Episode 2:海水浴
8月12日頃、レベッカ達は海へ遊びに来た。砂浜に水平線、海水浴を喫する人々、原作者の息抜きとして海を眺めているだけ。未だに彼に振り回されるレベッカと愉快な仲間達であった。
今回のメンバーは主役のレベッカとその仲間達モグにアンジー楓、サマーバケーションとして日本へ来たマリア愛美とその兄貴「アレグロ雪郎」。レベッカ達にとって「お初にお目にかかる」いわゆる、初対面のようなものだった。
「愛美、この人が噂のレベッカなんだろ?俺昨年から知ってるぞ。あのしょうもない王子とその一味を退けたって話な。」
「これはどうも、お初にお目にかかる。」
彼の名は「雪郎・コンブリオ」、18歳。日本では高3といったところ。日本人の父とアメリカ人の母を持つコンブリオ家の男であり、FBIへの志願者。母親の方のおじいさん「エネルジコ・コンブリオ」はFBIの長官なので当たり前のこと。母親はエネルジコの娘で、父親はインドカレーが好きな日本人。彼の好物は、父親と同じくカレー料理。ビーフよりチキン派。フライドチキン、パン類、BBQを好む。彼の作る料理(主にカレー料理)がうまいらしい。
「兄さんはそういう人だから、よろしくね。」
ちなみに海水浴が目的なのか、レベッカは水着姿を披露していた。白ビキニにサンバースト模様のシャツ、フリルパンツを着用。それだけじゃなく、アンジー楓やマリア愛美まで水着姿だ。二人ともレベッカとは異なるのだが。
「私は兄貴同様、海の向こうを眺めるだけで。」
「おいおいそれはないぞ。といってもな、人が多いとビーチバレーができんな。」
人が多くて、できない遊びもある。そこで原作者は雪郎に声をかけた。
「愛美の兄さん、俺とおしゃべりしよう。」
「ああ、構わないが。」
「レベッカも一緒にだ。兄さんの話を聞きたいのだが。」
「兄貴、それっていつものパターン?さすがに飽きちゃうよ。」
「いいの、暇潰しにちょうどいいと思ったのは君じゃないか。」
「ムゥー。...じゃあ雪郎。なにか面白い話してよ。」
「面白い話か。面白い話より、オモイデ話を聞かせてやってもいいぞ。」
「どんな話かは気になる。是非、聞きたい。」
アレグロ雪郎のオモイデ話を聞くことにした。
2年前の話だった。学ラン姿の雪郎はソロピクニックを喫している最中、14歳の少女と出会った。その少女の名は「ポルカ」。いつどこから来たのかはわからないが彼にとって初めてできたガールフレンドだった。常に学ランを着用しているのは、ヤンキー風格の不良少年に憧れてたとのこと。彼の持つ金属バットもそう。そんなグレてるように見えるアレグロ雪郎なのだが、ポルカはそんなこと気にしなかった。どんな風格であろうとも、彼の「やさしさ」があることに変わらない、と。彼はポルカの見抜いていたことを認め、彼女と友達になれた。2人でコーンドッグを食べたり、プレイキャッチ(キャッチボール)で遊んだり、ポルカと過ごした出来事は素晴らしいものだった。
「ふむ、ガールフレンド『ポルカ』ね。他にないの?」
「次の日も毎日も、つきあっていた。俺の人生にも欠かせない存在だからな。...俺にとってのオモイデは、ポルカだけだ。」
一方別の場面、ロドゆいとビートは砂浜でぶらぶらしている最中、原作者とレベッカを見かけた。ビートにとって少し驚いたところは、兄貴分ことアレグロ雪郎がここにいるということであった。
「雪郎兄ちゃんだ、なんでここに?」
「その声は、ビートか。いいところに来た。」
「それにレベッカ後輩と原作者がいる。雪郎くん、2年前以来だね。」
「知ってるの?」
「僕は新米写真家の頃に会ってたよ。弟『ビィ』がいつもお世話になっていてね。あの頃の一枚絵を撮ってたの。」
「俺の弟分『ビート』は2年前のサマーバケーションに会った。それはポルカと出会った日の後の話さ。」
「つまり、ガールフレンドと出会った日が6月15日で、ビートとロドゆいの件が7月19日、ってことで間違いないかな?どのように対面したの?ん?ロドゆい。」
「僕の仕事のために、ビィとともにカリフォルニア州へ飛んで来て、いろんな写真を撮ってきた。そこで仲良く遊んでいた雪郎くんとそのガールフレンドが素晴らしくて、つい撮っちゃったの。『あんた、このカメラで撮ってるんだろ?出来のいいものを撮ってくれ。』って言われるまま一枚絵を撮ったよ。ビィを入れてね。ほら、一枚絵。」
ロドゆいの持っているカメラを確認したところ、一枚絵の撮影日時は2007年8月14日、お盆の日に撮影したものだった。
「次の日に帰国したけどね。あ、でも雪郎くんに一枚絵を贈ったから。」
姉弟とはそういう関係であると説明した後、レベッカはポルカに関する疑問を抱いた。
「ねえ、オモイデ話に不透明なことが。その後の彼女はどうなったの?」
「二ヶ月後......ちょっとな......わけのわからないことを言い、身を投げ出して死んじまった。......気にすることはない。これは俺の問題だからな。」
ポルカとのラブストーリーは2年前10月17日で終わった。
「私の従妹」をどうのこうの、いったい何なのかアレグロ雪郎にはわからないことであった。
「話はここまでかな?私はちょっと砂浜でぶらぶらしてくる。」
レベッカは砂浜で適当に歩いていった。アンジー楓は水が好かないので、砂遊びでしかやらなかった。モグはダイビングしてくると遊泳区域に潜っていった。
一方コンブリオ兄妹と佐藤姉弟は話を続けていた。
「それは知らなかった。今は平気?」
「しばらくは落ち込んだが、あの姉妹のおかげで俺は立ち直れた。誰にも言うなよ、俺たち4人だけの秘密だからな。シチメン姉妹だ。」
マリア愛美はシチメンの名を聞いて、知っているかのような顔をしていた。
「どこかで聞いたような...もしかして、緋音のこと?」
「...もう知ってるのか。」
「あたしとレベッカの古い友達だからね。」
緋音ことシチメンあるいは七面緋音は12歳の頃からレベッカとマリア愛美、アンジー楓とモグの友達だったらしい。今は違う道を歩んでいるのだが。
「それで今の緋音はどうしているの?」
「今のところ緋音とは連絡が取れない。音信不通ってことか...。ジェシカに聞いてもな、『あれからずっと連絡がなくて。ってゆーか音信不通?』同じだ。」
ジェシカことダイスはシチメンの友人であり、古いつきあいでもある。シチメンをお姉さまと呼ぶことから、本当の姉妹ではないかと噂されているのだが、現時点では真偽は不明。
「もう1人はいるでしょ?たしか、ハルミだっけ?」
「ハルミならイタリアの知り合いが預かっている。」
「あらまぁ。」
シチメンの妹「ハルミ/七面晴海」はアレグロ雪郎の知り合いが預かっていたらしい。妹でも姉の居場所はわからないまま。
「妹さえもシチメンの居場所はわからないらしい。どこにいるのやら...。」
一同はすぐに話題を替えて話していった。
砂浜で歩いているレベッカは、透明な物体こと座礁したミズクラゲを発見した。
「触れると刺されるし、どうしようか。」
刺胞を恐れて回収を断念、放置した。海の向こう側の珍しいボードを見たレベッカは興味津々で、ボードに向けて泳いでいた。溺れかけながらもいぬかきで渡り、到着した。5m離れた場所から見れるビーチの景色を眺めるレベッカであった。ちょうどダイビングを終えたモグが出てきた。
「なぁレベッカ、この先何が見えると思う?」
「ビーチ...そうじゃなくて、行き先のこと?今はまだっていうか...そうでもないか。私も兄貴もエンターテイメントの一環としてパーっと盛り上がりたいな。」
「そうか。俺の場合は、一族の安泰のためにもっと頑張らないとな。姉貴に負けないぐらいにな。」
「メグミのことかな?一度も顔をあわせてないし、どんな姿をしているのかは知らないし。いつお目にかかるの?」
「今のところはまだだ。だがな、いつか姉貴に会わせてやるからな。」
現時点では行き先はまだ見えない。だが、来年に向けて凄いものを用意して、盛り上がりたいとレベッカは志していた。
一方アンジー楓は、砂のお城を完成させた。付近の4人は拍手を送った。
「大したものだ。うん、よくできている。素晴らしい。砂浜の廃棄物を有効活用するとは。」
「砂浜の廃棄物は僕が持ち帰るから。」
他の砂遊びといえば、砂浴。ただ身体を埋めるだけではなく、効能として身体が暖まり、心地よい気持ちになれる。早速、女性陣(3人)とビートは砂浴を体験していた。雪郎は4人の身体を片っ端から埋めていった。
「雪郎兄ちゃん、動けないよ......。」
「何をいっている。やりたいと申したのはビートじゃないか。女子に囲まれおって、まるでハーレムじゃんか。ほら、気持ちいいだろ?」
「あ、ほんとだ。気持ちいなぁ。」
「愛美はどうだい?」
「埋まれてはじめて砂浴して、最高に気持ちいい。」「そうかそうか、我ながらいい仕事をしたもんだ。」
砂浴を楽しんでいるなか、レベッカとモグが戻ってきた。レベッカは土や砂が好かないので遠慮するといい、モグは日光を浴びたいといい、2人とも不参加だった。
ビーチ日和を楽しんでいる愉快な仲間達なのだが、それを楽しんでいるのはレベッカ達だけじゃない。あのおっかない王子ことDr.デカボットがビスマルクを模したボードを海上に浮かべて遊んでいた。無論、水着ではなく赤スーツを脱いだ白シャツだけの涼しげな外見をしている。ビスマルクで移動しながらウォッチングを楽しんでいたのだが、水平線を眺めていたレベッカに見られてしまう。
「また君かよ。おジャ魔王子といい、フェスティバルといい、ビーチでなにか企んでいるな?」
「お主、ヒマじゃろ?ならばわしとつきあえ。」
そんなくだらない理由でレベッカを誘拐した。
「ちょ、ドクター!」
レベッカがいないことにいち早く気づき、ドクターに連れ去られる光景を目撃したモグは、この事を皆に報せた。
「レベッカがドクターに連れ去られた。」
「また王子の仕業かよ。懲りないやつだな。それで、ビスマルクに乗せてるのか?」
状況を把握したアレグロ雪郎は、直ちにボードを用意した。ビスマルクに似せているといえど、相手は自動式ボードで移動しているので、カヌーを使うこちらのボードでは追い付かない。ウラを掻く必要だと雪郎は判断し、Dr.デカボットの行きそうな場所を突き止め、スローながら気づかれぬよう遠回りした。彼らの目的地は、小さな無人島。なにもない、ただの島だった。
「ドクターよ、どこへいく?暇だからといっても、何しに?」
「この島でケリをつけるに決まってるのじゃ。」
「もしや...私をアレする気?」
Dr.デカボットは何かまずいことを企んでるらしい。一方アレグロ雪郎一同は遅ればせながら岩陰で様子を見ていた。
「まさかな...。しょうもないことを企んでいるな!」
Dr.デカボットはレベッカのシャツを剥ぎ取った。
「ちょ、ドクター!!」
強制的にいやらしいことをしようとしたその時、アレグロ雪郎が岩陰から飛びかかってきた。
「よくも!!このっ、いやらしいことができるな!!」
「邪魔が入ってきたか...。では、Wir sehen uns!!!」
Dr.デカボットはアレグロ雪郎の前から去っていった後、お仲間が駆けつけてきた。
「なんともないの?」
「ドクターのやつ、いやらしいことを...。」
「アレだな。オマワリを呼んで、あの懲りない伯爵を拘束すべきだ。」
「もう遅い。ドクターはとっくにどっかいっちゃったよ。それより、兄貴を忘れてない?もう日が暮れてるし、帰ろう。」
「...そうだな。今日のところは引き上げよう。10分もかかるが。」
レベッカ達は10分を費やしてビーチへ戻った先に、皆の帰りを待っていた原作者がいた。
「遅かったじゃないか皆の衆よ。さぁ、帰ろうか。」
「...去年、妹の事はどうも。あんたが続けている原作の仕事、頑張れよ。それと仕事に不可欠な仲間がいるんだったな。なら、あんたの計画につきあっている俺の妹をよろしく頼む。いずれまた会えるさ。」
こうして、楽しいビーチ日和は終わった。このようなビーチ日和は今日限りであり、それ以降も二度と来ることはなかった。
「いたた、先に日焼け止めを塗っとけばよかった......。」
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