証拠となる角さえ手に入ればいいのだけど…

それでも俺が長靴と格闘してる間にいつのまにか依頼の魚の討伐が終わっていたなんて…

あそこで大きい長靴が釣れたくらいで自慢していた俺が恥ずかしい…

魚は焼いただけだったが見た目の割に脂が乗っていて普通に美味かった。

今度、街で見かけたら食べよ。

結局俺はどんなモンスターが分からず討伐し、そして俺たちは街へと戻った。

「なんだ?」

ギルドに戻ると何やら受付で揉めている様子だった。

「ってあれ…」

そこにいたのはあの勇者の人達だった。

「私たちは“あんな奴“がいるなんて話は聞いていない!」

「そ、そう言われましても…私たちにも予想外の出来事でしたので…」

「ちょっとどうしたんだ?何かあったのか?」

「なんだ!貴様は?」

そういう勇者の白い鎧はボロボロになっている。

勇者たちも結構ひどい怪我を負っているように見える。

「俺はただの冒険者だよ…揉めている様子だか、何かあったのか?」

「……ただの冒険者に話す義理はない…」

俺の事を睨みつけながらそう言い放ってくる。

怖い…

「まぁそんな事言わずにさ…」

「うるさいな…!ってその手に持っている角は…」

勇者が俺の手に持っていた角へと目をやる。

「ん?これドラゴンフィッシュの角だけど…」

「それを狩るだけの冒険者か…まぁそれなら」

え?このドラゴンフィッシュってそんなに強いモンスターだったの?

そして勇者は俺たちにその理由を話し始めるのだった。







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