第2話

 ──死んだらどこに行くんだろう。死んで閉じた視界はそのうち何を見るんだろう。穢れた血肉はどこに行くのか。

 聖書を除いてどんな本にも確実な記述が無いので、折角だからこの身で確かめたいと思ったんです。


 …立派な夢を持っていたんですね。


 立派だなんて、とんでもない。現にこの願望を食い止めようとしてきた人は多かった。みんな「意味ないからやめろ」って言うんです。多くは親族と友人でした。


 …残りの少数はどなたですか?


 ネットです。


 あー、なるほど。


 ネットの反応は、それは面白かった。

 まず初めに一人、僕の書き込みに返信してきたんです。「死んでも意味が無い。良心で伝えるが、人生楽しいこともあるから、どうか死にはしないでほしい。」って。

 その後すぐ、僕の書き込みは拡散されて、閲覧数は止まることを知りませんでした。


 そりゃそんな返事は来ますよね。


 面白かったのはその次です。最初に返信してきた人が、そのまた返信で、自分の宣伝をし始めたんです。


 ハハハッ!!面白すぎる!!


 そうでしょう!!

 ……あ、そろそろ夢の内容を話した方が良いですよね。


 ハハ、ハー…そうですね。お客様からは夢の内容を教えてもらわないといけない決まりなので。


 それで、さっき見させて頂いた夢の中で、父が首吊りを止めに部屋に来たんです。


 ほぉ。


 それで褒めてくれたんです。勉強頑張ったね、って。これまで生きていてくれてありがとう、って。それでこれからは、お父さんが生活費出すからって。泣いてくれました。


 いいお父さんだ。


 ──それで…もう少し、泣いてくれた父のために、生きたくなりました。



 は?


 どうか、駄目でしょうか…


 駄目に決まってます。決まりなので。


 …嫌だ。死にたくない。

 まだ…まだ生き──


 ──暗転──

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スケープゴート リペア(純文学) @experiences_tie

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