Episode 5:オーガスト、そして刺客
ここはアメリカ・ニューヨーク州。世界に名だたる大都市。ふと気づけば8月下旬を迎えていた。到着したレベッカ達は引き続き、戦力になる仲間を探していた。
「ちょっとした野暮用があってな。あーそれから、あんたら自由行動しても構わないぜ。」
アレグロ雪郎は野暮用で、一時的にパーティーから離れた。残されたレベッカ達は別行動を取ることになった。未来人二人と亡命者二人、マイケルやロバートは都市を楽しみ、レベッカと愉快な仲間たちとお目付け役のハルミやミュゼットは引き続き仲間を探すことになった。
「仲間を探すといっても、情報が足りないな。ミュゼット、君は情報操作員なんだろう。情報ないかな?」
「私に聞かれても......わからないのよ。アメリカでの亡命者は私だけ...ん?もう一人いたような...。雅史のこと?でも、どこにいるのかは知らない。未来人がいるとの情報はないし。」
「まぁ、やってみないとわからないことだし、探してみよう。」
そうと決めたレベッカは雅史とやらを探すことにした。都会で根気よく探したところで、またしても未来人に出会った。
「もしかして、ミュゼット?」
未来人の傍はなんと、ミュゼットの知人「大原雅史」だった。
「健太と杏璃の奨めでアメリカに逃げてきたはいいけど、アメリカの知人がいなくてね。運良く僕の学園を知っている未来人に出会った、今も同行しているよ。この人はどうも人前でしゃべるのが苦手でしてね、筆談しなきゃっていうタイプだよ。」
『"以後、お見知りおきを。"』
「また未来人かよ。黒髪ウェーブがかったドクターの妻の他、来年より内戦が起きる。2017年にドカーン。いつものパターンだろ?」
『"それとは別。二年後に雅史の母校『樋串武学園』は廃校になる。"』
「最初は信じなかったけどね。...それに僕の憧れの国に永住するとは思わなかった。好きなんだもん、アメリカ。...おっと、申し遅れたね。僕は大原雅史。樋串武学園の元生徒...とでもいっておこうかな。今は自由の国の学校の生徒だよ。自由だから制服は留学?前のままだよ。」
『"ドロシー。未来人。"』
「変わった未来人だね。命がけの戦いになるけど大丈夫?」
「一度は逃げて済むと思った。でも逃げたところでなにも変わらないと考えると、なんかもう...僕だけが助かるだけで、逃げずに留めている杏璃と健太には悪いし。...よし、日本へ引き返そう。僕は既に留学生なので今更、樋串武学園に戻る気はないの。ただ、二人を助けたいだけだからね。」
「そうと決まれば、さっそく日本...やっぱ怖いな。」
「日本へ戻るには雪郎がいないと意味ないじゃん!!」
「雪郎は今ごろ、どこで何をやっているのだろうか...?」
アレグロ雪郎はどうしても外せない用事があって、なかなか戻らない。マイケルとロバートは、アーケードゲームを楽しんでいた。
「凄腕の狙撃手は伊達じゃないのは本当みたいだね。もしよければ、僕の組織に入らないかい?」
「組織...か。いつかできるであろう目的のために設立してみたいものさ。...遠慮しとくよ。」
未来人二人ことジンとモルガンは、カフェで会話していた。亡命者二人ことアイと晃樹は離れないように、くっついていた。
「核戦争のない世界...なるほど、そんな未来なのか。」
「お互い様でしょ。...もしも並行世界の別人がいるという噂が本当だとしたら...。」
「それはありうるな。もう一人のレベッカがいるといいな。」
そうやってワイワイしているうちに、野暮用済ませたアレグロ雪郎が戻ってきた。
「一度日本へ戻ることになった。原作者からのエマージェンシーだ。全員集合!!」
集められたみんなは、日本へ戻ることとなった。
「原作者は今、奴の巣食う掲示板に出くわしている。奴の口からはアフガニスタンやイラクをどうのこうの、ズバリ、おそらく刺客を送り込む気だ。オオゴトになる前に、今すぐ戻るぞ。」
「兄貴の頼みと言えど、今から引き返してどうする?まだ仲間集めの途中だろうが。」
「案ずることはない。そんなこともあろうかと、助っ人を用意しておいた。自己紹介頼む。」
アレグロ雪郎が用意したのは、男勝りかつ強気な女であった。
「私はレジーナ。レジーナ・バーグマンだ。それに...。」
不思議なことに、レベッカとは二年前より既に出会っていることが窺える。
「あれれ?どっかで会ったっけ?...まぁ、いいか。」
「原作者の安全が最優先だ。すぐに出発するぞ。」
日本に引き返すレベッカたちなのだが。
「何か忘れてるような...ま、いいか。」
ロバートやマイケルを置いて、ワープゾーン装置で移動した。
久々のE.G.日本支部。そこには原作者がいた。
「蹂躙されるのに堪えきれなくて、つい出くわしてしまった。留学しているというハッタリかますも、アフガニスタン、イラクといった心のない言葉を返された。」
「兄貴、刺客の件は?」
「どうやら我々の知らないうちに刺客がうろついているらしいな。戦闘前に、何か手を打たねば。」
原作者は作戦会議を開き、戦略やフォーメーションについて話し合っていた。
「刺客は奴との利害は一致しているとは思えない。やりたくない仕事をさせられているようなので、手を引くよう交渉する。応じなかった場合は、その時はその時で。」
「...シンプルな方法か。悪くない発案だ。」
「刺客といっても、本当はやりたくない彼らでしょ。うまく交渉できれば、仲間入りも夢じゃないかも。」
「そうと決まれば、作戦実行といこう。モグとアンジー楓が拉致されたポイントで。」
作戦を実行した一同は、拉致されたポイントことネット利用可能領域へと向かった。誰かがじたばたした形跡が残してあるものの、原作者の言う刺客とは別物だ。木の陰から出てきたのは読み通り、例の刺客ことアフガニスタンとイラクだった。
「君たちとは戦いたくない。好きでここに来たわけないはず。巨悪に立ち向かうためには君たちの力が必要だ。どうか、力を貸してほしい。」
「lam nat 'iilaa huna limithl hadha alshay' alsakhifa. faqat hawal maerifat ma 'iidha kan ladayk alquat liltaghalub ealaa alshar.(我々は、そんなくだらぬ事の為に、ここに来たんじゃない。悪に勝つ力があるか、試すだけだ。)」
「まさか、物騒な武装でいくんじゃないよね?」
「talama 'anana baltijiat , fala khiar 'amamana siwaa alqiam bidhalika. la tasheur bialsuw'i.(我々が刺客である以上、こうするしかないんだ。悪く思うなよ。)」
「交渉決裂...ではなさそう。条件次第で仲間入りしてくr...試すといってもね...武装した物騒な君たちを相手にどう戦うのか、思い付かないな。」
「なら俺がE.G.の圧力をもって、押さえつけてやる。なぁに、心配するな。俺には野暮用のついでに持ち込んだセンチネルシールドがある。この盾があれば、たとえ物騒な武装だろうが、どうってこともない。」
「金属バットは?」
「もうとっくに卒業した。以後、使うことはない。ただ、アキレウスの槍ならあるが。」
「よし、それならこちらの方が人数的に勝っていて、頼もしい盾を加えると有利。恐くない。」
レベッカ達を試すと称して物騒な戦闘が始まった。中東特有の銃器で乱射するも、アレグロ雪郎の盾により守られた。
「あんたら物陰に隠れてな!!」
レベッカを中心とする愉快な仲間たち、E.G.二人、レジーナを除いた未来人や亡命者は物陰に隠れていた。
「そのまま押し進む。俺に続け!!」
アレグロ雪郎は銃弾を防ぎつつ前に押し進み、レベッカとレジーナは隙をついて、刺客を取り押さえた。
「hal rabihat bihadha?(これで勝ったつもりか。)」
「観念するんだな。奴のいいなりで動いているに過ぎないあんたらじゃあ、俺たちには勝てんぞ。」
「...妙だ。降参もしてない、既に確信したってわけか。...雪郎!!ここから離れな!!こいつらは私たちもろとも消し飛ばすつもりだ!!」
「...あ。」
回避したいところがもう間に合わない、大ピンチなレベッカ達だが。光の速さで現れたマイケルによって、難を逃れた。
「遅れてすまない。ちょっとした別件があってね。」
「マイケル遅いじゃないか!!...もう少しで全滅するところだぜ。」
マイケルに助けられたところで、日本支部に帰還したレベッカ達。
「...さて、誰一人欠けてないか点呼を取る。ひとり、ふたり、...15人。全員無事だな。それにしてもレジーナ、彼らの意図が読めたとは、たいしたものだ。マイケルも分家にしては、全員担ぐほどの力のおかげで俺たちは奇跡的に生還できた。感謝する。」
「それより、中東の二人はどうなったの?」
「どうやらマイケルの迅速な武装解除によって助かったようだ。」
「死なせはしない...ことが君たちE.G.のモットーだろう?」
「limadha saeiditina?(何故、我々を助けた?)」
「自分を犠牲にしてまで使命を全うする刺客がいるか!!命を粗末にするんじゃない!!あんたら、自分のすべきことが他にあるだろ!!ないなら与えてやる!!俺たちを助けたマイケルに感謝しな!!」
命を粗末にする二人に激昂するアレグロ雪郎。
「俺たちE.G.の目的は、奴を止めることだ。仕留めるのではない!!報復の仕方、間違えるなよ。だから...手を貸せ。」
中東二人は素直にアレグロ雪郎の願いを聞き入れた。
「さて、これからのことはどうするの?」
「これだけの仲間があれば問題ない。様子を見てから動くことにする。」
「それよりロバートは何処へ?」
「彼なら、どうしても外せない用事があって、のちほど合流するそうだよ。」
ロバートはかろうじて生き残った人々を中心に、セカンダリーチームを結成したらしい。
「僕のプライマリーチームは全滅したけど、イタリアじゃない寄せ集めのセカンダリーならもう一度戦える。メグミ、アレックス、出るぞ。」
メグミのチームは日本到着時の地点は「ノウエツ」であることから瞬く間に全滅したのだ。アレックスチームも至急援護に向かうも力及ばずに全滅。生き残った二人はアメリカに逃げ、メンバーを探しているロバートに出会い、セカンダリーチームの一員となり、現在に至る。
「同じ失敗を繰り返してしまう甘い考えは、承知しないぞ。」
「そんなことわかってるって。...細かいことは気にしない。とにかく、日本海に近いノウエツへもう一度向かおう。」
ロバートが率いるセカンダリーチームは、再びノウエツへ向かうために、ワープゾーンで移動した。そこには危険地域であり、イレギュラーの懐に入ったように、刺客を含めた目前の敵がいた。
「一筋縄ではいかない...な。お二人さん、ここを守り抜くぞ!!」
ワープゾーン防衛戦が始まった。
「この僕、ロバートから長官、聞こえますか!?ワープゾーン能越よりニコチュウに接触しています!!大至急援護を!!」
思ったより厳しい戦いになっていた。
「ワープゾーンを守る戦力が足りていません!!増援求む!!」
エルエーからの通信が入った。
「ご安心ください。全てのワープゾーンは私が完全に管理しています。例え何者であれ、一歩も通しませんよ。...悪いな。」
エルエーが管理しているとはいえど、わざとらしく侵入できるよう放置していた。
「ロバート、やっぱ私たち三人じゃ無理だったんだ。一旦退いてタイセイを建て直してはどうだ。」
「無理だとわかっていて、ダメ元で出動したのが間違いだったようだ。」
「君たち、すまん。」
これ以上守りきるのは無理と判断したロバートは、撤退を余儀なくされた。刺客はそれを見逃すはずもなく、メグミとアレックスを捕らえ、ロバートだけが日本支部へ逃走していった。
その時、エルエーが管理しているワープネットシステム全体は一時的に停止された。
「司令部、こちらエルエー。ワープネットシステムに何が起こっているのですか?」
「悪用防止のため、ワープネットシステム全体を停止させました。FBI長官の命令です。」
「そうですか。それは困りましたね。」
ブラーがE.G.本部に戻ってきた。
「君は、ブラー!?いつの間に本部へと戻って来たのですか?」
「ぜぇぜぇ...ぜぇ......。愛美から聞いた情報によると、テリーに原作者と関わった人間は殺されるらしいです。更に、テリーの秘密や情報、本拠地が掴めました。順番に言いますと、テリーの、ペラペラ...その、ペラペラ...つまり、ペラペラ...テリーの本拠地は、ノウエツです!!」
ブラーは口にしてはならないことをペラペラ喋ったことで、エルエーは一変した。
「この情報を知っている者はあなただけですか?」
「はい、僕だけです!!」
「これでよいです。」
エルエーは褒め称えようと腕を振りかざした...と思いしや、ブラーに向かって強く振り下ろした。
「ちょ!!!ブラーを攻撃してどうするのですか!?ニコチュウみたいな冗談はよしてください、おながいします。う、うわっ!有益な秘密情報を提供したのにどうしてブラーはこうやって殺さればならないのか、さっぱり理解できません!!!」
ブラーは逃げた。しかし、エルエーが彼を生かすはずもなく、彼の退路を断とうと仕掛けていた。
「逃げられるのも計算の内なんだよ。でも、逃げ切れないのさ。」
非常口を封鎖して閉じ込め、侵入者駆除システムを発動させた。
そしてブラーこと近藤ジローラモは前後の壁に挟まれ死亡。その後、ブラーの遺体は燃えるゴミとして処分された。
「我がぎみ。申し訳ありません。E.G.の連中がワープネットシステムを止めやがりました、私の正体もそろそろばれそうです。」
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