第15話 嫁の二人が覚醒しました 後編


 その時――。

 アカネの従者が空を見上げて驚愕の表情を作った。

「ひゃあ!」

「あ……アレはっ!?」

 そのまま三人はその場で尻もちをついた。

 続けて空を見上げたエリスとアカネも同じく絶望の表情を作る。

 はてさて、これはどういうことだ? と思って俺も空を見上げると、はたしてそこには金色に輝くフクロウが宙を舞っていた。

「エリス、アレは何だ?」

「旦那様。アレは討伐難度SSS級……羅刹鳥です! いくら旦那様と言えど、今までのようにはいかないでしょうっ!」

「サトル殿。羅刹鳥はサンダーバードの心臓を主食とするという。恐らくはそれを狙ってきたのだろう」

 おいおい、みんな表情がマジだしコレはちょっとヤバいんじゃなかろうか?

 そう思った時、俺の頭の中で声が響いた。


 ――太公望スキル:仙界の序列の使用を推奨します


 仙界の序列? どういうことだ?


 ――回答:中華圏に属する神獣や聖獣について、相当以上の力の差があれば5体まで使役できます


 ん? 待てよ?

 でも、それって俺と羅刹鳥に相当な差がないとダメってことだろ?

 尋ねてみたが、老師からの回答はない。

 ってことで、仕方が無いのでスキルを使ってみた。

「スキル:仙界の序列を行使する」

 俺がそう呟いた瞬間、一面が光に包まれる。

 そして金色のフクロウは俺のところにゆっくりと舞い降りてきたんだ。

 お? 効いてるのか?

 そのまま羅刹鳥は、俺が突き出した右手に止まった。

 それで肩までちょこちょこ歩きで歩いてきたんだよ。

 そうして最終的に羅刹鳥はスリスリと俺の顔に頬ずりをしてきたんだ。

「旦那様? ひょっとして羅刹鳥を倒すどころか……まさかとは思いますが使役されたのですか!?」

 エリスの顔から血の気が引いていき、グルンと白目を剥いて彼女はその場で倒れてしまった。

「失神なんて大袈裟なんだよ。なあ、みんなもそう思わないか?」

 そう言いながらアカネと従者に視線を向けると――


 ――4人揃って既に失神してその場で倒れていた。



 ☆★☆★☆★



 街へと向かう荷馬車でエリスがこんなことを言い出した。

「うう。旦那様はこんなに強くて凄いのに……私はアカネさんにも負けているんです……」

 ちなみに羅刹鳥はフクロウっぽい見た目なので、福次郎と名付けた。

 基本は俺の半径数百メートルくらいの周りを気ままに飛んでいる。

 だけど、呼べば肩の上に乗ってくるし、俺に甘えたくなれば向こうから来てスリスリしてくるしで、中々に可愛い。

 それはさておきエリスが深刻に悩んでいるみたいなので、どうしたもんかと考える。

 と、その時、頭の中で声が響いてきた。


 ――スキル:老師が発動しました。

 ――親愛度限界突破を確認

 ――条件達成につき、ヒロインを覚醒させますか?


 何? ヒロイン覚醒だと?

 そういえばこのゲームのヒロインには確かに覚醒機能があったな。

 これは、自分の非力を悩んでいるエリスには丁度良いだろう。

 もちろんイエスだ。

 すると、荷馬車に乗っている二人の体が突然輝きだした。

「おおおおおおお!?」

「なんですかこれはああああああ!?」

 で、光が収まると、はたしてそこには――

 布が消失して、両乳が丸出しになったエリス。

 そして、尻だけじゃなくて背中も全部布が消えて、完全びん〇っちゃまスタイルとなったアカネの姿があったんだ。

「旦那様! 力がみなぎっています!」

「ステータスプレートによると……馬鹿な!? ステータス3倍だと!?」

 いや、君たちの見た目から察するとそれは最終覚醒の脱げ具合だ。

 だったらそりゃあ、それくらいは伸びるだろう。

 しかし覚醒段階を色々とすっとばして、いきなり最終覚醒だと……?

 エリスとアカネはステータスプレートを互いに見せ合って、何やら話し込んでいる。

 そして、二人のヒソヒソ話を待つこと数十秒。

 どうやら二人の実力はほとんど互角と言うことが判明した。

 まあこれについては完全に納得だ。

 アカネは姫……つまりは希少なプリンセス職の枠で強キャラなんだよな。

 で、エリスは最初は雑魚だけど覚醒すると強くなるキャラなのだ。

 元々の力に差があったようだが、覚醒がキッカケでその差は無くなったということだろう。

「旦那様。私、強くなりました!」

「今の私たちなら難易度S級の魔物も単独で討伐可能でしょう!」

 満足げな二人を見て俺はうんうんと頷いた。

 だけど、俺としては彼女たちに言っておかないといけないことがある。

「嬉しいのは分かるが、とりあえず胸とお尻を隠そうな」

 その言葉で二人はポっと顔を赤くし、荷物から布を取り出して体に巻き付けたのだった。

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