Episode 4:食い違う未来
レストランで遭遇してしまったもう一人の未来人と亡命者。彼の未来はミント彩香の未来とは違う、イレギュラーによって未来が変わったという事実に驚きを隠せないミント彩香。
「予期せぬ事態で未来が変わってしまった挙げ句、それによって生じるタイムパラドックスで私はどうなるのか...。」
「...君の未来世界は変わったものになるだろう。これでもう帰れなく...いや、もっとも元の時代に帰れないだろうが。Mr.黒澤J作の片道タイムマシンで来たのだろう?」
「ねえ、質問させて。ミント彩香はいなくならないの?」
「Mr.黒澤Jの仮説によると、未来が変わった状態で過去の自分に出会うと数時間後に消えるらしい。あくまで仮説だ。」
「おーい、長話をするなら、場所変えようや。」
アレグロ雪郎の言うとおり、場所を変えた。
「ここなら思う存分話せるだろう。さあ、あんたの未来の話を。」
「わかった。」
一同はジンの話を聞くことになった。
ジンの未来はイレギュラーの介入によって改変された、ミント彩香とは違う未来。2017年6月14日核戦争勃発前の日本は支配や服従を強いられるほど地獄と化した。立ち上がれるレジスタンスはもういない。そんな地獄を変えようと2008年の世界へ転移するつもりがタイムマシンに細工が施されていて、2010年へ飛ばされてしまった。
「奴はたった一人で日本を滅ぼした。絶望した人が絶えず、争いの種を撒いた結果になった。犯罪が絶えなく増え続けていた。もう何もかもだ!!何をしてでも、奴を止めなければならん。」
「...あんたの気持ちはわかった。だが作戦なしで突撃してどうする?これから、あんたのすべきこと考えろ。」
「確か、君は...雪郎司令官だっけ?」
どうやら2017年以降の未来は同じらしい...?
「あんたの時代に賢一と鈴菜、次郎がいるのか?」
「いるとも...。核戦争前では違うといえど、それ以降なら、どの未来も同じ...か。」
「じゃあ、なぜ核戦争が起きなければならないのか、説明を求む。」
「私の時代によると、2015年くらいに内戦がきっかけかな。」
「俺の時代の場合は...近いうちに内戦が起きる。今もだ。」
イレギュラーの介入で、もうすぐ内戦が起きるらしい。
「どれも内戦内戦って。たかが日本全土の内戦がきっかけでそう簡単に核戦争が勃発するわけないだろ?ロシアに核を落とさない限りにな。」
「それが問題よ!!...ドクターは妻や息子を置いて月へ逃げるだなんて...。」
「...待てよ?しょうもない伯爵は、愚か者を黙らせるために...いや、ただの思い込みか。伯爵はそんな自作自演するような真似はしない男だからな。うん。」
「日本からの攻撃...に見せかけて自らの国をドカーンと?いやいや、ドクターはそんなありえないことは絶対しないし。」
「本題に戻ろう。あんたのすべきことはなんだ?」
「これから起こる内戦を阻止すること。それと、奴を止めること。」
「...俺たちE.G.は、奴を打ち倒す同志を集めている。お互い当たり前のことを考えるのは悪くない。利害はなんとなく一致しているな。よし、奴を倒す同志として迎え入れよう。」
ジンとアイがイレギュラーを打ち倒す戦力として仲間に加わった。
次はアーサーが眠るパワースポット。狙撃手がいると睨んでとのこと。
「レベッカよ、そこまでして狙撃手にこだわるんだ?本当にいるのか?」
「ニオイでわかるもん。去年の夏で親子に出会ったの。オトンの腕前が見たいんで、あるいは雪郎に会わせようかな...なんてね。」
アーサーの墓の前にあの時のオトナが立っていた。
「マイケル...か?俺の祖父が注目している話題のフリーランスというのは。」
「いかにも。僕がマイケルさ。それに姉さん、夏の陣以来だね。」
「あ、あの時の...そんなときに何て言えばいいのか...。ビート覚えてる?そう、君の娘と同い年?の子だよ。」
「いや、僕の娘は13歳だよ。立派なセカンダリースクールの生徒だよ。」
「あれれ?国によって違うかな...ビートはまだ11歳だけどね。」
「それより、あんたはどれにも属していないフリーか?なら話が早い。ともに働こうじゃないか。」
「あいにく、僕は金に困らないんでね。バックアップがいる...とでも言っておこうか。それでも納得いかないならば、他をあたるといい。利益のある話じゃなければ、引き受けることはない。」
「......。E.G.の一員として働く気はないか?利益といってなんだが、ネットの治安、友達や家族を守ることだってできるんだぜ。悪い話じゃないだろ?」
「では、一時的に君たちの手助けになってあげよう。守るべき家族がいるしね。」
「オトンがそのおいしい話に乗った...。」
「そうと決まれば、次の目的地へゴーだ。ロバートのいるイタリアへ。」
マイケルという人物の存在自体にミント彩香とジンは疑問を抱いた。
「...マイケルっていう人、私の時代にはいない。どういうこと?」
「俺の時代にそんな人はいないな。これはどうもおかしい...。マイケル、君の両親は誰なのか教えてくれ。」
「僕の両親は訳ありなんでね。わかりやすく言うと、七面分家の人間かな。」
「七面...?」
七面という一族はマイケルの他に、ハルミのことを指す。
「そういえば、ハルミは七面本家の人だっけ?」
「そうよ。そうだけど。(アネキの義妹、本家の養子である事実はみんなに話せない...。)」
ミント彩香やジンの世界にマイケルの母「七面メイサ」がいても、父親「鵲充弘」がいないということは、後者が別の未来人ということになる。
「あなたの過去を知りたい。特に父親のことを。」
「また同じパターンきた。イタリアへ向かう前にちょうどいい。」
「昔話している場合...ちょいちょい急かしてもしょうがないし、聞かせてもらおう、あんたの父親のことを。」
「君たち、僕のお父さんのことが気になるんだね。では、話すよ。」
一同はマイケルの過去を、父親のことを聞くことになった。
彼は物心ついたときより父親とともに、遭難地点でサバイバル生活をしていた。川、森林、無人島で野生動物を生で食することで、生き延びてきた。父親の出生は、未来へ繋がるミステリーサークルから出てきたらしい。一ヶ月間のサバイバル生活は終わりきや、冬休みにまたその生活が繰り返された。五年間父親の習慣が続くつれに、野生の勘を身に着けた。母親の稽古は少しだけしかやってなかったが、父親とのサバイバル生活はやがて減少していき、母親との稽古に切り替わっていた。
「未だに謎が多い父親だな。ミステリーサークルから出てきたって宇宙人じゃあるまい。別の未来からやってきたというのは本当みたいだ。」
「話はすんだか?そろそろイタリアへいくぞ。」
マイケルの昔話が済み、次の国イタリアへと移動した。
ここはイタリア、トスカーナ州・シエーナ。オレンジルーフスが並べてある街中でさっそくロバートを探すレベッカ達だが。
「Chao!またあったね。」
突然、いきなり、彼にばったり出会った。実は彼とは二年前より交流したらしい。
「二年前のUnleashed以来かな。」
「もう知ってるのか。」
「うん、フェスティバルの後の話で、兄貴と全世界の人々と交流していたんで。」
「ルイザはどうしたかい?あの人は少々ひねくれた性格でして、ミコノス島で何をやらかしてきたか心配だ。...それはそれとして、そろそろ本題に入ろうか。何しに僕のもとへ?」
「協力しにきた。奴を止める手を貸してほしい。」
「あー、例のあの人か。...どうも僕の部隊がいないんでね。イタリアの仲間を集めてくれたら、考えてあげても...いいが。それはそれとして、彩香の横の人と君の傍のおじさんは誰かな?」
「立花ジンだ。こっちは安藤アイ。お初にお目にかかる。」
「鵲マイケル、噂の狙撃手さ。」
「俺たちE.G.は、奴を止めるために戦力になれる仲間を集めてるんだが。なにか情報ないか?」
「そうだね、ないってことはないけど...あ、そういやこの国に亡命した日本人を目撃した、という情報が。それどころか、彩香と同じ未来人がいたような?」
「同じ未来人...?そうか。さぁあんたら、探しにいくぞ。」
そうと決まれば早速行動に出た。住民に聞き込み、目撃情報を得て探し回った。
「さーて、どこにいるのやら。」
身を潜めていた未来人や亡命者を発見した。
「あんた、噂の未来人だろ?それと、日本から逃れてきた亡命者もな。」
「...鋭いねあんた。見つかったからには、とりあえず自己紹介が必要ね。わたしは鈴木モルガン。こっちは亡命者の高橋晃樹。そういうあんたは誰なの?」
「雪郎・コンブリオ。9月で大2に進学するE.G.大学生だ。戦力になれる人材集めの旅をしているんだが。手を貸してくれ。」
「...私は他の未来人のように強くはないし、未来におけるイヤな世の中から逃げてきただけ。うーん...。」
「そういうあんたはどんな未来だったの?」
「2011年頃より内戦が起き、幸いなことに30億人の命を失うほどの大戦が起きなかったものの、日本の治安がいっそ厳しくなっている。」
これは内戦が早まってなお審判の日が起きずに分岐されたもうひとつの未来が窺える。
「それってつまり、日本が勝手に暴れて自滅したということ?じゃあ凌魔の母親はどんな外見や性格になっているのか?」
「黒髪ウェーブがかっていて、絶望病を患っている。」
「...やはりな。私の時間軸はもう変わってしまったというのか。」
一度改変されたものは修正や復元が効かない。未来改変とはそういうものだ。
「なんか引っ掛かる。審判の日が起きない、といったな?確かに未来は変えられるものだ。だが、審判の日のない未来での内戦はありうるだろうか?」
「じゃあ、妻と息子を置いて宇宙へ飛び立つという話は?」
「例え審判の日がなくとも、ドクターは宇宙へ飛...飛び立たず、三人揃ってロシアに暮らしている。」
「本来進むべきだった未来、奴の介入によって内戦が早まった未来、何らかの拍子で分岐された未来、核戦争次第でドクターの運命は左右される...君たち未来人にはそれぞれ違う未来があるのかなって。」
「あんたの事情はわかった。世の中から逃げ続けるだけの未来人は戦力外だ。好きなだけ逃げるがいい。隠れ場はないだがな...。」
「...そう言われたから、はい逃げます、っというわけにはいかない。同行を願いたい。」
「命がけの戦いになるが、それでもついていくか?」
「相手があまりにも恐ろしくて逃げ出してしまう。でも逃げてばかりじゃ、なにも変わらない気が。逃げずについていくのも悪くはない。...わかった。ついていくことにする。」
「協力に感謝する。」
モルガンや晃樹が仲間に加わった後、ロバートに報告した。
「ほぅ...これが例の未来人と亡命者ってか。本当はイタリアの仲間を連れてきてほしかったけど、今はそんな暇はない。僕が持っているチームは虚しく全滅したし。よし、決めた。君たちの手を貸してあげるとしよう。」
「恩に着る。さて、次の目的地はアメリカだ。あんたら、気を引き締めていくぞ。」
アレグロ雪郎とその仲間たちは次の目的地「アメリカ」へと移動した。
「Signore 近藤、何事もなければいいが......。」
その頃、ブラーは日本支部に戻ったが。
「誰もいないのらー。ん?なに、この変な装置。」
ブラーは一度外に出たのだか。そこに待ち構えていたのは、セシルとその一味だった。
「え、あ、そのー。......もしもし、こちらブラー!!聞こえますか!!緊急事態!!エマージェンシー!!Emergenza!!!奴の刺客が攻めてきています!!聞こえますか!!もしもーし!!!」
その後のブラーはどうなったのかは別の話である。
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