第二章 夏〜二宮瞬の場合〜

第1話 オープニングトーク


 どうも。初めましてこんにちは。第二章の語り手です。

 そう、語り手のくせして‟初めまして”なんですよねぇ。正真正銘、嘘偽りなくまったくの初顔。ホント、全シリーズを通して初登場で――ん? あれ? そうかな? 存在は明らかにしてた? 違う? まぁ、どっちでもいいや。ゴメンねいい加減で。とにかく、新参者ってこと。


 あたしの名前は――『名無し』で。

 なぜって? だから、明かしたくないんだよ。こんなところで正体を晒すなんてまっぴらなの。

 え? 『名無し』なんてヤツが語り手なんて、内容に信憑性が無くなるだろうって? そうかな? そんなの、そっちの受け止め方次第だと思うけど。

 ん? そんなの無責任だって? は? あたしに何の責任があるって言うの?――語り手としての責任に決まってる? 引き受けた以上はその責任からは逃れられない?――

 ……はいはい。分かったよ。面倒くさいな。だから嫌なんだよこんな役回り。

 じゃあ――そうだな、『ホワイト』で。そう、あたしの名前はホワイト。白黒の白。それで納得してもらうよ。これ以上は譲れない。まあ、『名無し』とそう変わんないけどね。嫌なら、今すぐ指を動かしてさっさとこのページを閉じてくれればいいから。はい、サヨナラ。



 ということで、去る者は追わずで、残ったアンタらとあたしで始めるよ。ごちゃごちゃ煩い連中がいなくなって、お互いすっきりしたね。うん、いいカンジ。


 あたしが担当するのは、二宮しゅんの引越しにまつわる話。

 まったくの初登場のあたしが、彼とどういう関係かっていうと――ま、一応は知り合いで、それなりの期間、それなりの交流を続けている間柄だね。第一章のカノジョたちみたいに、幼馴染みとか親友とか、そんな濃密なものではまったくないけど、彼のとか、趣味とか、何となくの活動パターンとか、ある程度は把握してるつもり。

 ただ――会ったことはない。だから、顔は知らない。電話で話したこともないから、声も聞いたことはない。


 ――そう。だいたい察してくれたよね。あたしと二宮とは、ネットの中だけの『仲間』なんだ。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054891018156/episodes/1177354054934641335


 あれ、いきなり何なのこのURLはって? 

 これはこのシリーズの番外編第四弾『それ、僕にはもったいないお言葉です』のあるエピソードのURL。ここに、あたしと二宮との関係性が書かれている。面倒だと思うけど読んでみて。中盤、三十行目あたりかな。で、彼があたしについて彼なりの想像を巡らせている個所もあるんだけど、ほぼ正解かな。

 そう、それで分ったでしょ。あたしが本名ではなく、『ホワイト』と名乗った理由わけが。そして、一度も会ったことのない二宮のことを、その気になれば詳しく語れる、そのスキルを持ってるってことも。第一章のカノジョみたいに、語り手ゆえに与えられた『時限的特殊能力』ではなく、ね。ただそのスキルを今回、使うかどうかは――まだ決めてない。さあ、どうしようかなぁ。


 というわけで、まずは二宮が夏の引越しに向けて考え始めた、六月の初めのエピソードから。面倒だけど、始めるよ。



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