第11話 変化をもたらした路上での出会い。良い方向ではなかったかもしれないけれど……。

 前回までのあらすじ


 路上で絵を描き始めてから様々な人たちと関わるようになったGhost。

 楽しい人からヤバい人まで盛りだくさんな路上でしたが、そんな人達との交流を楽しんでいる僕をスカウトする人が現れました。

 今回のエピソードでは今後の展開を(多分悪い方向へ)加速させるキッカケになった芸能事務所の社長との出会いを綴って行きます。




〇きっかけはmixi。


 一時期に比べて下火になってしまったSNSのmixiですが、僕が路上で絵を描いていた当時は主流のSNSでした。

 僕もmixiを活用していて路上での活動や、そこで描いた絵、所属していたデスメタルバンドのライブ告知、後たまに小説なども投稿していたのですが、その内容に興味を持ってメッセージを送ってくれる方がたまにおりました。

 例えば……


『はじめまして。テレビのバラエティー番組を制作している会社の者なのですが、現在貧乏だけれど夢を追っている若者を取材をしています。お話伺えないでしょうか?』(注・以下、思い出しながら文章を再現しているので、内容は正確ではありません)


 みたいなメッセージ。

 え? 僕、一応この時は正社員で働いてるんだけど……。確かに働けど働けど貧しくなっていくワーキングプアのブラック企業勤めだったけどさ。


 あと……


『歌舞伎町でホストをやっている○○と申します。Ghostさんのページを見てホストに興味がないかと思いメッセージさせて頂きました。ご興味ありましたらご連絡ください。待っています』


 いや、なんでホスト!? 僕、顔写真とかアップして無いよね! ホストの話題なんて書いた事なんてないよね!


『名古屋で新規オープンするホストクラブ○○の店長、○○と申します。ただ今オープニングスタッフとして活躍してくれるホストを募集していまして……』


 え? なんでまた!? もしかして皆、ホストの勧誘うけてんの!?(少なくとも僕の友達にはホストの勧誘うけた人は居ないよ)


『こちらススキノでホストクラブを経営している……』


 だーかーらー!


 と何故か全国各地からホストの勧誘ばかり来ていたのですが、ある日の事、


『こんにちは。近日中にこちらの県で芸能プロダクションを立ち上げる予定のCと言う者です。Ghostさんは面白そうな事をしていますね。今度路上の活動にお邪魔してもよろしいでしょうか?』


 これが芸能事務所C社長との出会いのキッカケでした。数多く送られてくるホストの勧誘に比べればまっとうな文面です。

 当然ながら駅前にくるな! なんてことは言いません。

 路上は誰に対しても開けた場所。それが良いところですので、僕も喜んで


『よろしければ遊びに来てください』


 とメッセージを返しました。


【プロフィールから抜粋】

○芸能事務所C社長

 五十代。男性。

 芸能事務所Cプロダクションを立ち上げる。

 ブラック企業の総本山『和〇グループ』の元幹部。

 事務所を立ち上げた頃、路上で絵を描いていたD・Ghostと知り合い脚本家としてスカウトする。が、しかし、僕が転職を決意して仕事を辞めたとたんCプロダクションは倒産。

《所有する芸術スキル》

・ブラック企業経営スキル。要約すると『好きでやってる奴に払う金はない!』。

・無理というのは嘘吐きの言葉なんですよ。


◎芸能事務所Cプロダクション

 ブラック企業の総本山・〇民グループの元幹部が立ち上げた地方を拠点にした芸能事務所。すぐ潰れた(/・ω・)/




 数日後の週末でした。

 いつものように路上で絵を描いていました。その時は僕一人で描いていたと思います。

 そこにふらっと現れたC社長。

 見た感じは普通のおじさんです。笑い顔がちょっとだけジャック・ニコルソンに似てたかな(ティム・バートン監督の『バットマン』でジョーカー演じてた人ね。あれ? それって怖い顔じゃね?)。


 まずはお互い軽く自己紹介。

 C社長の経歴は某居酒屋チェーン〇民の幹部社員で、創設時代から会長・〇邉氏の元で文字通り馬車馬の如く働いていたそうな。ちなみに当時はまだ〇民グループの社員の自殺に対して労災認定がされる前なので、【ワ〇ミ=ブラック企業の王者】の構図が完成するのはちょっと先の事になります。

 和〇を脱サラしたC社長は群雄割拠ぐんゆうかっきょの東京で芸能事務所を立ち上げるのではなく、いまだ開発の余地のある地方都市に目をつけて某県へやって来たのでした。


 しばらく僕の絵を見ながら世間話をしていたのですが、


C社長

「Ghost君は画家を目指しているの?」


Ghost

「あ、どっちかと言えば小説とか文章書く方が好きです」


C社長

「おー、小説も書いてるの? そっちで食べていきたいのね」


Ghost

「えー、あー。まぁ」


 曖昧な返事をしてしまいました。

 小説等の文章を書いている、と言った物の当時書いていた小説は僕にとって初めての小説でした。しかも長編小説。半年以上コツコツ書いていましたが、その時はまだ完成していません。

 あとはmixiに日常の出来事を面白おかしく脚色してブログにしていたくらい。

 アホの子の僕ですが、そんな状況で胸を張って


「小説家になりたいです!」


 と言えるほどアホではありません。さすがに(笑)


 ただ文筆で食べていけたら、それは良いなぁ……とは思っていました。その理由は僕の中にある極めてネガティブな思考回路が原因でした。

 例えば飲食業なら食中毒、運送業などなら交通事故、建築士なら設計ミス、技術者なら製品による大規模事故、工場勤務なんて労災と隣り合わせだし、医師・看護師なんてもってのほか。

 一般的な仕事の多くは最悪リスクが付きまとうからです。


 当時の僕は精神疾患による不安障害のせいで加害恐怖(誰かを傷つけるのではないかと言う根拠のない恐怖)に囚われていたのでした。

 となると、作家業の魅力は過失致死・過失傷害を犯すリスクが極めて低い!

 だって小説書いてたって、直接誰か死ぬことないし! 何と安易な発想!(/・ω・)/


 名前は失念してしまいましたが高名な小説家の先生で元々建築事務所で働いていたけれど、ミリ単位のミスが人の命に係わる業務が自分に向いていないと感じて小説家へと転向した、なんて話も聞いた事がありますし。


C社長

「芸能事務所を立ち上げたら、その後の展開として事務所主催の演劇や映画製作を目論んでるのね。だから本が書ける人が必要なんだよ。それでさ、Ghost君の小説が完成したら是非読ませてくれないかな?」


 さて、まだ一作も完成できていない駆け出し小説書きのクセに早速「読んでみたい!」とのお声がけ。これは喜ばなければいけない状況です。正直、当時はそう言ってくれる人との出会いはかなり嬉しかったです。(/・ω・)/


 それから話題は某県の芸能事情へシフトしていきました。

 C社長は自分の事務所に所属してくれるアーティストや、芸能に興味がある練習生を探しているところでした。当時、C社長の事務所に所属を確約しているアーティストはダンサーが一人居ただけだったと思います。

 一応、僕自身バンド経験もあるし、路上で出会ったミュージシャンやアーティストさんなど顔見知りも多少いましたからでしたから、それなりに情報やツテがありましたので情報交換ができた、と言うわけです。


 そこで僕はの名前を出しました。


Ghost

「路上でアート活動をしようって最初に言い出した役者Aって言う人が居るんですけれど、良かったら芸能事務所Cさんの事話してみましょうか?」


 当時はまだ役者Aと仲たがいする前でしたの暴虐に耐えれていましたので、東京でプラプラしている彼の事を紹介してみる事にしました。C社長も願ったりかなったりと言う事で交渉成立。役者Aが興味を持ってくれたら後日、顔合わせをしようと言う事になります。


 もちろんこの出来事が僕とブラック・アーティスト達との出会いにブーストを掛けさせることになってしまうのですが、それはまた次回!


 これにて【路上アーティスト編】は終了です。

 次回より【地方の芸能事務所編】がスタートです。

 それでは(/・ω・)/


 to be continued(/・ω・)/

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