PART6

 以上の経緯を、ありのままにヨーコへ話した。

 彼女は表情を変えず、唇を噛みしめ、じっと俺の言葉を聞き、唾を呑み込む。

 そして手錠ワッパを打たれ、両腕を刑事に抱えられていた辰に歩み寄り、いきなり頬を一度張った。

 辰はしばらくはたかれた頬を押え、彼女を見つめていたが、彼女が続けて、

『後で被害届を出します』と宣言すると、大きく口を開けて馬鹿笑いをしやがった。 

 奴は両脇を刑事に抱えられて、そのまま店の外に出て行った。(一人は既に覆面パトの運転席だ)

 車が発進するまで、彼の変な笑い声が響いていた。

『有難うございます。探偵さん』奴が連行された後、ヨーコは俺に深々と頭を下げ、

 立ち去った。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 三が日が開けた。

 俺はデスクに足を投げ出し、バーボンのグラスを舐めながら、遅くなった正月を一人で祝っていた。

 ええ?

”またお前の悪い癖が出たな。ケツを纏めないで終わりにするんだから”

 面倒くせぇな。

 仕方ない。話してやるよ。

 当り前だが、”スケコマシの辰”は警察にしょっ引かれ、仮釈放かりしゃく中だったこともあって、当然取り消しになり、塀の中へと逆戻りとなった。

 残りの刑期は全部務めることになるだろう。

 ヨーコ・ガルシアは流石に落ち込んでいた。

 だがそれもすぐに解消した。

 同じ職場で働いていた男性看護師といい仲になったからである。

 背はそれほど高くなく、風采も上がらず、金もさほどないという男だったが、性格と人柄は誰よりも良かった。

”もっと視野を広げるべきでした。これで日本人に幻滅せずにすみます”

 明るい顔でベルと切れ者女史に語ったという。

 俺?

 貰うものを貰って、酒を買い込んだ。

 それだけのことさ。

 もういいだろ。

 いい加減酔っぱらった。

 今から一寝入りを決め込むところだ。


                          終わり

*)この物語はフィクションです。登場人物その他全ては作者の想像の産物であります。


 

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赤サギちゃんにご用心 冷門 風之助  @yamato2673nippon

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