第9話もう一度お城へ


やっと自分の部屋に帰って来たのに、あんなに帰りたいの望んでいたのに、どうしてこんなに悲しいのでしょう。

何故、涙がとまらないのでしょう。

思い出すのはナーバ皇子だけ。

そうしてやっと気づきました。

私は、ナーバ皇子を、愛してしまったことを。

きっと、私に飽きたのでしょう。

きっと、私が他の女性と喋らないで、と言ったのが気に触ったのでしょう。

きっと、私が甘え下手なのが、つまらなかったのでしょう。

きっと、本だけの世界しか知らない無知に嫌気が差したのでしょう。

きっと、私の身体が物足りなかったのでしょう。

私は・・・ナーバ皇子に魅力を感じる女性ではなかったのです。

辛くて、辛くて、部屋で泣いていました。

1週間程経ち、お父様が聞いてこられましま。

ナーバ皇子に会いたいのか、と。

勿論、はい、と答えました。

するととても優しく微笑み、身支度を、と召使いに伝えておいででした。

不思議です。

ナーバ皇子にお会い出来ると嬉しいのに、お城が、近くにつれ、また、不安に押し潰されそうになります。

私は追い出されたのです。

なのに、どのような顔でお会いしたら宜しいのでしょうか。

でも・・・お会いしたい・・・

泣きそうになるのを我慢しました。せっかくの化粧が、崩れてしまいます。

せめて、少しは、着飾った私を見せたいと、また、複雑で、私の気持ちなのに、私が、よくわから無くなっていました。

通された部屋はナーバ皇子の部屋でした。

ナーバ皇子が、目の間におられるのは分かっているのですが、顔を見ることが怖く、ずっとずっと俯いていました

「どうしてここに来てくれたんですか?」

側に来られると、何時もの優しい声で質問されました。

「・・・お会いしたくて」

「それは、貴女の気持ち出てすか?私が皇子だから?」

「私の気持ちです。たとえ皇子でなくとも」

「貴女は、婚約者候補の1番に選ばれていたと、ご存知でしたか?」

顔をあげる。

柔らく微笑むナーバ皇子は、私を抱きしめられました。

「いいえ」

涙が、溢れてきました。

「ずっとずっと小さい頃、ある舞踏会で貴女は私にお茶をい淹れてくれました。今と同じく甘いお茶を。何故ですか?と聞くと、貴女は微笑みながらお疲れの様なので、と今と同じ言葉を言ってくれました。覚えておいでですか?」

「・・・いいえ。申し訳ありません」

「あの時から、私は貴女を見ていた。貴女は全く気付いてくれない。いつも遠くで、私を見ることさえもしない。だから、意地悪をしたんです」

「意地悪?」

「ええ。貴女が、私の側の身の回りをしくれるように。そして・・・私を愛してくれるように・・・。貴女は、私の罠にまんまと嵌ってくれたんです」

とても意地悪そうに微笑みながら、私を愛おしそうに見つめた。

「違いますわ」

「違う?」

「その話しでしたら、私が、 ナーバ皇子をまんまと嵌めたんですわ」

ふふっと私が笑うと、

「貴女という方は・・・何時までも私を楽しませてくれる」

私の涙を拭いて下さりました。

「これからは、貴女に触れるのを我慢しませんよ」

「駄目です」

「何故ですか?」

「婚儀が終わってませんのに、御子が出来ては困ります」

「・・・手厳しいですね。では、出来ないようにすれば宜しいですか?」

「はい。それなら宜しいかと」

おかしそうに笑って下さりました。


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何故皇子様は、そばにおられるのですか? さち姫 @tohiyufa

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