第2話 暴力行為は人を脅えさせる。
「は?」
何がどういいのか私にはよく分らなかった。
「私は君がした暴力行為を擁護するつもりはないから」
「ようご? それどういう事?」
「言った通りの事」
今度はあたしと
「あんな風に相手を威迫するような真似、暴力と言わずに何と言うのかしら」
生明さんは冷たい目に怒りを湛えて少し震える声で言った。
「あんな奴らを放っておけって?」
「別に彼女たち相手にするつもりなんてない。余計なエネルギー使うばかりだもの。それに、殴られたわけじゃなし」
「心が殴られてるじゃんよ!」
「?」
生明は驚いた顔をしてた。きっとここまで踏み込んだ会話なんてした事なかったのに違いない。ちょっと鳩が豆鉄砲くらったきょとんとした顔。驚いたことに一瞬微笑んだ気がする。でもすぐにあの冷たい鉄板みたいな顔に戻る。
「ありがとう。気遣ってくれてるんだ。でも全然大丈夫、これくらい。私の心にはバリアーも装甲もあるから」
ここで生明の眼が力強い光を放った。
「だから……だから、篠さんみたいに中途半端に優しい言葉の方がずっと嫌。分ったらもうあまり話しかけないで」
「なっ!」
中途半端に優しい? 中途半端? なんだそれ? 悪口言わされた人をかばった挙句そんな事言われるなんておかしいじゃん! そう思うと言葉が勝手に口をついて出てしまう。
「何かした? ねえ、あたし何か悪いことしたかな? そんな返しされる覚えないんだけど」
冷たい表情でこっちも見ない生明は本を脇に置いて、授業用のタブレットを取り出している。こっちの事なんかホントどうでもいいように。
「そう。じゃ、覚えておいてね。私にかかわるとめんどくさいって」
何なんだ何なんだ何なんだこいつ! いちいち嫌味で腹立つったら! かーっ!と頭に血が昇る。悪い癖だと分かっていても我慢ならない。一言言ってやらなくちゃ。
「別に生明さんに関わろうとしたんじゃないから! 自分が正しいと思ったことをしたまで! これからもそうするから。だから余計な勘繰りしないで!」
「そ」
余りにも素っ気ない態度の生明はさっきまで読んでいた紙の本をまた手に取って開く。手にした本にまた視線を戻した明生は、誰に言うでもない風に口にした。
「ああ、あと。同性愛は趣味じゃなくて先天的、後天的、様々な理由で固定化された性的指向だから。趣味みたいに変わりうるものじゃないの」
「ああそうですか!」
あたしは高校入学以来一番真っ赤な顔をしていたと思う。もちろん怒りでだ。一方の生明は表情一つ変えないものの今までで見た中で一番冷たくて青白い顔をしていた。あたしはそのまま席に戻って腕組みをしながら思いっきり勢いをつけて席にかける。スカートがめくれたかも知れないけどスパッツ履いてるからいいや。ああー、それにしてもイライラする。
※2021年1月7日 誤字を訂正しました。
※2021年1月9日 誤表記の修正をしました。
※2021年1月11日 加筆修正をしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます