第17話 前科

 祖母が窃取された資産の被害届をなんとか出せないものかと、管轄の警察署を頼った。

 概要を話すと刑事がNの経歴を調べてくれた。

「あー!こいつは駄目だね!前科十六犯だ!お嬢さん、悪いことは言わない。お母さんのことは忘れてあなたはあなたの人生を生きなさい」

 Nは刑事も匙を投げる小悪党だった。

 軽犯罪で臭い飯を食うをくり返していた。

 結局、祖母は認知症で窃取された自覚がなく、私は私で祖母とは血縁関係にないことから口は挟めず、被害届を出すにはいたらなかった。

 だが、実の母を告訴せずに済んだことが、皮肉にも私を安堵させた……。


 久しく母から電話がかかった。

 話ししな

「お姉ちゃん。そろそろあの家出てってよ!」

とすごむ。

 公団の契約名義は確かに母だった。

 だが、家賃を払いつづけてきたのは私だ。

 私は郵便局の支払申込書(※母への不信感から意図的に郵便局の窓口で現金ふり込みしていた)の支払者の欄に、毎回自分の氏名を記入していた。

 それが、母が家賃を払っていないことの証明になると思ったからだ。

「はぁ?あんた何年も家賃払ってないじゃん!それよかお婆ちゃんの金返せよ!あんたら泥棒なんだよ!犯罪者なんだよ!わかってんの!?お婆ちゃんがボケてなきゃ今ごろ檻の中なんだよ!!!」

 母は途中で電話を切り、またしても私から逃げた。

 裏腹に、私が彼と同棲せずに自宅を守っていたのは、心のどこかで母の帰りを待っていたからかもしれなかった……。

 

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