第7話

Vの活動も軌道に乗り始め、いよいよ10万の大台にのってきた。何度か親子(押崎さんとの配信)したのも意外に人気で、押崎さんも吹っ切れたオタクっぷりのキャラで人気になっていた。俺の方も単体で人気が出始めた。色っぽいスーツ姿にしたこともあり、特に女性人気はすごい。何というか、これが宝塚現象かと言った具合だ。男性ファンは僕と女性Vとの百合っぽい配信をみて尊みを感じてくれているらしい。今のところ男性とバレてないようだ......さすがは高性能マイク。女性っぽい仕草は遥の配信を見てたし、実際に会ってるから参考にしている。


「最近、勉強頑張ってんな。いちずのくせに」


「俺だっていろいろ頑張ってんの!!」


「Vの方も?」


「おお! おお? あ!?」


「へへ、引っ掛かってやんの!! でもほんとにVになったんだ。自分がなることなんて考えてなさそうだったのに」


「まあ、そうなんだけど。お前と一緒に配信とかしたら面白いだろうなぁって......。でもなんで俺ってわかったんだよ」


「癖だよ。お前焦ると手を頬に当てて、口元触ったりしてるだろ。そういうの気を付けた方がいいぞ! 後、ところどころ男くさいから」


「ひいい、先輩~」


「ははは! 先輩を見習いたまえ~。ま、俺の場合は高2から始めてるから大先輩か」


「入試の時、どれだけお世話になったか......。その時、お前も頑張ってたんだな」


「俺もそろそろ押崎さんにバレるかなぁ」


「ああ~、それは......。その」


「雲母さあん! というか、ははぁ! のえる様~」


「ちょ、やめてよ。人前で! 人のいないところで話そ」


そういって人気のない食堂へと誘い、サーバーの水をがぶ飲みしながら話を聞いていた。


「はぁ。ま、こいつがVになったり、押崎さんが親になった時点でいつかはバレると思ったけど。こんなに早いとはなぁ」


「じん様との絡みが最高によかったです。男を翻弄してる感じがごちそうさまでした」


「そっち側のファンに褒められるならこちらもVtuber冥利に尽きるよ。それで、ヴァンプクイーンちゃんに少しいいお知らせ持ってきたよ」


彼は俺にVtuberジルとして正式にコラボ配信してくれることを約束してくれた。新参者だがここまで異常な速さで伸びているのも遥自身以来らしく、彼も楽し気に配信の内容を話してきてくれた。歪で不思議な3人の関係。推しが親友だった俺、親友とコラボ配信できるようになった人気Vtuberの遥、推しと顔が似てるだけで俺のVtuber計画の後押しをしてくれた押崎さん。この三人の友情は形容しがたい結束で成り立っているのだ。

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