最終章 宇宙船の温泉施設!? 秘湯ハンターよ永遠に!

未知との遭遇

「カズユキ様にしか、頼めない依頼なのです」


 北の果てにある冒険者ギルドに指名されたとき、ボクは奇妙な予感がした。


 氷山の近くに、小さなダンジョンが見つかったという。奇っ怪な造形をしていて、歴戦の冒険者でさえも入りたがらないとか。


 今回のダンジョンは、モンスターは出てこないらしい。万が一の戦闘要員として、シャンパさんとオケアノスさんも連れている。


「こういうとき、女神の加護を受けてるお前さんたちがうらやましいよ」


 両手で自身を抱きしめながら、オケアノスさんが白い息を吐く。


 防寒対策バッチリな二人に対して、ボクとシズクちゃんは軽装だ。

 

 ボクは女神様の恩恵を受けている。


 シズクちゃんは元々、寒さに強い。


「これは……」


 ダンジョンの外観を見て、ボクは直感した。この迷宮は、ボクたちの世界にも存在するモノだと。


「宇宙船だ!」


 長細い造形、貨客船のような大きさ、なにより後部のジェットみたいな機構が、ボクの想像を現実化してくれた。


 たしかにこんな場所、ボクにしか探索できないかも。


「カズユキ、宇宙船ってなんだ? 幽霊船とは違うのか?」

「ここではない、遠い星からやってきた船のことです。船が空を飛ぶなんて、想像も付かないでしょうけれど」


 宇宙船とかUFOなんて、ボクでも初めて見たのだ。フィクションの世界でしか、お目にかかれない。しかし、現実に存在するのである。


「それにしても、どうやって開けるの? 魔法も遮断されるわよ?」


 何度もシャンパさんが、開門魔法を唱えていた。が、一向に扉が開く気配がない。


「シズクちゃん?」


 どうも、シズクちゃんの様子が変だ。擦るように歩き、扉の脇にあるコンソールっぽいパネルに手を置く。


 扉が、一発で開いた。


「どうしたのシズクちゃん? なんで開け方を知っているの?」

「へ? なんとなくです」


 どこか上の空で、シズクちゃんが答える。


「おい、ウサギの嬢ちゃんはどうしちまったんだ?」

「わかりません。このダンジョンに詳しいようですが……」


 ボクにもサッパリわからない。ただ一つ言えるのは、シズクちゃんはこの船に乗ったことがあるかも、という可能性だけ。


 壁一面が赤く、内部に電子機器類が埋め込まれていた。間違いなく、高度な科学文明の塊である。しかし、機能自体は死んでいるらしい。


 赤い壁に手を這わせながら、シズクちゃんはどこか懐かしんでいた。カーブした廊下を、勝手に歩き回る。どこに何があるか、完璧に把握しているかのように。


「ついてきてください」


 ボクの方に声をかけ、早足でシズクちゃんは進む。

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