お風呂場が、ダンジョンに?

 円卓のようなテーブルに、呼び出された面々が座る。お茶も用意された。


「ようこそ。我が王の城へ。進行役のドルパ。魔王ラジューナお嬢様の従者でございます」

「我がこの城の主、ラジューナ。楽にしてよいぞ」


 そう言われても、全員がリラックスしている。


「魔王城のお風呂が、壊れたとか」


 ボクが口を開くと、ラジューナちゃんが「うむ」とうなずく。


「お湯が出なくなったのである」

「じゃあ、ボイラーとか業者さんに任せれば?」


 これだけ集めても、全員素人だ。左官屋さんじゃないんだから。


「カラクリ仕掛けではないのである」

「その点に関しては、私からお話ししましょう」


 実は、とドルパさんが語り出す。


「浴室が、ダンジョン化しまして……」

「マジですか?」

「ご覧になっていただければ、ご理解いただけるかと」


 ボクたちは、お風呂場まで案内された。


 浴室は一階にあり、魔物やら魔族やらまで使うという。

 脱衣所の段階で、それなりに大きい。

 銭湯どころか、こうなると市民プールレベルだ。


「大きいねぇ、シズクちゃん」


「まだまだ脱衣所ですよ。お風呂はもっと大きく……あれ?」

 シズクちゃんが、唖然となる。


 ドルパさんが言う理由が、よくわかった。


 ダンジョンとしか言いようのない洞窟が、視界に広がっている。


「これは、露天風呂ってワケじゃないんだよね、ラジューナちゃん?」

「うむ。まさか、一晩でこうなってしまうとは」

「原因は、わからないの?」

「左様。掃除は毎日丁寧にしておるのだ。しかし、従者が湯を沸かそうとしたら、こうなってしもうていたと」


 メイドさんにも、原因はさっぱりだとか。 


「それで、温泉に詳しいボクたちを呼んだと」

「正確には、リム様とニュウゼン様、ユーゲン様ですね」


 たしかにリムさんたちなら、どんな相手でも倒せそうだ。

 ラジューナちゃんは戦闘向きじゃないし。


 ユーゲンさんは、一人でダンジョンを作り出した魔道士だ。

 お風呂がダンジョンになった原因が、わかるかもしれない。


「あたしたちは、なんで呼ばれたッスか?」

「ユーゲン様のサポートです」


 彼には遠隔操作で、このダンジョンの分析をしてもらうつもりだったらしい。


「皆様のお力で、ユーゲン様の手足となっていただきたく。危険な仕事ですので、我々が交代しても」

「やるッス! 騎士団ナメんなねえッス!」


 頼もしい言葉が、返ってきた。


「もちろん、我々も同行いたします。ダンジョンで報酬が得られた場合、危ない物でなければ差し上げますので」

「それはありがたく頂戴する。危なかろうがな」


 オケアノスさんは楽しそう。

 ボクは、お風呂だとうれしいんだけど。

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