また百鬼夜行が完成しちゃいませんかね?

 

「唐傘お化けが現れたあと、地図にたくさんの光が点ってたよな。

 あのとき、京都全体が映ってた。


 あれが完成形なんだろう」


 あのたくさんの光はゲーム開始の合図だったんだ、と倫太郎は言った。


 息を切らした壱花とぬっぺっぽうと烏天狗の前で。


「……あのー、後からゆっくり来て、ゆったり解説しないでくださいますか?」


 そう膝に手をつき、壱花は言った。


 あやかしを追いかけて走ったのは壱花だけで、男二人は地図を見ながらゆっくりやってきたのだ。


 倫太郎はまた月に地図を透かして見ている。


 これから光る場所が幾つあるのか、うっすらとでも見えないかなと思っているのだろう。


「どうでもいいですけど、消えないんですけど。

 この二体」

と壱花が烏天狗たちを見ながら言うと、


「まだ地図に反映されてないからかな。

 地図持ってないお前が追いかけても意味なかったか」

と倫太郎は無情なことを言ってくる。


 いやいや。

 私が追いかけたから、止まってくれたんではないですか……、

と思う壱花の前で、地図を持った倫太郎があやかしたちに近づた。


 ポッと地図に赤い光が点灯する。


 景色が変わった。


 今度は竹林に囲まれている。


「とっても嵐山な感じがしますね」

と壱花が夜風に揺れる竹林の音と、土の匂いを嗅ぎながら言う横で、冨樫が、


「どのくらいの感度なんでしょうね? この地図」

と倫太郎と話していた。


「車のリモコンキーくらいじゃないか?」


 あやかしにどのくらい近づいたら、反応するのかという話のようだ。


 そのとき、強い風が吹き、葉擦れの音に混ざって、カン、コン、カン……という澄んだ音が頭の上からしてきた。


 風に揺れた竹同士がぶつかっている音のようだ。


「京都だと思うせいか、風雅に感じますね。

 うちのおばあちゃんちの辺りの竹林とか、密集しすぎているのか、風が強すぎるのか。


 ものすごく激しいですよ、カンコンキンコン。

 のど自慢大会で優勝したのかなって感じです」


 そんな壱花のセリフは地図を見ている倫太郎に軽く流された。


「さ、次を探すか」


「でもあの~。

 唐傘お化けと違って消えないんですけど、この人(?)たち」

と壱花は、まだ目の前に居るぬっぺっぽうたちを見る。


 顔を上げて、倫太郎が二体を見ると、彼らはびくりとした。


 視線だけで、あやかしが怯えている……。


 実は、この人こそ、あやかしの総大将なんじゃなかろうか、と思う壱花に倫太郎は言ってくる。


「唐傘お化けはスタートの合図だったのかもしれないな。

 もしかして、此処から後のあやかしは全部付いてくるのかも」


「……それ、百鬼夜行状態になりませんか?」


 また百鬼夜行が完成しませんか?

と花札のときを思い出しながら壱花は言ったが、


「遭遇しても死なない呪文があった気がする。

 それでも唱えとけ。


 始まってしまったからには仕方がない

 せめて、早く終わらせないとな。


 次行くぞ、次」

と言う倫太郎を先頭に、壱花、烏天狗、ぬっぺっぽう、冨樫は、ゾロゾロと竹林を歩いていった。




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