お風呂改装作戦、決行!

 王の間でノビている魔王を尻目に、魔王城温泉の改装準備をする。


 といっても、穴を塞ぐだけで済んだんだけれど。


「まったく、我が王には困ったモノです。親娘揃ってイラズラ好きで」


 配下のドルパさんが呆れている。やはりこの人がいないと、魔王ファミリーって機能しないのかも。


「穴が完全に塞がりました。後は散らかったお風呂場を片付けるだけです」


 壁が修復され、見事な魔王城の壁画が現れる。


「部下にやらせるから待ってて」と、謝罪も兼ねて言われた。モンスターたちが、一斉に掃除に取りかかる。

「身体を動かしてからの方が、お風呂は気持ちいいよね」


 ボクのひと言で、みんなが動き出す。床や壁、桶を磨いていった。

 一見キレイそうでも、案外アカやヌメヌメが残っていて、掃除のやり応えがある。


「蛇口の方は、ちゃんと機能していますか?」

「はい。バッチリです」


 湯垢を取った蛇口を、ドルパさんがポンと押す。ジャーッと、お湯が出てきた。温度も丁度いい。


 手の届かない天井は、シャンパさんやリムさんにお願いする。


「ありがとうございます。湯の支度をしますので、お待ちください」


 お湯が張るまで、大魔王とラジューナちゃんの親子関係を聞く。


「ラジューナお嬢様に地上を任せ、ご自身は引退なさっていたのです」


 とはいえ、カワイイ我が子を独り立ちさせたはいいが、寂しさをこじらせてしまったらしい。


「それで、ノゾキを?」

「大魔王様は、子どもの頃からああでした」

「ええ……」


 被害者ドルパさんによると、若い頃からのノゾキ癖に悩まされていたという。娘を心配していたという発言も、方便だろうと。


「奥様ができて、これでようやくスケベ根性が改善されるだろうと思ったのですが」

「うまくいかなかったんだな?」

「大魔王様はおっしゃっていました。『これはこれ。それはそれ』と」

「病気じゃねぇか」


 同じ男性として、オケアノスさんは嘆息した。


「実は、ノゾキ防止措置として、強力な結界を施していました。それがアダとなって」

「大魔王も意固地になって、魔法でこじ開けちゃったと」


 想像したことをボクが話すと、ドルパさんは肯定する。


「執念ね……」

「そんなスケベオヤジ、怖いッス」


 女性陣が、身を震わせた。


 本当に修繕が必要なのは、父親の性癖なのかもしれない。


「でも、解決したならよかったじゃないですか」


 シズクちゃんの言うとおり、結界はより強固な物になっている。

 ユーゲンさんの知恵を借りて。もし穴が開いたら、ドルパさんが直接オシオキ班として召還されるシステムを設けていた。


「皆様、準備ができましたので、ゆったりなさってください」


 よし、魔王城の取材を始めるぞ。

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