魔王ちゃん、ふたたび

「やっぱり、シズク絡みだったのね?」

 シャンパさんまで。


「カズユキさん」

 頬に手を当てながら、シズクちゃんがイヤイヤをする。


「魔法の石っていっても、鉱石でしょ? 砕いて、湯の花にする予定だったんだけど」


 日頃から動きっぱなしのシズクちゃんに、少しでも癒やしをと思ったんだけど。


「思っていたとおりですよ。カズユキさんはカズユキさんのままですね!」


 さっきまでデレッとしていたシズクちゃんの顔が、無表情になる。


「でも、ユーゲンさんからこんなものをもらったよ」

「なんです、それ? いつものプラカードですよね?」

「違うよ。『浮く姿見』だって」


 常にフワフワと浮遊して、対象者の全身を映してくれる代物だ。しかも、翼を広げると三面鏡にもなってくれる。

 普段はプラカードや、盾としても活躍してくれるらしい。

 プラカードは、身体を洗うときに使わないから、浮いてくれると持ち運びも便利だろう。


「うわあ、鏡は欲しかったんですよ! 身体を洗っているとき、いつも鏡を持ってないと行けなくて。辺境だと、鏡自体がないときもありましたから」

「喜んでもらえて何よりだよ」


「では、私からはこれを」

 シズクちゃんからのプレゼントは、東洋風の着物だった。


「これって、浴衣だ!」


 薄手の着物で、湯から上がるときも涼める。着てみると、意外と防御力も高い。


「東洋出身の方から、譲ってもらったそうです」


 自分では着ないからと、ユーゲンさんがボクに渡せとくれたらしい。


「いつもシャツとズボンでしたから、スパでくつろぐときとかいいのではないでしょうか?」

「ありがとう! シズクちゃん大好きだよ!」

「ちょっと。こんなところでやめてくださいよカズユキさん!」


 こうして、ボクたちの数日にわたる天空城探索は終わった。


 しかし、まさか一大プロジェクトに参加させられることになるなんて。


 翌朝まで、ボクは宿でぐっすり休んでいた。もちろん、シズクちゃんからもらった浴衣を着て。


 そこへ二人の魔族がやってきたのである。


「あれ、君たちはたしか」

「うむ。久しいのう、カズユキよ」


 ラジューナちゃんと、


「お久しぶりです、カズユキ様、シズク様」


 ドルパさんだった。


 どうして二人がこんな土地に?


「なにかあったんですか?」

「どうしたもこうしたも、一大事なのじゃ!」


 なにやら物々しい言い方で、ラジューナちゃんは興奮している。


「お二方の力を、お借りしたく」


 ボクが駆り出されるってコトは、温泉関連だよな?


「何事ですか?」


「我が魔王城の風呂が、壊れたのじゃ!」

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