第9話

「とんでもない大学生活だよ。これは......」


と一人寮でつぶやいているとスマホのライン通知が来た。遥からだ。あいつも少し毒されてきたのか俺と出かけることをデートと言うようになった。


「デートしよ♪」


たった一言だが女性らしさが見えてくる。少し嫌な予感もしたが、俺も気晴らしにちょうどいいと思って間をおいて返事をした。身支度を整えて指定した場所へと向かう。


「あいつ、指示しといて遅刻かよ」


ぶつくさと文句を言っているとベンチに座っていた美少女がこちらに向かってきた。無言でこちらをじろじろと見つめてくる。なんだ? 俺に変なものでもついてるのか?


「遅刻じゃねえよ。お前が気づくの遅いんだが?」


聞き覚えのある声だ。だが、脳みそはバグを起こしている。声の主はこの美少女から聞こえてくる。口の動きも一緒だ。意味が分からん。


「俺だよ、俺!! 雲母遥です。 聞こえてますか、いちず?」


「お前......。やっぱそういう趣味だったか」


「いや、違うって話聞け!! 今度、コミケで清楚なのえるで参加するからその予行ついでだよ! こんなの俺だって恥ずかしいし......」


ますます拗れていきそうだ......。俺の周りはどうして俺を拗らせるのがうまいんだ?もう、気が狂ってしまいそうだ。不思議と違和感がないのがとても目のやり場に困る。ホントに元も可愛いからな


「なんか言ったか?」


「飯食べてさっさと帰ろう」


「嫌だよ。俺、これのために遊園地のペアチケット安くで購入したんだぞ?カップル割引で!どうだ?うれしかろう?」


「うーーーーーーん......。カップルというのはどうしても解せないが遊園地には行きたい。しかたねぇなぁ!」


こうして俺と彼女面した親友とのカップル♂デートが始まる。ジェットコースターやコーヒーカップどれをとってもカップルのお楽しみコースだ。

 一つ気になるのは目線だ、すごい美少女の方を見ている。だがこれは羨望や嫉妬の眼差しであって、だれもこいつが男だとは思っているような疑いの眼ではない。声を発しないという制約を課しているこいつは無敵なのだ。こうして俺たちはいろんな意味でハラハラドキドキの一日を過ごした。


楽しかったねと言うとあいつは屈託のない笑顔で「ああ!」といって手を振ってくれた。この胸の高鳴りがあいつに聞こえてくれるなと胸を押さえて手を振り返した。

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【α版】俺の推しVtuberの魂が俺の親友(♂)だったんだが元も可愛いから困っている。 小鳥 遊(ことり ゆう) @youarekotori

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