Episode 3:夏の陣

 8月16日夕方、レベッカ達は祭りへ遊びに来た。いろんな屋台が並べていて、人が多くて賑やかであった。


 今回の原作者は前回と違い、この祭りに来ないらしい。そのためか、前回のように振り回されずに済んだ。夏祭りを楽しむ今回のメンバーは、モチのロン主役のレベッカと、いつもの愉快な仲間達ことモグとアンジー楓、預けられたマリア愛美に佐藤姉弟。6人内レベッカだけは浴衣を着用していた。

「兄貴は忙しいそうなので、私たちだけで楽しもう。なにしようかな?」

「レベッカ姉ちゃん、金魚すくいがしたいよ。」

「金魚すくい...か。私、こういう無理ゲーが少し苦手なんでね。とはいえ、それも子供のためだ。つきあってあげる。」

「よぉっし!!姉ちゃん、いいでしょ?」

「ビィがそういうなら僕も。」

「よし、そうと決まれば最初のお楽しみは金魚すくいでいこう。」

「じゃあ俺は食い物を買ってくるぜ。何がいい?」

「焼きそばにたこ焼き、かき氷、チョコバナナ、りんご飴もよろしく。」

「注文が多いな、おい。レベッカが最優先ってことで異議はないか?」

「いやいや、僕も手伝うよ。みんなの分を買ってくるから安心して。」

「あたしも手伝うよ。3人なら苦労せずに済むんだから。」


 モグとアンジー楓とマリア愛美3人は食べ物を買いに行き、残りの3人は金魚すくいに挑戦した。姉弟はまあまあの数が獲れたとして、レベッカだけは1匹も獲れずだった。

「案の定、破けて結局獲れなかった。さて次はなにする?」

「金魚すくいの他といえば、輪投げかな。それと、射的にヨーヨー釣り、エトセトラ。まあ色々あるし。」

「姉ちゃん、次ヨーヨーやりたい。」

「ヨーヨー釣りか。次こそ負けないよ。」


 次はヨーヨー釣りに挑戦した結果、ギリギリセーフで獲れた。

「どんなもんだ!」

ビートは紙糸がちぎれてしまい、獲れなかった。そんな弟を慰めるためにロドゆいは、テクニックでヨーヨーを獲った。

「はい、ビィの分。」

「じゃあ次は射的、といいたいところだが、私の仲間が戻ってきた。休憩しようよ。」


 買い出しチームが食べ物を抱えて戻ってきた。

「ほれ、注文品だ。」

「それに加えてワタアメまで買ってきたとは太っ腹だよ。」

「モグのきまぐれだよ。」

「冷めないうちに食べよう。」

一同はレベッカのリクエスト品で食事を始めた。どれもおいしそうに食べている皆であった。


 食べ終えたレベッカは、次のお楽しみのひとつに挑戦しようと屋台に移動した。

「さて、射的しよ。」

「あ、待ってよレベッカ姉ちゃん。僕もいく。」

いろんな景品が並べてある。

「どれが欲しいものか迷うな。」

「じゃあ、ぬいぐるみを獲ってよ。」

「ぬいぐるみか。それなら私に任せてよ。」

ビートのリクエストに応じ、弾を手に取り挑戦した。10弾中6弾当てても落とせなかった。

「なかなか落とせないな。どうしよう。」

レベッカの傍に見知らぬオトナが射的に挑戦していた。見事景品を撃ち落とし、オトナの娘に賜った。

「そういう人がいるよね。狙撃が得意なオトナって。ねえおじちゃん、どうやったらうまくなるの?」オトナはビートにそう言った。

「よく狙って1発ずつ撃ち、チャンスを作る。チャンスがあればきっと撃ち落とせる。それが僕なりの方法さ。」

「そっか。では僕もやってみようかな。」

ビートはオトナの手順通り、ぬいぐるみを撃ってみた。ぬいぐるみの頭、腕、足元を1発ずつ撃ち、緩くなってきたところで2発撃ち、見事撃ち落とせた。

「よし、ぬいぐるみが獲れたよ!おじちゃんありがとう!」

「景品が獲れたようで何より。そこの姉さんも僕からのアドバイス。一番大事なことは、ターゲットを注意深く視察して、それから手を打つものだよ。この先のことに役立つので、ぜひ覚えてほしい。君たちもいつかまた会えるさ。いこうか、マデリーン。」

オトナはいずれまた会えるといい、娘とともにどこかへ移動していった。

「さて、次は輪投げでもしようか。その次もカタヌキも。」

「うん。」


 順番に輪投げからいき、カタヌキも根気よく刳り貫き傑作を完成させ、得点や型の出来に応じて景品を入手していた。それから、夏祭りのフィナーレといえる打ち上げ花火が始まった。

「もうこんな時間。みんなが待っているかも。」


 レベッカとビートは仲間達のもとへ移動した。

「みんなお待たせ。ほら、見ての通り花火が始まったよ。みんなで見る花火は格別だよ。」

レベッカ達の他に例のオトナとその娘、わざわざ遊びにやってきたDr.デカボットと側近も打ち上げ続けている花火を眺めていた。


 花火が終わり、賑やかで楽しい夏祭りは幕を閉じた。帰っていく人々、イングランドに帰国する親子、レベッカ達に接近する伯爵と側近、エンカウントされたレベッカ達はあきれていた。

「またドクターかよ。何しに?」

「何しにもなにも。お主らのホームまで送っちゃろうかなと。」

「珍しいお気遣いどうも。もしや、リムジンで?じいさんが運転するの?」

「さようです。」

じいさんこと側近が運転するらしいようで、レベッカ達はお言葉に甘えてリムジンに乗ることにした。

「なぁレベッカ。2人が遊んでいる間に、俺たち4人は盆踊りやったんだぜ。結構楽しかった。」

「それにしても、太鼓打ってる人って音信不通のはずのシチメンに似てない?いや、他人の空似かな...。誰かシチメンを知る人いる?」

「誰のことかな...。いや、そうでもないか。中学の頃よりジェシカと双璧といわれた私たちの友達なんでね。6人とも仲良しだった。」

「お主、そのシチメンとやらをわしも顔合わせたいのう。」

「あいにくだが、今はどこにいるのかは知らない。」

「そうそう、ジェシカを見かけたよ。太鼓女を見つめてね。」

「見知らぬ親子の他にドクターといい、ジェシカといい、私のまわりに意外な人が集まってくるね。照れるな。」


 こうしてレベッカ達はリムジン内で雑談して楽しみ、自宅前に到着後、次第に降車していった。


 一方原作者にとっての夏の陣は、ゲームパーク夏の陣2009に手を出していた。19日のことであった。「対決劇場」「D.I.Y.もどき」「アンサガ0」といった作品が揃っていた。原作者の目を光らせたのは「アンサガ0」だった。かつての宿敵「ペガマン」が作ったとされる超高難易度のゲームで、実際に触れていたところ、最終ボスが強すぎてゲームにならないと投げてしまうのがオチであった。他のゲームも出来のいい作品であると評価していた。「D.I.Y.もどき」も元のゲームに比べると見劣りするものの、にしてはよく頑張ったと評価した。「対決劇場」も今年3月に放送された「怪盗vs探偵」をリスペクトした作品だけあって、面白い内容に仕上げていると評価した。原作者はレベッカに3作品をプレイさせていた。

「兄貴が勧めるゲーム、アンサガ0だけがむずい。他の作品もなかなか面白い。」

「だろう?俺には目標が見えたんだ。ペガマンを見返すために、12月頃に開催されるだろうゲームパーク紅白2009に参加する。もちろんやつも参加してくるはずだから、気を引き締めて挑もう。いい作品を作るためにまずはアイデアを集めよう。構想はいままで作ってきたゲーム同様、考えながら作るということで。本格的な制作に取りかかるためには1ヶ月必要だ。皆を集めよ。」


 次の日、招集された仲間達は原作者が企画するゲームおよび演劇のコンセプトを聞くこととなった。

「仲間を増やしつつ最終目的を成すことに加えて、誰でも主人公という斬新なコンセプトだ。初期プレイヤーはロドゆいに決めたいのだが異議はないかい?...レベッカはロドゆいの次だよ。」

「なんで僕が?原作者のお気に入りといったら、レベッカが適任なのにどうして?わざわざ僕にするの?」

「いやー、どうも今年というか、去年11月頃よりロドゆいが好きになっちゃって。」

「僕を推薦する理由は好きだから、といいたいのなら初期プレイヤーでも構わないけど、レベッカが焼き餅焼いちゃうよ?餅なだけに。」

「私は別に気にしないよ。兄貴がそう望んでいるなら、私は君の次でいくよ。んふふ、それも兄貴なりの考えだろう。」

「よし、そうと決まれば。皆の衆よ、たった今、最初のプレイヤーはロドゆいに決定した。その次は我が看板娘レベッカで異論はないかい?」

皆は原作者の意に賛成した。

「承認ありがとう。12月まで完成しないとな。レベッカも手伝ってくれよ。」

「じゃあ僕も僕の視点のシナリオ考えてくる。」

制作に取りかかるというよりも準備という形で始めた。


 翌月の4日、ロデオン百科事典に記載されている原作者の記事は何者かによって編集されていた。「勝手な妄想をしていると聞いて編集してみた」と心のない理由にいまいち解せない原作者であったが、いつもの不届きものと認識し、掲示板に「あなたは正しい」と書き込むだけで済ませていた。後の不穏や絶望が訪れることを知らずに。


 14日、「タチの悪い女」というタイトルで本格的に制作開始した。ロドゆいが考えてきたシナリオを参考に制作を進めていたのだがそれだけでは物足りなかった。スパイスを効かせようと、ロドゆいに「桃太郎Vの逆襲」というゲームを教えることで、助詞や接続詞の間違いがあまりの多さに彼女を笑わせることで序章のアイデアを収穫した。あくまでロドゆいの視点で、レベッカが仲間になった先はまだ書かれていなかったので、ひとまず作りながら。各ウェブのアイデアを拾いつつ取り組み、そこで原作者は見えてきた。アイス早苗が2番目の仲間として供にする、その次もミント彩香、モグ、リサなな、立て続けにヒメやハーヴ、ミコ、ここまでは合計10人ほどまで進んでいった。


10月に入ってなお、思ったより早く完成してしまうほど制作が捗っていた。ここにいる仲間達以外の人物をプレイヤーとして登場させるために、ロドゆいに原作者の知り合いへの招待状を送らせた。それは別の話である。


その後、マーシー、マリオ(あだ名:スベスベマンジュウガニ)、転ばし屋のギルといった原作者の知り合いが来たことにより、ゲームの完成が近づきつつあった。原作者に楯突く連中はもちろん、ニコマロを悪者に仕立て上げ、ついに完成した。11月頃のことだった。クリア後のオマケとして勝ち抜きバトルモードを制作した。12月まで待ちきれないレベッカとロドゆいは、原作者にこのゲームが試遊できるよう頼んだのだが。

「どうしたの?なんか顔色悪いよ?」

「いや、別になんでもない。ゲームやりたいといったな。どうぞ。」

ロドゆいは原作者の様子がおかしいことに気づいていたが、「なんでもない」とのことで深く考えなかった。レベッカは喜んでこのゲームを遊んでいた。原作者の作品は傑作だと実感していた。


 そして23日、ゲームパーク紅白2009が開催された。期待する人は少ないのだが、いずれこのゲームの価値がわかってくれる人がいるはずだと原作者は信じていた。翌年に入り、2日より作品投票が行われていた。


 レベッカとロドゆいは改めて、原作者を題材としたゲームを作ったペガマンとミヤオを見返すための作品「タチの悪い女」の内容を振り返ることとなった。

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