Sequel

Episode 1:卒業式

 あの激戦から三ヶ月。新しい年が迎え、戦いの痕跡が大きく残る一方、平和のために活動する人もいるであろう。その事件で命を落とした人たち、甚大な被害に遭った人たち、戦闘に巻き込まれた人たち、安らかに眠れ。そのレクイエムは唄っていく。


 2011年 March, 9日、今日は卒業式。レベッカは誰もいない学校の体育館で卒業式をおこなっていた。その傍にアンジー楓、モグ、マリア愛美が立っていた。2年前September頃より、原作者のゲームクリエイトを手伝うためにレベッカとは違う学校に転入してきたモグとマリア愛美、レベッカに近づくために転校してきたアンジー楓。なにより緋音を除いた昔馴染みが4人揃ったこと、このような形で共に卒業するとは夢にも思わなかった。4人で卒業式、それ以外の人はいない。戦いが終わった後、4人以外の仲間達はそれぞれの道を進むよう卒業した。未来人二人ことジャズ賢一やクラベス鈴菜はこの時代に留まる理由がなくなり消え、白之助は村の復興のため仲間から抜け、カラダデカイはアレグロ雪郎の手伝いを選び、ハーヴやヘルバタこと「ウインナーシスターズ」はビートのいるニューヨーク州へ飛び立っていき、リサななやロドゆいはお腹に子を宿しているという理由で仲間から抜け、ヒメは誰かと再婚した。他の三人「アイス早苗、ミント彩香、ミコ」は、それぞれ自分探しの旅に出た。


 残された4人は今、自分の道を進むための卒業式を始めるところだ。

「これから卒業式を会式します。卒業生、起立。礼。着席。...といっても、私たち4人だけの卒業式だよね。4人になった私たちは、それぞれ自分の道を進まなきゃって、卒業式でもしようかなって。」

「レベッカのやることも一理あるね。そうでなきゃ、4人だけが取り残されるからね。」

「兄さんの手伝いをしなきゃね。あたしたちはもう18歳なのだから。」

「俺だって、姉貴とともに一族を支えねばなっていう結論だ。」

「さて、卒業式といえば卒業証書授与とか、羽ばたく歌とか、思い出話とか。どれが先にすべきかな......?」

「順番なんて、なんでもいいだろ?卒業証書授与からいこうぜ。」

「でも、羽ばたく歌が先だと僕は思うよ。」

「待って、校歌斉唱忘れてない?」

「あ、言われてみれば...よし。君たち、まずは校歌斉唱からいこう。...校歌・斉唱。いくよ。」

4人だけの卒業式で、どんな校歌にするとやら。


It ’s a bright and far clear blue sky.

Cool and clean The air is delicious.

We are good boys, cheerful school. Let's walk together.


(明るく はるかに 清しの青空よ

涼しく 清らかに 空気はおいしいよ

僕らは よい子 明るく あれよ 御伽童話学校 共に歩もう。)


「...変なの。とはいえ、私の学校は既に卒業したからいっか。校歌の歌詞は適当に考えたもん。よし、次は卒業証書授与だよ。」


 次は卒業証書を授与するのだが、4人だけの卒業式なので誰が授与するのか。

「わしが授与するけぇ。」

「そんなこともあろうかと、ドクターを呼んでおいた。まぁ、ドクターは暇人だからね。」

順番に卒業証書を授与することになった。

「ブルース・エックハルト!」「Ja.」

「アンジェラ・楓・エンジェル!」「Yes.」

「愛美・マリア・コンブリオ!」「Yes!」

「うーん、レベッカ。」「Yes.」


 卒業証書を受け取った4人。それぞれ本名で呼ばれたのだが、レベッカだけはファミリーネームがわからないままだった。

「私の本名は、例え昔馴染みだろうが知り合いだろうが、誰にも教えないよ。Sorry. んじゃ、次は答辞かな。卒業生代表は私が。」

レベッカは卒業生代表として、答辞を述べていた。

「3年前までは退屈な日々を送ってきた。兄貴が手掛けた私の似顔絵をきっかけに、本格的な活動をしてきた結果、兄貴の夢だけじゃなく、仲間ができてよかったと私は実感した。その楽しい時間は長くはなく、それぞれ自分の道を進むようになっていき、取り残された私たちは卒業しなければと、こうして4人だけの卒業式を会式したんだ。思い残すことはなく、姿をくらました仲間もいれば、自分探しの旅に出た仲間もいるだろう。私の前からいなくなろうとも、離れていようとも、兄貴が集めてきた仲間は永遠だ。共に過ごしてきた出来事は決して忘れられない、私にとってかけがえのない思い出だ。ともに作ってくれたステキな思い出ありがとう。卒業生代表、レベッカ。」


 3年間楽しんだ日々、それが過去の出来事になろうとも、過ぎ去ろうともけっして忘れられない思い出であった。

「君たち、羽ばたく歌を斉唱しよう!!」

一同は自らが羽ばたくための歌を斉唱した。


It's time to take off.

Wings are not what you want, but what you grow and fly.

Have you finished farewell, let's say goodbye.

Teacher, friend, I'm leaving, so goodbye.

Leaving in the beautiful sky.

Precious memory.


(今飛び立つ時が迎えた。

翼は欲するものではなく、生やして飛んで行くもの。

別れは済ませたかい、別れの言葉を告げよう。

先生、友、私は旅立つので、さようなら。

美しき大空で去ってゆく。

尊い記憶。)


「...別れの歌の一部をヒントにして作詞したものの、なにか変だね。やっぱ普通の、一般的な別れの歌の方がしっくりくる。...これをもって、自分の道を進むための卒業式を閉式とします。卒業生、退場!!」


 こうして、4人だけの卒業式は終わった。体育館の外に出る4人、卒業証書授与役を任されただけのDr.デカボットは、自分の道を進む4人を見届けることになった。

「終わったな......。姉貴とともに一族を支える時が来たようだな。子供の頃よりついてきた俺たちは離ればなれになるが、過ごしてきた時間は忘れない。んじゃ、俺はこれで。」

「12年間ありがとう。いつかまた会おう。いつだって私たちは永遠の友だよ。」

まずはモグが去り、順番にお別れを告げる卒業生。

「今後の僕は、一度空に戻ることにするよ。色々ありがとう。また、会おうね...。」

「私にとって君はモグ同様、欠けてはならない友だよ。また遊びに来てよ。」

アンジー楓は飛び立っていき、残るはマリア愛美だけ。

「あなたとはいっぱい付き合いたいけど、兄さんの手伝いをしなきゃならなくなったの。じいさん、死んじゃったし......。」

「君のおじいさんのことは御愁傷様。君とはまた会える機会が少なくなっていき大変だろう......だが、それでも君は私にとって大事なフレンドだ。いつでも会うといい。」

「......時間があったらね。でもあたし、荷造りをしなきゃならないの。先にいくね。」

マリア愛美はカリフォルニア州に帰国するための荷造りで早々に去っていった。とうとうレベッカ一人だけになった。3人を見届けたDr.デカボットは、レベッカに問いかけた。

「さて、お主はどうする?」

「まだいたのかよ。私の道は、......うーん、どうしよう。」

「わしの下で働くか?見返りに、お主への全力バックアップを約束しよう。」

「気持ちだけは受けとるよ。やっぱ私、兄貴と同じ道を進むことにするよ。新しい仲間を求めて...それで......。ここに残ることにする。」

「...それがお主の答えかのう。なら、桃Vとともに頑張りぃよ。わしは忙しい身なんでね、お互いベストを尽くせぇよ。」

Dr.デカボットはモビルに乗り、飛び去っていった。レベッカは原作者と同じ道を進むと、ここに残ることになった。

「私一人になったな......。」


 夜、E.G.日本支部跡地にて。レベッカは誰もいないこの跡地で繕いていた。誰かが出入りする物音を感じて...。

「...雪郎?」

「レベッカ、暗い跡地で何をしているんだ?」

「ちょっとね。みんなが自分の道を進むなか、私だけが取り残されてね。でも、私は兄貴と同じ道を進むと決めたんだ。やっぱ私じゃないと兄貴がだらけてしまうしね。」

「原作者を支える者がいなきゃって言いたいのか。あんたがそうしたいなら、しっかり支えとけよ。それより明日の話だが、自分の道を進む3人を見送ろうぜ。今日の小さなお別れじゃあ物足りないだろ?まあ、3人が明日ここから出ていくつもりだからな。...昔話の詳細、知りたいか?身を投げ出して死んじまったポルカのこと、ポルカの従妹の話、去年ニューヨーク州をぶらついたとき俺はわかったんだ。従妹の正体はセレーネ。セリア・アトラスだ。あの子は今は10歳だが、ポルカの面影を重ねていてな...ポルカの言う従妹とはセレーネのことだったんだな...そんな気がしたんだ。寄り道ついでに俺は、おもりとしてラファエルの両親にアトラス家の家宝『センチネルシールド』を持たされた。おかげさまで戦いに役立つ結果になったもんだ。人と人の繋がり、すなわち絆はいいよな。......ポルカ。」

アレグロ雪郎はふと思い出す。


 2007年 October, 17日、身を投じた初恋の少女ポルカ。シチメン姉妹による再起。

「来ないでっ!!...私は、義父さんと義母さんに振り回されるのはもう......。」

「早まるな...君の事情はどうあれ、自身の命を粗末にするのはけっして許されないことだ...!!」

「私は、なにもかも嫌になったの...世の中も...私自身も...。」

「...君の大切なものがあるはずだ。考え直せ。死のうと考えるな。」

「私の大切なもの...今の私にはもうない。あなた以外の人々に避けられがちな私じゃ守れるものなんてない...。それに雪郎くん...せめて従妹をあなたに...。」

「......?」

「雪郎くん...。私はもう長くないから...。せめて従妹の存在だけは伝えなきゃ......。」

「...まさか、君の死期は近いってのか?病名はなんだ?人に避けられるような病とはいったい?」

「ごほっ!ごほっ!!...これ以上あなたを巻き込むわけには......。」

「ポルカ...?ちょ、ポルカ!!」

「従妹のこと、お願いね......。」

ポルカは両手を広げ、背中からそのままがけ下へ落ちた。アレグロ雪郎は絶叫する、理解に苦しみ慟哭した。

「ポルカァァァァアアアアアア!!!!!......ポルカ...俺にはわからないよ......君の意図も...君の考えも...理解できん......。うおぉぉぁぁぁあああああ!!!!!!」


 先代Dr.デカボットことイヴァンの部下であり、天才医師「黒田博士」は当時生死不明であり、コンブリオ家の総力でも見つけようがなかったため...いや、もっともポルカはアレグロ雪郎に隠し事をしていたため、救いのない運命になった。マリア愛美は兄を慰めたいのだが、この状態では何もしてあげられなかった。エネルジコは、そんな再起できない孫を叩き直すために七面一家を呼び出した。緋音の祖父「七面一平」で孫を叩き直すのがエネルジコの考え、だがハルミは、シチメン姉妹はそれを却下。2人で説得を試みた結果、アレグロ雪郎は立ち直れた。


「時には別れが来ることもある。その別れは永遠か、一時か、それと気まぐれか、気が向いたらまた会える時もある。レベッカなら、もうわかっているだろ?」

「...どんなに離れていても別れていようとも、私たちの絆は永遠だよ。別れは一時的なものであるので、離れた仲間の気が向いたらいつかまた会えるさ。それに私は、私から会いにいこうかな......。気が向いたらではなく、会いたいときでも...恋しいときかな。...さ、翌朝三人を見送るとしよう。雪郎、good night.」


 翌朝、日本支部跡地ワープゾーン前にて、皆が本当のお別れの体制に入っていた。

「よし、盛大に見送ろうじゃないか。」

「いよいよ本当のお別れか。しっかり挨拶しなきゃね。」

「レベッカ、12年間世話になった。俺は必ず帰ってくるぜ。」

「さよならじゃなく、いつかまた会える日まで。うん、きっと!!また会える!!それまでに原作者を支えてね!!」

「レベッカ、あなたのことは忘れない。何かを捨てようとも、どんな思い出を忘れようとも、あたしたちが過ごした時間や思い出はずっと心の中。だから、時が過ぎ去っても、あたしたちのことを思い出してね。」

レベッカと3人はお互いにハグしあっていた。

「ちゃんとした挨拶thanks. これで君たちも、私も、心置きなく自分の道を歩める。では改めて、お互い最後の挨拶いくよ。Goodbye, my friends.」

3人は順番にワープゾーンをくぐっていく。

「また、会おうな。」

「じゃあね。」

「さよなら、また会う日まで。兄さん、お先に。」

レベッカにそれぞれ別れの一言を告げ、去っていった。...二人だけになった。アレグロ雪郎は別れていった仲間達とは違い、再びレベッカの前に現れるだろう。

「レベッカ、これからもあんたとは何度も会うことになるだろう。とりあえず、俺の仕事は行方知らずのシチメンを探しだすことだ。見つけ次第、連絡する。エイプリルで会おう。」

必ずやシチメンこと緋音を見つけ出すと告げ、彼はそのままワープゾーンをくぐり、最後の一回でワープエネルギーは消失した。


 最後までみんなを見送ったレベッカは、兄貴こと原作者のもとへ戻った。原作者の膝に頭を乗っけるレベッカ。今までの出来事は空想であり、現実でもある。現実ではどんなに離れていっても、空想でもまた会える。仲間3人の連絡先はちゃんと残ってあり、いつでも電子メールでお話ができる。再び連絡を取り、仲間に会えると信じて。レベッカの夢物語は、一旦幕を閉じた。


To Be Continued

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