第7話 軽くなった体

 ラナイアとアルグスは、二度目の喧嘩をしていた。

 ただ、その喧嘩はアルグスが素直になったため、中断されたのだ。

 という訳で、二人の間には再び和やかな空気が流れていた。いつも通り、喧嘩のことは既に忘れているのだ。


「それにしても、こっちの世界に来てから、本当に体が軽くなったな」

「こっちの世界に来たからというより、若くなったから、そうなったんじゃない?」

「まあ、そうか」


 二人の話は、体の調子の話になっていた。

 こちらの世界に生まれ変わってから、二人は体が軽くなっていることを実感していた。数年前まで老人であった記憶がある二人とって、今の体はとても嬉しいものなのである。

 年をとって、体の色々な場所を悪くしていたのに、それがなくなったのだ。二人にとって、これ程嬉しいことはないのである。


「お前も、本当に若くなったよな……」

「若くなったって……生まれ変わったんだけど」

「いや、それはそうだけど、若くなったといってもいいんじゃないのか?」


 アルグスは、ラナイアの顔を見て感慨深そうにそう言ってきた。

 生まれ変わったため、ラナイアの容姿はもちろん、前世の晩年よりも若くなっている。そのことを、アルグスは少し喜んでいるようだ。


「嬉しそうにしているけど、年老いた私は嫌だったの?」

「いや、そういう訳じゃないが……」

「それなら、若いからといって喜ばないで欲しいわ。なんか、少し傷つくもの」


 ラナイアとしては、若いことを喜ばれることは嫌だった。

 もちろん、ラナイアもアルグスの気持ちはわからない訳ではない。若くなったアルグスが見れて、ラナイアも嬉しいと思っているからだ。

 だが、ラナイアは年老いたアルグスも悪くないと思っている。どちらがいいとかではなく、どちらもいいと思っているのだ。

 それなのに、アルグスはまるで年老いたラナイアが駄目だったかのように語っていた。そのことが、ラナイアはとても不服なのである。


「わ、悪かったよ。もちろん、年老いたお前もき、綺麗だったから……」

「本当にそう思っている?」

「あ、当たり前だろう」


 少し声が震えていたが、アルグスはそのように言ってきた。

 本心でどう思っているかわからないが、ラナイアはこれ以上追求しないことにした。これ以上追求して、アルグスからぼろが出たりしたら、それはそれで悲しいからだ。

 それなら、嬉しい気分のまま終わった方がいいだろう。一応、綺麗と言ってもらえたので、ラナイアはそれで満足することにしたのだ。

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