第8話 容姿の変化

 ラナイアとアルグスは、お互いの若くなった体について語り合っていた。

 二人とも、前世の世界よりも体が軽くなって、喜んでいるのだ。


「でも、よく考えてみると、見た目は少し違うんだよな?」

「そうね。面影はあるし、お互いが認識はできるけど、少し違うわね」


 二人は、お互いの容姿が変わっていることを指摘していた。

 二人の容姿は、微妙に変わっている。お互いに、認識できているため、そこまで変わっている訳ではないが、それでも変わっているのだ。


「まあ、それでも俺はいい男だけどな」

「いい男? まあ、悪い男ではないと思うけど……」

「いや、そこは強めに否定してくれよ。別に、俺もナルシストではないし、容姿にそんなに自信はねぇ」


 そこで、アルグスは自分の容姿を自ら褒めた。

 ただ、それは冗談だったようだ。しかし、ラナイアは別にアルグスが悪い男だと思っている訳ではない。

 むしろ、ラナイアはアルグスのことを言い男だと思っていた。容姿も、それなりにいいと本気で思っているのだ。


「いや、私はあなたのことをいい男だと思っているわよ。少なくとも、中の上……いや、上の下くらいはあると思っているわ」

「上の下か……それは、中々いい評価だよな。結構、嬉しいな」


 ラナイアは、アルグスの容姿についてかなりいい評価をしていた。

 結局、ラナイアにとってはアルグスの容姿は一番なのだ。それ程に、ラナイアのアルグスに対する思いは強いのである。


「そんなことを言ったら、お前なんて上の中……いや、上の上と言ってもいいくらいの容姿だと思うぜ」

「上の上? それは言いすぎよ。嬉しいけど、褒めすぎだと思うわ」


 アルグスは、ラナイアのことを褒めてきた。

 その言葉に、ラナイアは笑顔になる。褒められて、悪い気はしないのだ。


「でも、俺が上の下なら、お前はそれより上ということになるから、その二つしか残っていないだろう?」

「でも、私は上の上や上の中ではないわ。私より上はもっといっぱいいるもの。というか、別に私が上という前提でいいいの?」

「それなら、俺は中の下くらいが妥当じゃないか? それで、お前が上の下でどうだ」

「中の下? そんな訳ないじゃない! 少なくとも、中の中は譲れないわ!」

「それなら、お前は上の中だ!」


 二人は、だんだんと燃え上がってきていた。

 どうでもいいことだが、そんな小さな火種でも二人にとっては充分燃え上がれるのだ。


「あなたのことを結構かっこいいという女子もいたのよ! だから、そんなに卑下することはないわ!」

「お前のことを可愛いという男子の方が圧倒的に多かった! お前の自己評価が低いから、俺も自分を下げるしかないんだよ!」


 二人の喧嘩が、また始まった。

 ただ、今回はお互いに褒め合っている。こういう喧嘩も、二人はよくするのだ。お互いに罵倒するよりは、平和な喧嘩である。

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