第9話 そしてもう一人の美少女も参戦し
「じゃ、そろそろここを離れたほうがいいよ?ここも、いつまでも安全というわけでないからね?」
とモエは、ミカとヨアを女子トイレから去らせた。
僕もそろそろ戻るかと、トイレから出ようとしてモエに腕をつかまれ阻止された。
「ん?どした?」
「ケイタくぅぅぅ~~ん♡ミカとヨアのことばかりで、あたしのことはまだだよォ~~♡」
「え?え?それより、ここはいつまでも安全とは言えないんだろ?早く行こうよ」
「あれは、ウソ♡ここは、安全だよォ~~♡2人を早く追い出したくて、ウソついちゃったァ~♡」
「!」
「あたし、女王様の立場に慣れてしまって、面倒見のいい親分みたいになっちゃって、損ばかりしてるゥ~~♡あたしも、幸せになりたい~~♡」
何を意味不明なことを言ってるんだ?
「ケイタくん、本当の本当は、ミカも、ヨアも好きじゃないんでしょ~~?本当の本当は、あたしのことが、大大大、大好きなんでしょ~~?」
「…うーん、どう、かな?」
先ほどからの本音を言え、本当は好きじゃないんだろ?的なことを繰り返していたんで、もちろん僕の、このモエに対する気持ちも正直に言うと、ただ注目されている美少女だから興味を持った、ただそれだけと言うことになる。
「僕は、きみが美少女だから、興味を持っただけで…」
もちろん、興味を惹かれた理由は、美少女というだけでなく、その魅力あふれる大きな膨らみが…。
「もう~~ッ!ケイタくん、あたしの胸ばかり、見てる~~ッ!」
モエが少し怒りを見せると、トイレの個室の中に入ってしまった。
やがて出てきたモエ。
「あれ?」
僕は、大きな違和感をもってモエの胸を見た。先ほどまで大きく盛り上がって僕の目を奪っていたパイパイは、完全になくなってマナイタになっていたのだ。
「モエ…、それ、は?」
モエは、にやりとし
「驚いたでしょォ~?胸に、パットを4枚重ねして入れてたんだァ~♡」
と。パットで盛ってたのか。どうりでなぜか揺れないなあ、と思ってた。
「てか、なんでそんなこと、するんだよ?そんなに盛らなくても、モエ、じゅうぶん可愛いのに…」
すると、モエの可愛い顔が、パアーッと弾けたように明るく輝いた。
「え?いま、ケイタくん♡あたしのこと、可愛いって言った?言ったよね?」
「うん…、言ったけど。それが、どうした?」
美少女に向かって「可愛い」と言うのは、普通だろ?と思うんだが。
「エへへへ~~♡あたし可愛い、あたし可愛い、あたし可愛い~~~♡」
モエが、なにやらおかしなハイな感じに昇ってる。超絶美少女過ぎて、ついにおかしくなったか?
「ケイタくん~~♡すごい幸せ~~~~~♡ありがと♡あたしにも幸せを分けてくれて♡」
なんだか意味が分からない。
「あたし、ケイタくんのこと、好きよ♡」
え???
モエから、とつぜん告られた。
僕は驚いて、目をぱちくり。
しかし、モエには彼氏が5人いることを思い出し、あ、そうか、6人目が欲しいんだな?5人でも満足できないのか、このアバズレめ、と呆れていると、モエが
「あたしがケイタくんに興味を持ったのは…」
と勝手に話し始めた。
「ヨアから、ケイタくんのことで相談を受けた時~~♡あたし、ビックリしちゃった♡ケイタくんといえば、ビッグ5のひとりのミカと付き合ってるというのが女子の間では定説で~♡そんな本命の彼女がありながら、他の女子にちょっかいを出すなんて…。ケイタくん、もしかすると、あたしと同類の人間かも?てね♡」
「…」
「その後、あたし、ケイタくんのこと、ずっと観察して、また女子たちとの関係も調べてたんだ♡すると、ね」
「…」
「ケイタくん、ヨア以外にも、複数の女子と浮わついた関係だということ、知ったんだよ?例えばね…、今のクラスでは、トマ、テル、モモ、ヤイコ、ヨミとかね…」
わ?わ?わ?わ?
なんて情報通なんだよ…、余計なことをほじくりやがって…。
その5人のうち前の4人は、小学生のときに僕と同じクラスだった女子たち、ヨミは中1のとき同じクラスだった女子だ。ヨミは別として、それ以外の4人には身に覚えがある。といっても淡い恋で、しかも僕からでなく、女子たちのほうから接近してきた感じで…。
まあ正直、実人生ではこの2年E組の女子たちの顔ぶれを4月に知って、ちょっと驚いたのは確かだ。集まってしまってるじゃんか…。
「じつはね、このE組の顔ぶれ、あたしが決めたんだよ?」
「え?」
「あたし、こう見えてすごい権力を持ってるんだ♡クラス編成なんか、お手のもの。男子には力が及ばないけど、女子の顔ぶれなら決めれるよ?」
「ということは…」
「うん♡このクラスに、ケイタくんの関係した女子を全員、集めちゃった♡」
「わっ!?」
いや、関係はしてないけどな。
実人生で覚えてる。2年の4月の始業式直後のホームルームで、トマ・テル・モモ・ヤイコが異常なようすで僕を見、僕が気づくとぷいと視線をそらしたが、なんだか固まっていた。
僕自身も、自分が実は小中学生時代、けっこう女子にモテていたような感じを受けていた。ヨアへの色目が成功したんでそれで僕は舞い上がって、高校生になってからも同じ調子で女子たちにちょっかいをかけたところ、みごとに爆沈を連発した。大学生になっても社会人になっても爆沈を連発し続け、あれ?僕、もしかして女子にモテない?と気がついた。けっきょく妻とは、会社の上司の紹介で結婚した。
たぶんだけど、僕の平平凡凡な雰囲気は、十代前半の幼い未熟な精神の女子には頼もしく見えて、十代後半以降の大人になった精神の女子には頼りなく見えるんだろうと思っている。
「エヘヘ♡ケイタくん、ハーレムだね♡」
「…」
「このクラスでハーレムを作れば、いいじゃん♡それで、その一人にあたしも加えれば、完ぺきじゃん♡みんなはケイタくんを独り占めしたいだろうけど、あたしがみんなにようく言い聞かせておくからさァ~♡ね?ね?いいでしょ?」
とモエは、なにやら勝手におかしな計画を構想している。
まあ、いい。どうせここはヴァーチャルだし、僕には都合よい、いい展開だ。
「それじゃ、5人の彼氏はどうすんだよ?番長もいるし…」
「ああ、あの5人はどうせテキトーに話を合わせてただけだし、捨てる♡」
わ?その5人、気の毒…。ジコチュー女子に振り回されたあげくに、ぽいと捨てられる。まあ、他人のこと言えないけど、僕も。
「番長のことは、ケイタくんに一任するゥ~~ッ♡」
「えっ!!!???」
いや、一任されても、困るんだけど。
「ケイタくんなら、この学校に巣くう忌まわしいあいつらを根絶やしにしてくれると信じてるよォ~~♡」
ええええー???
あ、もしかすると、これが次のミッションなのか?
ミカ、ヨア、ついでにモエという、過去の恋愛トラウマを一気に解決したので、次のミッションが発動したんだ。
しかし、これ、無理ゲーじゃね?ミッションインポッシブルだよ、これ…。どうすんだよ、天の声さん!
そういえば、ここに送られてから天の声を1度も聞いてないなあ…。ちょっとくらい、ナビしてくれたらいいのに。
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