Episode 2:ダブルエージェント
情報部の長官エルエーからの通信が入り、初めて顔を合わせたレベッカは、彼に用件を聞いていた。
「何の用件で通信しているのか?目的は何なのか?」
「あ、はい。原作者から聞きました。世界各地の仲間を集めに行くでしょう?手続きは既に済ませております。そろそろ業者が来るはずです。」
エルエーが業者をどうのこうの言ってるうちに、業者がやって来た。お届け物のようだが、詳細はエルエーが説明してくれるらしい。
「おやまぁ、やっと届けましたか。では私が説明しましょう。先ほど届けた物とは、Dr.デカボットが異世界の技術を駆使して作った転送装置『ワープゾーン』。飛行機も列車も船も不要で潜るだけでワンタッチ渡航可能な代物です。簡単でしょう?ここのみならず、世界各地に配置されておりますので、いつでも行き来可能です。パスポートが必要ですけどね。」
「じゃあ、パスポートがなきゃ話にならないじゃん。そういや兄貴って、二ヶ月もかかると言っておきながら、ちゃんと用意してるのかな。」
「そんなこともあろうかと、申請書を用意しておきました。はい、すべてDr.デカボットがやってくれます。手早い取得だって可能です。」
エルエーのおいしい対応にレベッカは乗った。
「はい、そうと決まれば、申請書にお名前と住所、サインを記入してください。その後は全てDr.デカボットに任せましょう。」
レベッカ達はパスポート申請書に自分の名前と住所、サインを記入した。
「ひとついい?私のような未来人は問題ないか?」
「心配には及びません。現代人と見据え、発行可能ですのでご安心を。」
「異世界人でもみゃう?」
「餅の論です。」
未来人だろうが異世界人だろうが問題なく取得可能なようだ。三人分の申請書を書き終えて、手続き担当者ことDr.デカボットに提出した。
「ご提出ありがとうございます。褒美といってもですが、私の話を聞かせてあげます。」
「これも同じパターン!?...まぁ、最近はこのパターン来ることはあまりないし、是非聞かせてほしいな。」
レベッカ達はエルエーの話を聞くことになった。去年の出来事であった。
2009年4月頃、日本社会および日本インターネットの治安を維持するためにエネルジコは、国際治安維持組織「E.G.(Energico Guardian)、エネルジコ・ガーディアン」を設立した。構想自体は2007年からなので、ごく一部の人には知っているだろうか。アレグロ雪郎は元々FBI志願または初恋の少女との約束のためか、9月よりE.G.4年制大学に入学したらしい。合格するための勉強の一環?として、4月に行われたエルエー達の教育係を担うことになっていた。あの日のエルエーは訓練生の一人でもあった。
「全員集合!!俺はあんたらの教育を任されたアレグロ雪郎だ。先生と呼んでも構わないぜ。わかったら返事しろ!!」
訓練生一同は返事した。
「さて、あんたらはE.G.の何に志願したいのか聞かせろ!!」
アレグロ雪郎の質問にエルエーはそう答えた。
「私はE.G.の情報部に志願します。」
他の訓練生は隊長、警備員、コマンダー、整備士になりたいという望みがあった。次は訓練生にアレグロ雪郎がコードネームまたはあだ名をつけることになった。大半が名無しだったためか、名前がないと不便であるからだ。
「次はあんたらにコードネームをつける。名前を持たないやつもいるだろうだし、俺がつけてやるから、まずは俺にあんたらの個性を見せてみろ。」
エルエーは手足が伸びる個性を見せた。
「ふむ、悪くないな。...よし、決めた。今日からあんたの名は『エルエー(Longarm L.A.)』だ。」
その後、これ硬いアーマーな女性「アマデ(Ironlady)」、狂戦士のごとく振る舞う少年「バサカ(Berserker Boy)」、未熟者な少女「ガジュ(Girjunior)」、そして田舎から来たデカい図体の女性「デイカ(Bulklady)」、全員分の名前をつけ終わった後、唐突に全員腕立て伏せ20回させられた。
「基礎体力が大事だ。そうでもしなきゃ、現場で足元をすくわれることになる。しっかりと鍛えとけよな。」
こうして新生活が始まってから4ヶ月後。そう、9月3日頃だった。ガジュの不祥事により、その連帯責任として腕立て伏せ100回やらされてしまう。
「ひでぇとばっちりだっぺ。」
バサカの言動に対してエルエーは注意した。
「いじめはダメですよ、バサカ。」
「何もわかってないな、未熟者は。じゃあ知ってるか?のび太の先生のアレ。あれだよ。ガジュ、廊下に立っとれ!!」
ガジュはバケツを持たされたうえで、廊下に立たせていた。昼休みに彼の趣味であるネットサーフィンをして、目についたのはロデオン百科事典であった。イレギュラーに編集された原作者の記事を利用して、日常的に悪口吐きまくるバサカに罪を着せるという考えがひらめいたのだ。未だに廊下に立たされていたガジュは教室の物音に反応し、ドアを開けた。
「...!!」
そこには誰もいなかったのだが、ラップトップは開いたまま。内容を確認したところ、編集されていた原作者の記事とイレギュラーのマイページ画面(300496X)、訓練生の中に心のない人間がいる確証が得られたと同時に、怪しげな人影を目撃した。身勝手な記事編集を関係者が捨てておかないぞとガジュはすぐに乗り出してきた。
「不届き者!!姿を見せろ!!」
廊下には誰もいなかった。だがガジュは入れ違うように出た者を目撃する。
「バサカ!?」
ちょうどトイレから出たばかりのバサカだった。
翌日、ガジュはエルエーに協力を求めていた。
「ねぇ、エルエー。話があるんだけど。」
「私忙しいので、他を当たってくれます?」
「情報部に入りたいんでしょ?私達の中に原作者の記事を編集した不届き者がいる、といったらどうするの?」
エルエーはそう来ると思った顔をして、言葉を聞き入れた。
「...不届き者は誰だか、わかりますかね?」
「ミンナニハナイショダヨ。バサカが勝手に人の記事を編集したんだよ。」
「...証拠はありますかね?」
「わからない。先生に言うべき?」
「いや、先生よりも自力で解決したほうが、名誉挽回できるほか、あなたのやらかした不祥事を水に流してくれます。全てが解決できれば、あなたは優秀な人材になれますよ。では、健闘を祈ります。」
その後、ガジュはバサカを逮捕するために、ありとあらゆる手を使ってきたのだが失敗に終わった。
「腕立て伏せ100回!!上体起こし100回!!スクワット100回!!ランニング10Km!!おしおきだぁ!!!こんやろぉ!!!!」
バサカはガジュの連帯責任に振り回されてしまった腹いせに。
「いつもはありがとうっぺ。おかげさまで全員が罰を喰らったっぺ。」
更衣室ロッカーにガジュを閉じ込めた。
「誰かぁ!!開けて!!ねえ!!!ねえってば!!!!」
ところがエルエーが助けに来た。
「とんだ災難でしたね。そうしている間に、不届き者の誹謗中傷がエスカレートしていきます。ほら、これが証拠です。」
ふと気づけば、2010年1月15日まで経っていた。
2月14日、バレンタインの日にエルエーはガジュに花束を渡すつもりだった。しかし、バサカがガジュにビックリ箱入りの花束を渡す形で妨害されてしまった。
「へへっ、ただのビックリ箱だっぺ。ドジ。」
性懲りもなく彼女をからかうバサカに対する怒りが頂上に達したエルエーは、本気で自らの手でバサカ排除を試みようと考えた。
そして3月14日、今日は持ち物検査の日だ。エルエーは本格的にバサカ排除を実行した。
「ガジュ、今日は打ち抜きで持ち物検査があるそうです。おそらく、今日が不届き者の悪行を暴く最後のチャンスでしょう。善は急げってことです。私がバサカを足止めします。ガジュはそっと彼のパスワードを探ってください。」
エルエーはバサカを転ばし、ガジュに彼のパスワードを調べさせた。
「大丈夫?バサカ。」
「余計なお世話っぺ。このあほんだら。」
バサカのポケットからパスワードを盗むことに成功した。バサカのパソコンを開き、目にしたのは原作者に対する誹謗中傷を書き込まれていた掲示板、荒らされていた記事のコメント欄、イレギュラーのマイページ(300496X)、どれも非常に悪質な行為てんこ盛りな中身だった。
「先生!!見て!!いいから見てよ!!」
「なんだなんだ!?...。」
この画面を見たアレグロ雪郎は目の色を変えて、隅から隅まで確認した。
「......。」
そしてバサカは連行された。
「な、なんでバサカが!?みんな、聞いてっぺぇ!!!!!」
「悪いなバサカ。奴のこと色々聞きたいことがあるんでね。」
「ガジュ...覚えてろっぺ。」
ガジュしか見てないバサカは憎悪を抱き、去っていった。
「ガジュ、奴のことを俺に知らせた。実にいい働きだったぜ。」
「よかったですねガジュ。これであなたは晴れて優等生になれますよ。」
「...エルエーがそう言ってるとこ悪いな、たった今状況が変わった。見ての通り、今の日本は大変なことになっている。そうやって教育している暇はない。おかげで、あんたらのエリート街道は絶たれた。自分の身を守ることを優先しろ。それとも命がけで俺とエリート街道を歩むか。」
ガジュとデイカは恐怖のあまり、エリート街道を辞退する一方、アマデとエルエーは命がけでアレグロ雪郎についていくことになった。回想終わり。
「いかがなされましたか?」
「お気の毒だったな。(彼は何も悪いことしてないのに...。)」
情報部員からの報告が来た。どうやらバサカは、脱走したもよう。
「どうやらバサカは鑑別所から脱走したようです。」
「取り調べや裁判が怖くなったから、といいたいんだろう?弁護士は確か、雪郎の従姉だったような?で、どうするの?野放しにしておくの?取っ捕まえるの?」
「捕まえるに決まってます。バサカは必ず私が見つけ出し、拘束します。......彼は実は不届き者ではありませんがね。」
その頃、脱走したバサカはガジュに対する憎悪を抱いていた。
「ガジュはどこだっぺ?バサカ、必ずガジュに仕返しするんだっぺ!!俺っちの人生をメチャメチャにしてくれた恨み、思い知るがいいんだっぺ!!!!!!!!」
通信を切ったエルエーは、イレギュラーの活動を閲覧すると同時に、エルエーというオモテの顔を解き、別の組織に状況を報告していた。エルエーの正体は、ダブルエージェント「コチウニ」だった。
ブラーはマリア愛美を探し続けていた。
「愛美を必ず見つけ出すのらー!!らららのらー!!」
ひたすら走り続けるブラーの前にDr.デカボットが現れた。
「ここを通らせて!!急いでるのらー!!」
「生憎だが、それは無理な話じゃ。危険にさらされると面倒じゃけぇ、ここは通さん。...代わりといってなんじゃが、わしのわがままに付き合え。」
「よくわからないけど、つきあってやるのらー!!」
ブラーはDr.デカボットのわがままにつきあうことにした。とりあえず喫茶店へ寄り、彼のどんなわがままが待ち受けているのか。
「今じゃ忌々しい女のお友達は危険にさらされとる。やみくもに接近しちゃならん。そこでじゃ、取引。わしの掲示する問題集を全問正解できたら、お主が知りたがっている例のあの人の個人情報を全て教えちゃるけぇ。」
証拠を掴むためなら、身命も惜しまない。おぞましい挑戦を受けて立つブラーであった。
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