Episode 9:傍観者
アレグロ雪郎は精鋭部隊を連れてくるために、一度本部に戻り、作戦会議を始めていた。
「待たせたな、雪郎。」
「遅かったじゃないか賢一。さて皆が揃ったことだ、作戦会議を始めるとするか。俺たち精鋭部隊の作戦は、奴を公園、イベント、飲食店といった皆の使う施設まで誘導させることだ。つまり、あれだ。奴の悪行証拠を作るということだ。奴に大打撃を与える作戦は『奴が絶対悪である根拠がはっきり裏付けられる誘導作戦』とする。」
アレグロ雪郎の考えにミント彩香は異議を唱えた。
「異議あり!!...本当にこれでいいだろうか?そんなこと、賢一達にはわかっているでしょ?」
「俺の考えに異論でもあんのか?」
「そうだな...。仮に奴が人の店を蹂躙するとしよう。...瞬く間に戦場と化し、やがてみんなの楽しむ場所は消えてなくなる。」
「勝利に犠牲は付き物だ。奴の罪は重ねれば重ねるほど、絶対悪の存在になり得る。そして悪の存在を倒した暁に、永劫の平和は約束される。あんただって、そんな平和を望んでいるはずだ。」
「今すぐ作戦を中止して。馬鹿げた作戦を実行しても、内戦が早まるだけよ。後から後悔するような作戦は断じて認めない。」
「俺に意見するのか?なら、そういうあんたは戦略外だ。つまみ出せ!!」
異議を唱えるミント彩香は戦力外とみなされ、会議室からつまみ出された。
「よし。我々は戦いの準備に取りかかるぞ。」
ミント彩香は本部の外でうろついていた。もちろん、忘れ物を取りに行く約束は忘れていない。
「そういや、まだ聞いてなかったな...。忘れ物のありかを。」
適当に倉庫で探ったところ、探し物をしているコチウニに会ってしまった。
「あなたは...誰だっけ?こんなところで何をしている?隠れ家のように模様替えして...へ?」
ミント彩香はエルエーのウラの顔を思い出した。
「コチウニ!?あれが噂のウラの顔なのか!雪郎の祖父を殺めた犯人がまさかE.G.倉庫に留まっているとは...目的は何だ!!」
「ふ~む。」
「それは、七面緋音のハンマー!!倉庫から漁ってきたのか!?」
「それがどうした。今は行方知らず、構わんだろう?」
コチウニは緋音のハンマーを振りかかってきた。
「奴が何をやっているのか、あんたにはわかってるんだろ!!」
「その通り。我がぎみの侵攻で、世界は滅びるのだよ。」
「だったらなぜ!!」
「知ったことか。俺の探しているものはこんなものだけではない。」
「...ミュゼットの......忘れ物か?」
「なるほど...俺の探し求めたもののありかがわかった。礼をいうぞ。」
「どわっ!!」
コチウニの探しているもののありかがわかると、ミント彩香を振り払い、どこかへ移動した。
「まずいな...。コチウニの探し物がミュゼットの忘れ物だなんて。ありかといっても、本人以外誰も知らないし、問題ないだろう。...先回りしなきゃね。」
コチウニより先に確保するべく、本部で聞き込みをしていた。ほしいものを何でも調達してくれる人がいるという噂を耳にしたミント彩香はその人に会い、取引した。
「ミュゼットの忘れ物のありかが知りたい。」
「言えるわけないでヤンス。」
「こいつ(コチウニ)にもそう言ったか?」
「うちは心のない連中とは取引しない。」
「そうか?雪郎の妹、私のお母...愛美にチクってやろうかな?あんたに拒否権はないって大目玉喰らってやろうかな?」
「ああわかったでヤンス!!教えればいいでヤンス!!」
教えてくれた場所へ向かったが、中には入れなかった。
「入れないじゃん!!まったくなんてことか...。」
会議が終わったのか、ジャズ賢一が来た。
「あら、賢一じゃないか。見てよ、私って不運を降りかかってるように見える?雪郎は各地にエサを設置して、においを嗅ぎ付けて向かってくる奴と争わせようとしているが、それは間違ってる。」
ジャズ賢一はミュゼットの部屋の鍵を開けた。
「その通りだ。」
そのドアを開けると、なんとミュゼットの忘れ物とは「パワードスーツ」のことだった。
「アーシースーツ。これがミュゼットのいう、忘れ物......か。持ち運びに困らないサイズ、それほど便利とは。開けてくれてどうも賢一。」
「助かったよ彩香。」
なんとミント彩香の後ろにコチウニが立っていた。先ほどのジャズ賢一はスタンガンで気絶したらしい。
「そんな...まさか!!」
「例のものを探す手間が省けたってもんだ。」
コチウニがハンマーをもって襲いかかってきた。ミント彩香はアーシースーツを持ち出して、逃走をはかった。
「どこかヒトケのない場所へ誘導しないと。奴はアーシースーツを奪って、どうするつもりなんだ?理解できない。ここは雪郎に頼るか?いや、彼のことだからエマージェンシーは難しいか。とりあえず、会議室に入れるしかないか。」
会議室にアーシースーツを放り込み、戦闘態勢に入った。
「こんなもののために命を散らすなんて、泣ける話だな。」
「ちゃんと持ち主がある。ミュゼットだ。あんたに彼女のスーツを取られるくらいなら、私がぜってぇ守ってみせる!!」
「威勢だけは褒めてやる。だが、残念ながら叩き潰される運命だ!!」
コチウニの猛攻は止まらず、それでもミント彩香は守りを固めている。
「まったく凄い天使だ。そろそろ楽になったらどうかね。」
「ぶわぁ!!」
ミント彩香は壁に穴があいてしまうほど吹っ飛ばされた。傷つき倒れ、風前の灯になり絶体絶命。壁のむこう側にあるのは......。
「緋音の像を拝めるのもいいですね。今壊して差し上げましょう。」
コチウニの持つ緋音のハンマーに暗黒エネルギーを充填している。像を壊さぬとミント彩香はサイコショックで暗黒エネルギー充填を止めた。
「最強の女の人物像を壊してやろうが、そうはいかない。コチウニ......いや、エルエーッ!!」
ミント彩香の正義の鉄拳でコチウニをノックアウトした。
「うわっ!!あぁ~!!」
緋音のハンマーを取り返したことで一件落着。だが......。
「何の騒ぎだ!?......!!ハンマーを置いて、おとなしくしろ!!文句言う白女だと思っていたが、不届き者とは。」
「何を言っているんだ。戦う相手が違うだろうが。」
「あれは...コチウニじゃないか。」
「彼は負けた。大事な物のために、私に決闘を挑んだかも。」
「コチウニよ、俺たちの作戦で奴を引き寄せる。その目で見届けるんだな。」
「ちょっ!?甘い考えじゃあ、世界は救われないわ!!」
コチウニは何かぶつぶつ呟いていた。
「我がぎみ......お許しを......。」
「ぶつぶつ呟いてるように見えるが、祖父が殺された件についてもそうだが、奴とはどう繋がっているのか、答えろコチウニ!!」
「ぐ...何の冗談だ......。こんなくだらんことをするような私じゃない。」
コチウニはオモテの顔「エルエー」に切り替え、命乞いを試みた。
「仲間である私をどうするのですか?」
「奴が祖父殺しに関与しているなら黙ってられない。さあ、奴に繋げ。宣戦布告してぇ。」
「なに勘違いしていますか。私は...実は......本当は......。バウザーの部下です。」
エルエーの衝撃の事実に二人は驚いていた。
「なに!!バウザーの部下だと!?ゲームキャラじゃあるまい!!」
「いままで黙ってたけど、わがぎ...テリーを取り巻く様子や出来事、事件を傍観してきました。ですが、テリーを止めるものは一人もいません。そこで、バウザーの提案で私はウラの顔の姿でテリーの懐に入りました。皆様を奮い起てるための策を考えてきました。人間不信になったバサカを恐喝したり...。」
「俺の祖父は...どう殺されたのか?」
「...敵を欺くにはまず味方から。エネルジコの考えは全く理解できかねますね......。一応協力はしましたけどね。彼は理解を越えた無駄死に、私はうっかり武器を落としてしまいまして。」
「くだらぬ言い訳はわかった。だがな、祖父をなめるなよ。祖父は祖父の考えで行動を取ったってわけだ...信じられないが......。まぁ、とにかくだ。ブラーが見かけないことから、あんたが処分したのではないかとにらんでいる。もし本当なら、その償いをしなければならない。いいな?」
「は...はあ......。」
コチウニの件はこれで解決した。皆はワープゾーンの前に立っていた。
「皆の衆よ、ここからが命がけの戦いになるだろう。原作者に関わった者は生きて帰る保証はないこと、皆にはわかっているよな?戦いに巻き込んだ者はいるだろう、バサカやブラーは死んだ。これはもうどうしようもないことだ。それはさておき、本題に入る。目指すは日本海の中心にあるケカル帝国だ。そこには奴の本拠地『テリー城』がそびえ立っている。強行突破はもちろんだが、刺客や幻影が多数潜んでいて一筋縄ではいかない。分散して戦うという手もあるが。出発地点はレベッカ達と同じく新潟県中越の堤防だ。今時レベッカたちは敵に囲まれているかもしれん。早急に出発するぞ。彩香、あんたが望んだ内容だ。引き寄せるようなマネはしない。だから奴の城に乗り込み、必ず倒す!!」
「雪郎、出発準備が完了した。いつでもいいぞ。」
「奴を倒す力を貸すわ。」
「アリガタク思ッテクダサイ。勝利ヲ約束シマス。」
「よし、皆の衆よ、早速出発だ!!この世界の為に!!」
再び中越の堤防にワープし、既に用意されていたもう一隻の船に乗り、レベッカ達を合流しに出発した。
「待ってろよレベッカ。すぐに追い付いてやる。」
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