The End of Story

Episode 1:絶望の序章

 これは、脅威に屈されながらも、打開策を探し続けるレベッカの物語。


 西暦2010年。2009年にあったニコチュウとの戦いの最中に生まれ地を離れ、レベッカ達を監視し、原作者と関わった人間を全て始末するイレギュラーの存在が生まれた。レベッカ達のみならず、それを擁護するものまで魔の手を伸ばそうとしていた。そう......人は彼を「厄災ニューニコチュウ」と呼んだ。


 祖父エネルジコの指令を受けたアレグロ雪郎は、イタリアから引き抜いたハルミや逃走してきたミュゼットとともに日本へ赴き、イレギュラーの悪行の調査にあたったのだが...。

「はぁはぁ...無理......。追われる。」

「急がなきゃダメよ!!あ......、なんとしても更なる証拠を探さないと。」

「今のところ掴めたのは、例の悪行の証拠だけだ。」

「でも、これだけじゃ証拠が足りない。くっ、あの依頼人に頼まれ......。」

「あの依頼人って誰なの?あの女?」

「ミュゼットが知ってるだろうと思うけど、あの原作者を名乗る人よ。」

「そんなことより早くここを離れよう!!」

手にした情報を共有するために、エネルジコが設立した組織「E.G.日本支部」へ向かった。


 イタリアからやってきたアレグロ雪郎の知り合い「近藤ジローラモ(通称:ブラー)」が日本支部にいるらしいのだが、長く待っていたのかしびれを切らしていた。

「うー、遅い遅い!!何時間待てばいいのか、何時間経てば気が済むのか、さっぱり!!......ショボーン。」

待っている間に、雪郎達がちょうどこの時間で支部に到着した。

「戻ってきた!!例の証拠はどうしたのかいかい????」

しかし、生半可な証拠しか掴めなかった。

「ごめんなさい、これしか掴めなかった。」

「えーーーーー!!!どうして!!何故これしか掴めなかったんだ????????」

「しょうがないよ。ドタバタした挙げ句に、これっぽちだよ。」

「それどころか、裏社会に詳しい協力者でもあるアイス早苗からの連絡が途絶えたままだ。」

「じゃあ、どうするんだよぉぉ!!!!!証拠がなければ常習犯は止められない!!!!だったら、僕一人で行くのらー!!」

「それはダメ!!」

「どうして???????何かいけない事???」

「詳しいことは俺の妹に聞くといい。」

「君の妹って誰の事らー????」

「マリア愛美だ。身をもって経験した妹なら知ってるはずだ。」

「愛美さんか??????????わかった、すぐに聞いてくる来る!!!!」

ブラーはマリア愛美のもとへ向かうために支部から飛び出していった。

「相変わらず足が速いな。あいつは。」

今年の事件で散らばった仲間を探しにいくブラーであった。

「愛美を探すのらー!!探して、探し出して、必ず見つける!!!!!!!!!」


 今年、いや去年11月より更に激化した事件によってレベッカと仲間達は各地に散らばっていた。原作者は雲隠れに、仲間達は音信不通、残った三人レベッカとアンジー楓とモグは散らばった仲間達を探し続けていた。原作者を陥れた元凶に対する憤りを感じながら。

「ちくしょう、俺達の仲間達はバラバラに散っちまったぜ。」

「これからはどうするの?」

「まぁ、ゲームのように冒険しよう。ただし、ネットを利用した仮想世界はブッソウだから装置を使って潜り込めそうにないけど...。ネットに頼らずでいこうよ。」

「イエッサー肯定だぜ。ドクターが作ったあのやばいもんよりマシだ。それに俺の姉貴が助けてくれるってうまい話もあるぜ。頼もしいだろ?」

「さすがはモグ、頼もしいな。...それにあの奴、私の兄貴を陥れた元凶は許さない...絶対に!!...ちょっとばかりか怒りを感じるんで。」

三人ならネットに頼らずとも、仲間を探せると信じて続行していった。ところが足が速い男ことブラーがやってきた。

「そこの姉さん、愛美という雪郎の妹を知らないらー???」

「...なんだよ君は。」

見知らぬ男に声かけられたレベッカであったが。

「雪郎て...君は何者よ?」

「僕か??僕の名前は近藤ジローラモ、ブラーと呼ばれてるのらー!!!雪郎のことをご存じらー??」

「知ってるもなにも、愛美の兄さんのことだろう。愛美の居所はわからない。他をあたってよ。」

「...レベッカ、お気の毒らー。」

「私って有名か...。何がお気の毒だよ?」

「例のあの人にやられて何人かの仲間がバラバラに散った挙げ句、そうやって彷徨っていたように見えるのらー。」

「...何がいいたい?」

喧嘩売ってんのかような顔をしているレベッカであったが。

「ちょ、落ち着けレベッカ。こいつは悪いヤツじゃないことは確かだ。その証拠に、こいつの胸にE.G.エンブレムのバッヂついてんだろ?愛美のジジイが設立した組織だってよ。」

E.G.とは、アメリカ以外の国でも活動できるようにFBI長官「エネルジコ・コンブリオ」が設立した組織のことである。2009年より試験運転開始。日本限定だが。

「知ってるんらー、E.G.。もしよかったら、案内してあげるのらー。」

「...初めて聞く組織か、興味深いな。じゃあ案内して。」

「それじゃあ、一旦支部に戻ってみるのらー。」

「ちょっと待って。愛美を探すんじゃなかったっけ?」

「後でやるのらー。先に三人を支部まで案内するのらー。」

E.G.日本支部へ案内してくれた。既に留守だった。

「ラッキー、誰もいないのらー。ここでくつろいでもいいのらー。」

「気が利くな。...雪郎とはどういう関係か、君はどんな人か知りたい。」

「僕は、E.G.特務調査員なのらー。雪郎はE.G.副官という役職を担っているのらー!!...え、そうじゃなくてって?彼は僕とは昔からの知り合いなのらー。知らなかった?」

「君の話、ついていけねー...。」

「要するに、雪郎とは繋がっているっということだな。連絡先教えろ。去年の海水浴で聞きそびれた。」

「それを教えてどうするらー?ネットを利用した連絡手段の危険性を承知の上で言ってるらー?」

「ああ、そんなこと百の承知だ。教えろ。」

「どうなっても知らないらー。けど、レベッカの顔に免じて教えてあげるのらー。」

ブラーはモグやアンジー楓にアレグロ雪郎の連絡先を教えた。危険を顧みず。

「確かに受け取った。では、連絡する。」

「やばいらー、課せられた仕事が残っていたのらー。僕はこれで。ここにいた方が安全なのらー!!」

ブラーはマリア愛美を探す役目が残ってるようで支部から飛び出ていった。レベッカ達は支部にいても退屈、くつろいでもつまらないだろうし、外へ出て散歩ぐらいしようと考えていた。

「君たち、ここにいてもつまらないだろう。散歩しようよ。」

「合点承知。」

「ああ、わかった。たまには息抜きが必要だな。」

レベッカの言うとおり、外へ出て500mくらいの距離で散歩した。


 モグはアレグロ雪郎に連絡しようと携帯電話でメールを打ちこんでいた。送信しても問題ないと軽く考えて押した。

「あの奴では国外絡みに手出しはできない、ということか。なら問題ないな。」

モグは軽い気持ちで姉貴ことメグミにビデオチャットを持ちかけようと持参のラップトップで会話した。

「姉貴、状況はどうですかね?」

「日本へ向かっているところだ。...災難だったな。」

「聞いてくださいよ。奴のせいでみんなバラバラになったんですよ。でも、姉貴が来ていただけてくれると思うと心強いです。」

「到着するには数日...いや、数ヵ月かかる。それまでにブルース、あんたの役目を全うしろ。」


 一方レベッカは退屈な散歩に飽きたので、支部に戻ろうとしたのだが、同行していたはずのモグがいなかった。

「モグ...どこで道草食べてるのやら。そういや、連絡するといってネット利用可能領域にいるのかな。」

ネット利用可能領域へ移動したのだが、モグの姿が見当たらなかった。

「じ...冗談だよね......?」

残っていたのは、壊されていたラップトップだった。

「なんか胸騒ぎがするな......。」

恐怖に駆られるレベッカなのだが。

「レベッカ、既につけられているよ。僕が足止めする。支部まで走って!!」

「な...何を言ってる、君もだろう!?一緒に逃げよう!!」

「仲間を思うとはレベッカらしい...。でも、一人で逃げなきゃならないときもある。さぁ、いったいった!!」

レベッカを遠ざけるためにアンジー楓は煙幕で撹乱した。

「許せ...アンジー楓。」

レベッカはそのまま支部まで走り、アンジー楓はそのまま見えない敵に捕らわれてしまった。自分だけが助かり、それと引き換えに仲間を失ってしまったことを嘆くレベッカであった。


 去年11月の件も今の件も奴の行いを理解しがたく、荒れてしまいそうな気持ちになるくらい憤慨していた。だが、実は原作者との連絡が取れるらしく、もっとも奴がまだ大学生および21歳であることから他学校に手出しできない、ネットの出来事は教師や生徒に話していないので絶対安全といえる。原作者に近況を報告した。

「兄貴、私は何もできなかったの。...何か考えはあるのね。」

「ああ、策はある。考えてるとこだ。日本中のネット利用者じゃ当てにならない。ならばレベッカの仲間達で奴に立ち向かえばいい、とのことだ。仲間っていうのは、いままで集めてきた仲間だけじゃなく、レベッカを支持する人まで仲間ってもんだ。海外に亡命する支持者を見かけてね、世界中の仲間を集めてほしい、かな。今準備をしていている。渡航はDr.デカボットに協力してくれるみたいだから。だが渡航手続きをするには二ヶ月もかかる。それまでに待っててほしい。」

現在は4月なので、海外渡航はまだ先の話であった。レベッカは支部でずっと待つことにした。学校はいつも通り、ちゃんと通っている。


 一ヶ月後、原作者はダメ元でGW祭りを通してSOSを送ったのだが思った通り効果はなかった。レベッカはもがき苦しむ原作者を見て嘆き、彼に何もしてあげられないのだが。

「弱音吐いちゃだめ。きっと兄貴のことなんだ。転機が訪れるまで私も頑張らないとな。」

希望はまだ失っていない、どんなときでも決してあきらめてはならないとレベッカは前向きに考えることにした。


 その頃ミント彩香とミコの場合は支部のすぐそばで歩いていた。

「みんなとはぐれて二ヶ月...。さて、どうしようか。」

「わかってるみゃう?奴は桃太郎Vと関わった人を全て消すって。どんなに危険な人なのみゃう。」

「ああ、わかってる。わかってるけど、出くわしてしまったが最後、みんなやられてしまうからな。そうそう、ブラーとかいうおじさんの知り合いが支部へ移動した方が身のためって告げられたんで、その支部とやらはどこのどれだろうかね......。」

「ひょっとして、この白い建物のことみゃう?」

「言われてみれば、ほんとだ。E.G.エンブレムが目印だし、入ってみよう。」

ミント彩香は早速、支部のインターホンを押してみた。

「ミント彩香とミコじゃないか。無事だったのね。」

「その声は...レベッカじゃん!!他の仲間はいるのか?」

「私一人だよ。...とりあえず、中に入ってよ。」

二人は支部に入った。中には事務所のような雰囲気であった。なにせエネルジコが設立した組織だからだ。

「二ヶ月の間は音信不通だったが今は違う。レベッカ、私達に必要不可欠なあんただからこそだ。聞いてるよ、世界中の仲間達を集めるんだろ?私でよければ手伝ってあげよう。」

「これはありがたい。頼りになる。」

頼れる仲間が再びレベッカのもとで忠義を尽くすようになった。


 ところが、情報部からの通信が入った。

「おや、皆さんお揃いで。」

「誰だよ君は?」

「知らない?この人は情報長官になったばかりの。」

「はい。今年度、長官を務めさせていただくことになりました、エルエーです。以後お見知りおきを。」

彼の名は「エルエー」。今年より情報部のリーダーになったばかりのヒューマノイドでもある。とある功績により瞬く間に情報長官にまで上り詰めたという。その大出世には裏があり、裏で動いていることも。現時点では彼の素性を知るものはいない。

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