Episode 3:世界への切符
問題集を全問正解すると、情報がもらえるというDr.デカボットからの挑戦を受けて立ったブラーは、子供だましの問題を解いていた。
「なんだのらー。簡単すぎるのらー。」
「《では最後の問題です。》」
ミュゼットに似たAIが最後の問題を出していた。誰でも解ける簡単な内容だった。
「《結果発表。100点満点、おめでとう。》」
「よっしゃーのらー!!!らららのらー!!!!!...で、情報は?」
「その情報なら既に掴んどるじゃろう。」
「えぇぇ、そんなぁ!!それじゃあただただ、簡単な問題集を解いただけじゃんらー。」
「この問題集の意味はいずれわかる時が来るじゃろう。用件はそれだけじゃ。お友達を探しに出てもいい。」
ブラーは彼の意味深なメッセージを受けとりながらも、喫茶店を飛び出していった。
引き続き道端を走っている最中、マリア愛美とハーヴを見かけた。
「愛美見つけたのらー!!おーい!!」
二人に近づいた。
「なんで愛美を知ってるだべ?」
「知り合いから聞いたのらー。」
「あら、兄さんの知り合い?」
「あ、そうそう。用件はそれなのらー。ハルミの言う、『一人で深追いしてはならない。』その理由を教えてらー!!」
「わかった。深追いしてはならないという理由を教えてあげる。いい?とても恐ろしい人にあたし達を含めた原作者と関わった人間は殺される。」
「...やはり、とても恐ろしい人はテリーの事なのらー。」
ブラーはそう考えた途端に、突然笑いだした。
「......はっはっははははっははははははっはっはっHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!たった今気づいた、あの問題集の解答欄はテリーの情報のことだったのらー。分かったような気がするのらー。よし、ツイてるのらー!!」
彼の言葉を耳にしたマリア愛美は。
「...今、何て言ったの?」
「テリーのこと言ってるのらー。」
険しく、荒らげた声で怒鳴りついた。
「ふざけないでっ!!恐ろしい人の名前を口にしてはいけないのよ!!あなた、何をしているのかわかっているの!?」
「決まってるのらー。エルエーにテリーの記録を差し出せば、昇進はもちろん、真の平和が約束されるのらー。悪いか?」
「......!!」
「そういうことららら、君に何を言われようらブラーの自由なのらー。」
おしゃべりしている間に、例のあの人に仕えるシモベを名乗る三人が現れた。
「やっべぇ...ブラーは逃げるのらー!!エルエーの元へ戻るのらー!!」
ブラーはマリア愛美とハーヴを置いてトンズラしていった。
「あなたは...追手なの?でも、恐ろしい人はあなたのような輩を率いるような人じゃない...。そうでしょう?」
「俺はセシル。ご主人様に仕えるシモベ。」
「いや~、これはこれはハーヴ。実に勇敢でございますよ~。」
「その先いいものあるもん、この嘘ホント。」
狡猾さを持つリーダー格「セシル」とその手下こと、ごますり「シルビア」とウソつき「アリサ」が、彼女たちの前に立ちはだかっていたのだ。
「おまえ、愛美に手を出したらぶっとばすだべ!!」
「あたしたちを囲んでどうする気?」
「決まっているじゃない。お前たちを生け捕りするのだよ。」
シルビアとアリサは二人を押さえつけた。
「きゃっ!!離しなさいよ変態!!」
「離せ!!離すべ!!」
「ふふふふ。さて、お楽しみはこれからだ。ご主人様の城へと転送させる。」
「転送させるって...E.G.とドクターが作ったものじゃないとできないのに、どうしてそこまで言いきれるの?」
「E.G.に頼まないと、そんなことできないだべ。デタラメはやめるだべ。」
セシルはビデオチャットを通して、証人を召喚した。
「誰がE.G.なしでは実現不可能と言った?」
「だからおまえのような知らない人にはできないって言ってるだべ。」
「では表の顔なら実現できるといったら、はい、その通りです。」
その証人とはエルエーのことであった。
「...そんな。エルエーが手引きしたってことは...。」
「無断で不届き者との取引なんて...立派な背信行為じゃない!!」
文字通り、二人ともエルエーのウラの顔にショックを受けていた。
「さてと、お二人を送るとするか。シルビア、アリサ、いくぞ。」
セシルは二人をイレギュラー城に転送する手続きをした。エルエーも届けた二人を受け取る準備ができていた。
「では、こちら側で届くのを待っていますよ。我がぎみのためにな。」
不気味なウラの顔に変化して待つエルエー...いや、コチウニ。セシルたちは二人を押さえつけたままイレギュラー城に転送した。
「きゃああああああああああああ!!!!!」
支部で待機しているレベッカは胸騒ぎがした。
「なんか落ち着かないな...。何事もなければいいが...。」
アレグロ雪郎たちのパトロールはもうすぐ終わる頃であった。
「パトロールは終わりね。さあ支部へ戻りましょう!!」
「そうだな、じゃあ戻るとするか。」
パトロールを終えた三人は支部へ戻ることになった。
「ん???」
「誰かがいる。一体何があったのか?」
そこにはヒメとロドゆいがいた。
「あの...実は......。」
「リサななが拉致された。」
「なんとかならない?」
「しゃあない。一緒に行動しよう。」
「あなたは誰?まだ名前聞いてない。」
「あたしはヒメ。...あなただけは初対面って感じ。」
「僕は、ロドゆい。去年の海水浴以来だね雪郎くん。」
「私はハルミ。初めまして。」
「私はミュゼット。同じく初対面。」
「ジャーナリストにはもう俺を存じているだろう、だが中には初めて見る者がいるだろう改めて自己紹介をする。俺はアレグロ雪郎。それより俺の妹こと愛美はどうした?」
「ごめんなさい。あれから散らばって、一度も会っていない。」
「まあ心配することはない。ブラーが探してくれるそうだ。」
「そうなんだ。」
「そんなことより、さっさと合流したらどう?」
「うん、わかった。一緒に行こうな。」
二人と合流し、引き続き支部へと向かった。
「ところで雪郎くん。ハルミのことはわかるけど、ミュゼットは雪郎くんの知り合い...なの?」
「いや、日本から逃れてきた亡命者だ。聞きたいか?」
「そんなに私を知りたいの?じゃあ話すからよく聞いて。」
ロドゆいはミュゼットの話を聞くことになった。
ミュゼットこと「財前未夢」はDr.デカボットに拾われたスラム街の少女であり、フォルテ中学三年生。学校が違うといえど、「大原雅史」をはじめとする樋串武学園の生徒「杉本杏璃」とは知人関係にあたる。雅史とともに都市で起こる様々な事件を解決してきたが、彼がアメリカ・ニューヨーク州に亡命すると同時にミュゼットもアレグロ雪郎のいるカリフォルニア州に逃れてきた。事情を話したのちに保護され、情報操作員として共に活動することになった。
「そうなんだ。でもどうしてドクターじゃなくて雪郎くんなの?」
「それは......ドクターの活動拠点は日本じゃないから。仮に彼の下にいても何の利益もないし。」
「ああ、その通りだ。しょうもない伯爵のことだ。あまりおすすめできないだがな。」
「そっか。納得した。...それよりレベッカ後輩が待ってるかも。」
「おいおい、まだ焦ってるのか。ブラーや支部の様子は、情報長官であるエルエーに聞いてみるんだな。」
「うん。」
「じゃあ、通信回路を繋ぐか?いつでも準備できるぜ。」
本部の通信回路を繋ぎ、ビデオチャットを開いた。
「エルエーよ、俺だ。あっちの様子はどうだ?」
「はい、特に挙動不審はありません。問題ナッシングです。...そうそう、レベッカなら支部にいますよ。他の二人もね。...それより、渡航の準備はもうできています。早急に支部へ戻りましょうよ。」
「...そうだな。とっとと支部へ戻り、準備せねばな。」
エルエーの言うとおり、一同は急いで支部へと戻った。
「さて、8名揃ったな。」
「愛美の兄のお出ましか。」
「私の忘れ物を取りに行かないと。あれがなきゃ、どうも調子が出ないし。」
「忘れ物か?じゃあ、私が取ってきてあげようか?去年に一度だけE.G.本部に出入りしたことがあるし。エルエーにお願いするという手もあるが、やっぱ私が。」
「悪いね白女。」
「自己紹介はまだだったな。私はミント彩香。白鳥彩香っていうんだ。」
「私はミコ、異世界の半獣人みゃう。」
「私のことはわかるよね?レベッカだよ。君たちわかったかね?」
去年に一度顔を合わせていたアレグロ雪郎はもちろん、ハルミやミュゼットも2008年のフェスティバルで見たという声もあった。
「さて、本部にいる訓練生を引っ張りたいところだが、バサカは職務質問の途中で逃げ出すわ、ガジュやデイカは恐怖のあまり辞退するわ、どうしたものか。俺がしっかりしておけば、こんなことにはならなかっただろうか...。」
「じゃあ、僕達にも手伝わせてよ。」
「そうよ。あたし達に出来ることはまだあるから。」
「頼もしい手伝いさんが出陣してくれるとは感謝する。ただし、奴に消されないようにな。」
「よし、そうこなくちゃ!!」
「よし、みんな!!仲間を集めるために海外へ出発だ!!」
「というわけだ。エルエー、まずはイギリスで仲間を集めるんで、手続きを頼む。」
「承知しました。」レベッカ達は世界各地の仲間を集めるためにワープゾーンを
England is a country that is part of the United Kingdom.
ここはイングランド。ユナイテッドキングダムの一部である。仲間を集める前にアレグロ雪郎は忠告した。
「E.G.に所属していないあんたらの行動を見張るお目付け役がいることを忘れてはならん。いいな?」
お目付け役の件を承知した。この国の探索をしつつも、イングランドに知り合いなんかいるだろうか?と疑うほどであった。去年にイングランド出身の人物に接触した経緯のあるレベッカは、心当たりがあるのであった。
「この国に狙撃手がいるとしたら...?」
「どうするもなにも、...検討が必要だな。俺の知り合いはブラー以外考えられんからな。とりあえず、近くのレストランで話そうや。」
とりあえず、付近のレストランに寄った。
「ようこそ、ワタシのレストランへ。」
「とりあえず、カレー頼む。さあ俺の奢りだ。ゆっくり話そうか。」
店主は料理を作っている間に、一同は話し合っていた。
「この国に知り合いなんているのかな...。」
「知らん。せめてアーサーほどの人なら。」
「Król Arturのこと?といっても、しょせんおとぎ話の人物でしょうが。本当にいると思うの?」
「あくまで可能性って話だ。実在するかは怪しいが。」
「この国の事じゃあ、あの狙撃手以外考えられんな。なにか面白い話ない?ないなら、しりとりやろうよ。しりとり。」
一同は適当にしりとりでも遊んでいたが。
「クビの次は、ビ...ビィ...?あー、忘れてた。バラバラになって三ヶ月経ったけど、ニューヨーク州に逃がしたビィはどうしているかな...?」
「弟分のことか、あいつならE.G.本部が保護したそうだ。」
「本部ってメリーランド州でしょ?かなりの距離で、どう保護されたかは想像つかない。でも雪郎くんて、カリフォルニア州出身のはず。どうやって通学するの?」
「...俺の祖父はメリーランド州出身だからな。だが、E.G.附属大学とE.G.本部とは別だ。俺の通っている大学は、あくまで支部のひとつに過ぎない。とはいえ、FBI志願の俺には関係ないことだがな。FBI長官とE.G.最高責任者の両立は非現実的だ、祖父は創設者に過ぎん。そこでだ、俺の叔父にしておふくろの...」
「あー、話が長くなるからもういい。」
店主が料理を運んできたそうだ。
「変わったカレーだな。......ヨーグルトのような食感。」
カレーを注文したのはアレグロ雪郎だけ。
「私たちはこんなところで食事をしている場合か?仲間は例の狙撃手しか思い付かないし、どうするのかな。」
「まあ、そのうちなんとかなるさ。...それにライスではなく、なぜライ麦パンなんだろうか。」
そう話しているうちに、客が来た。日本から逃れてきた日本人と未来からやってきた未来人だった。アレグロ雪郎は睨んでいた。
「2011年より奴を野放ししたことで引き起こされた内戦を止めるための作戦を考えよう。」
ミント彩香の未来とは違うらしい。
「おかしい...。2015年に起きるはずの出来事が、4年早くなってる。どういうこと!?ねぇ!!」
「見かけない顔だな、君は。」
「私はミント彩香。それより私の問いに答えて。凌魔の母親は暗い表情の女であってるのか?」「...Dr.デカボットの妻のことか?あいつは暗い表情というより絶望に満ちた顔してたな。ウェーブがかった黒髪に。」
「は!?違う...。私の時代では金髪って聞いてるけど、まさか...。未来が変わった...なんてことはないのか?」
「...話はそれだけか。我々は奴を倒さねばならない。絶望の未来を変えるために。」
「待てよあんた。何者だ?」
「俺か?俺は未来からやってきた立花ジンだ。この人は俺の元へ逃れてきた安藤アイ。」
もう一人の未来人と遭遇したレベッカ達、どうなるだろうか。
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