【地方の芸能事務所編】

第12話 なんで普通の人とは縁がないんだ!?

 前回までのあらすじ


 路上で絵を描くうちに、芸能事務所を立ち上げる予定のC社長から声を掛けられたGhost。

 所属タレントを募集していたC社長にGhostは役者Aを紹介する。

 近日中に顔合わせをしよう! と言う事になるのだけれど……



〇まずは飲み会。そして顔合わせ。


 C社長との出会いから数日後、mixiづてでメッセージが届きました。内容は……


『近日中に、うちの事務所主催でイベントをやるんだけど、告知用のチラシの絵をGhost君に描いてもらえないかな?』


 おお、ブラック企業と名高いとはいえ、さすがは元〇民の幹部。あれから半月程でイベントが出来るほどの人材確保と、イベント会場の確保をやってのけるとは。ブラック企業の王・〇民で叩き上げられただけあって、こういうところは凄いと思う。


 さて、チラシのデザイン、を依頼されたものの僕は絵を描くようになって日も浅く、そして自分の画力に自信もありません。さらにスピードも遅いので、どう逆算しても締め切りには間に合わない。

 それに絵描きを目指しているわけでもないので、僕より適役の人が居るんじゃないかな、と思いました。


 あ、適役がいた!


 と、言うわけで早速連絡を入れました。愛すべき変態イケメン、我が絵の師匠に相談です。


Ghost

「……と言う事があったんでけど、師匠、チラシの絵を描いてみない? デザインとかもセンスあるし」


師匠

『んー、まぁ、良いよー』


 わりと軽く受け入れてくれた師匠。

 その旨をC社長に伝えると、C社長も了承。


C社長

『それじゃ、次の土曜の夜に皆で顔合わせをしよう。僕もウチのプロダクションのタレントを一人連れていくからさ』




〇さぁ、顔合わせが始まってしまう。


 土曜日の夜。僕は師匠と役者Aと共に、社長Cは自身のプロダクションに所属しているタレント(以下ダンサーAと表記)と共に某駅近くの居酒屋にて集合しました。あ、〇民系列の居酒屋ではなかったです(笑)


【プロフィールに登場していない人物紹介】

〇ダンサーA

・二十代前半。男性。

・芸能事務所Cに所属。将来的にはダンスだけでなく、振付や演劇等、マルチに活躍していった有望株。C社長が夜逃げするまでの間、彼が会社を牽引していく事になる。

《所有する芸術スキル》

・ブレイクダンス。海外のダンス大会での優勝経験などもあり。

・容姿端麗。ジャニーズ系の線の細い綺麗系。つまりイケメン。

・変態じゃなさそう(ここ重要!)。




 さあ、さあ、飲み会が始まりました。当時はまだお酒を辞めていなかったので僕も飲みたかったのですが、この時の僕はブラック企業でのギックリ腰が祟って杖を突かないとまともに歩けない状態。お酒なんて飲んだら悪化してしまいます。

 よって飲めない。ノンアルコールなので基本的に送迎係です。ぐぬぬ。


 今回の飲み会の主な目的は、

・イベントのチラシのデザインの打ち合わせ(師匠の案件)

・芸能事務所Cに対する役者Aの関心度の確認(役者Aの案件)

・C社長が「Ghost君のバンド(デスメタル)、ウチに所属する?」との要望があったので、僕は断固拒否!(笑)(Ghostの案件?)

・その他、情報交換と言う名の世間話。


 と言った流れです。こう書いてみるとちょっとした営業マン……と言うかマネージャーみたいな事してんなー。これ、多少お金貰っても良いヤツじゃね(笑)


 さて、デスメタルなんて当然聴いた事のないC社長は二次会で行ったカラオケで僕に無理やり歌を歌わせたのですが、まぁ、ご察しの通りしておりましたので僕のバンドのデビューは儚く散ったわけです(と言うかC社長の目指してた芸能事務所のカラーがデスメタルと相反していたので当たり前だね☆(ゝω・)vキャピ)。


 とりあえず本題である『師匠の案件』はすんなりと進み、数日後には簡単なラフスケッチが完成。納期の数日前にはテキストも綺麗に配置された完成品が芸能事務所Cに収められました。さすがだね、師匠!


 ただ、しかし! この時の僕らはまだ社会人経験の乏しい青二才。悪い大人の腹の底なんて見えやしません。

 しかも知っている社会の知識はブラック企業で学んだ、と言う哲学のみ……。

 あー、つまりですね。僕も師匠も《金》についての知識、価値観が絶無だったのです。

 これは今後の展開にも、ずーっと絡みついてくるのですが、アートと金が生み出す危険な要素の数あるうちの一つで、要約すれば


《好きでやってるんだからお金なんていらないでしょ。》


 と言う考え方です。現在でも僕の知る限り、根強く残っている悪習ですね。ちなみに数年前にプロボノ(専門技術を生かしたボランティア)として参加した市のアートイベントで、市役所職員にこれを言われたので(ちなみに一回じゃない。他のイベントでも似たようなことを言われた事がある)


Ghost

「じゃ、オレ辞めますー(/・ω・)/ 帰るんでー(/・ω・)/ 勝手に大金払って他の専門家呼んでちょー(/・ω・)/」


 と言ってバックレた事があります。当たり前です! 金の問題じゃなくて誠意の問題じゃ、ボケがぁ!!


 ゴホン、ゴホン。話しを戻しましょう。

 この度、師匠が制作したデザインですが結論を言えばで支払う、と言う事になってしまいました。

 社会を知らなすぎる若者とは、なんと悲しいかな。


社長C

「これから会社が大きくなったら、ちゃんとした金額を提示するからさ」


 なんて甘い(今思えば大して甘くもない)言葉に良いように転がされてしまったわけです。ふぁっく。

 今だったら灰皿にテキーラ注いであげるのに。ふぁっく。


 それにしても、この時は変な奴らを紹介してしまって師匠には悪いことしたなぁ……。




〇役者Aの案件。く・ど・い!


 さて、飲み会に参加した皆さんは順調に酔いが回っていき、C社長が某県での活動の展望を語り始めました。


C社長

「これからは地方だよ。東京じゃ強い事務所が絶対で地盤がもう動かないからね。地方から活躍する人間を探し出して育てていかないとダメなんだ」


 確かにこの時期、AKB48を発端に地下アイドルが評判になり始めたばかりのころ。そして各地の地方都市でもご当地アイドルなどが産声を上げ始めた時期でした。むしろ、動き始めるとしたら遅いくらいなのかもしれません。(注、アイドルの知識が絶無なので間違っていたらごめんなさい!)


C社長

「芸能事務所を立ち上げた後はタレントのマネジメントだけじゃなくて、歌にダンスに演劇や映画、なんでも自分たちで作って売り出していくんだ。それを実行するにはすぐに動き出せる人材が必要でね」


 ここでC社長、役者Aに向き直って改まった雰囲気で語り始めました。


C社長

「役者A君は僕のプロダクションの方向性についてどう思う?」


役者A

「いや、僕も常々、自分の活動をグローバルに展開していきたいと考えていたんですが、それにはまずは自分の出発点、地元であるこの県から発信していく事が大事だと思っていて、そういった姿をセルフプロデュースできる力をこの土地で培ってこそ東京、そして世界へとグローバルに……」


 横で話を聞いていたわたくし、Ghost。


Ghost

(あーあ、また始まったよ。役者Aさんのお得意の、よくわからない長い話し)


 なんて思いながら聞いておりました。

 今思えば役者Aの話しや会話の構築って、号泣会見で一世風靡した野々村元議員のような気配のある喋り方だったなぁ。


C社長

「長げーよ!」


Ghost

(お、突っ込んだ。さすが年長者)


C社長

「つまり、君はどうしたい!?」


役者A

「えーと……俺はC社長のような人を待っていました!」


 そう言って手を差し出す役者A。差し出された手を握るC社長。この握手を持って役者Aの芸能事務所Cへの所属が決まりました。

 うん、前振り長げーよ。最初からそーしろ。


 さて、先程も少し触れましたが、この後は二次会で僕がデスメタル歌ってドン引きさせる以外は目立ったしくじりエピソードもなく無事に終了。

 帰り際にC社長から芸能事務所C主催で行われるイベントのチケットをもらい、見に行く約束をしました。


 ちなみに、この顔合わせの時に出会ったダンサーAさんとはこの後、すれ違う事くらいはありましたが、会話をするほど関わる事はありませんでした。

 やっぱり僕はヘンタイ相手じゃないとご縁が無いのかなぁ……。


 to be continued(/・ω・)/

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る