Episode 4:ターミネーター
10月下旬夜10時、とある駐車場で謎の光あるいは球体のような物体が稲妻とともに出現した。その中に現れたのは、未来からやってきた緑色の髪の女性だった。彼女の名は「クラベス鈴菜」。右腕と頭蓋骨が金属で構成されているサイボーグだ。彼女の行き先は保育園、何しに来たのかというと......。
「服を貸して。」
保育園に上がり込み、唐突に「服をよこせ」と要求し、それに対して保育士は引いていた。そして夜中の保育園を後にしたクラベス鈴菜は、課せられたミッションを続けたのだが。
「私の服を返しなさいよ!!」
服を返せと訴える保育士に対してクラベス鈴菜はそう答えた。
「I'll be back.」
それでも納得いかない保育士は服を返せと飛びかかった。結果、ボディガードの服と交換して着用し、そのまま後にした。
一方別の場面、もう一人の未来人が現れた。警官がそのタイムスリップの痕跡を調べている中、待ち伏せしていた「安広千尋」にやられてしまう。千尋はアメリカ式警官の衣装を着用し、ある目的を遂行しようと行動した。
翌朝、フリーランスのフォトジャーナリストとして仕事をしている女がいた。ロドゆいこと「佐藤優衣」は、フォトジャーナリスト以外の仕事でもやっているらしく、その一例としてゲーセンでスタッフの仕事をやっていた。彼女の弟「ビート」も客としてゲーセンを喫した。クレーンゲームをして遊んでいたのだが。
「オマワリだ...こっちに向かってきた。ボクが何をしたっていうの?」
警官に扮した千尋が現れた。ビートの選択肢は、この場からズラかることであった。ロドゆいは仕事しているためか、ビートの身に何があろうと持ち場を離れるわけにはいかなかった。
廊下まで来たビートだが、とうとう千尋に追い付かれてしまう。危機一髪の最中、ビートの前にクラベス鈴菜が現れた。彼女の持っている箱から取り出したのは、薔薇を添えていたウィンチェスターM1887。それを構え、標的を狙った。ビートはすぐに引き返すも千尋が近づいてきて、しかもベレッタ92を手に持っていた。逃げ場がなく、挟み撃ちに遭いそうなビートだが。
「Get to the chopper!!」
ビートは早急に逃げ出した。ショットガン3発撃つも相手は液体金属で覆われているので、なかなかシななかった。ショットガンをつかみ、お互いに壁をぶつけながら、ショットガンを奪わんとジャンケンした。ジャンケンで勝ったクラベス鈴菜は千尋を突き飛ばした。
その頃ビートは逃げ走っていった。自分用のキックスクーターで走っていった。逃走先に立っていたのは、クラベス鈴菜だった。
「きみは誰なの?」
「私はクラリス・鈴菜・マスカット。生き生きとしたサイボーグ。」
「これが...、そうなのね。...うん。それで、何しにきたの?」
「あなたを守りにきた。」
「でもそれって、なんとなくでしょ?守る理由なんてわからないのに。」
「...はい、なんとなく。」
「まるでロボットみたいな口ぶりだね。...それともう一人は誰なの?」
「奴は安広千尋。」
「きみとは同僚?」
「そ...いいえ。」
「そろそろ姉さんのもとへいかなきゃ。」
「いかせはしない。奴があなたの姉に化け、待ち構えてくるはず。」
「化けるわけないでしょ?さあ、いこっ。」
「どうしてそこまでして。」
「僕の言うとおりに動いてくれたら姉さんがいいバイクを買ってもらえるから。」
「じゃあ、言うとおりにする。」
二人はロドゆいのいるビルに移動した。
ロドゆいは夜の仕事「ビル清掃」をしていた。それから、彼女の携帯電話から着信音が鳴っていた。その相手とは弟「ビート」であった。受話器を取り、実弟と会話した。
「僕だけど。」
「ビィ?」
「今どこなの姉さん。」
「ビルにいるよ。掃除が精一杯なの。悪いけど僕のもとへ来て。」
「うん、今動いているとこ。じゃあ。」
ビートは今、目的地へ移動しているところであった。
「急がなきゃ。」
15分費やしてエレベーターに乗り三階に移動し、対面した。
「ビィ、この人は誰なの?」
「鈴菜さんだよ。よくわからないけど、僕を守ってくれるらしいよ。」
「はじめまして。」
状況を確認する三人だが、千尋が来るのも時間の問題であった。
「それより、奴が直に来る。ここから離れたほうがいい。」
そういっている間に千尋が現れた。彼女と三人の間の鉄格子をすり抜けてきた。拳銃だけは本物なので引っ掛かっていた。ショットガンで応戦するクラベス鈴菜、姉弟はエレベーターまで走った。三人揃ってエレベーターに入ったのだが、千尋はその扉をこじ開けた。そこから降り、天井を突きつけた。天井は崩れ、ここから出た三人はロドゆいの自動車に乗り、地下駐車場から飛び出していった。それを追いかける千尋だが、クラベス鈴菜のショットガンに撃たれまくりであった。
「死にません!!警官は死にまっぐわぁ!!!」
千尋の追跡から振り切ったのであった。仰向けになっていた千尋はこう叫んだ。
「死にまっせぇぇぇん!!私、警官は目的のためなら例え火の中水の中!!!しーにーまーちぇーん!!!!!」
見事追跡から振り切った三人はこう話していた。
「それにしてもあの警官もどきはいったい誰なの?」
「ラインハルトの息子があの会社で世界を牛耳るというか、彼にとって不利益な要素を排除するためにこの時代に千尋を送り込んだらしい。」
「不利益な要素ってつまり僕のこと?僕を狙おうと追いかけてくるけど、僕が何をしたっていうの?」
「未来のあなたは、ならず者のリーダーだから。」
「そんな理由で...それはそれとして、あの会社とはどういうもの?」
「Dr.デカボットがロボットを製造するために設立した会社のこと。そこに保管されているサイボーグの腕とマイクロチップは彼の所有物よ。」
「...何をいってるのか、僕にはわからない。どうするの?」
「会社に手を出すまでよ。詳しいことは潜入してから。」
次の目的地は、ロボット製造会社「サイバートロン社」へと向かっていった。
ここはサイバートロン社。ロボット工学やプロセッサ設計を主とした会社だった。その後の会社はどうなったのかは3人の奮発を今、ここに語ろう。
「見張りが一人いる。どうすればいいの?」
「正面からいく。」
「え?大丈夫かな......いや、不安だ。じゃあ、右手を上げて誓ってよ。手荒な真似はしないと。」
「あ、はい。」
クラベス鈴菜は右手...いや、左手を上げて「手荒な真似はしない」と誓った。左利きだった。『急所をはずせ。』にもかかわらず、足元を撃った。結果、見張り人は気絶した。
「誓ったんじゃなかったの?」
「安心して、手加減してある。」
早速社内に潜入して、保管してある二つのアイテムを探していった。そこの壁に怪しげなボタンがあった。
「ここは姉さんに任せて。」
ロドゆいはそのボタンを押すと、サイボーグの腕とマイクロチップが出てきた。
「これが...サイボーグの腕...。」
と言いたいところだが、実物はマジックハンドとポテトチップスだった。
「厳重に保管されているといえど、そんなおもちゃじゃわからないよ。」
「言えることは、この二つは未来戦争とはまったく繋がっていない。ただ、この会社自体が未来の恐怖政治の重要企業と見て間違いない。なので、ここを処理する。」
そうと決まれば、三人はありとあらゆるデスクトップに起爆装置をセットしていった。
「どうやって起爆させるの?」
「リモートでやるの。ここから出たのち、十分距離を取ってから押そう。」
三人はすぐさまに会社から出ていった。といいたいところだが......。
「サイバートロン社に不審な人影を確認。至急、急行願います。」
白バイで走っていた千尋は無線通信を聞いて、他のパトカーとともに現場へと駆けつけた。包囲されていた三人の行動とは?姉弟は先に会社からこっそり抜けて、クラベス鈴菜は警官を追い払うと窓をぶち破り、M134機関銃で乱射した。姉弟を逃すための時間稼ぎであった。白バイ千尋を確認したクラベス鈴菜は、すぐに脱出した。一方千尋は白バイで階段にのぼり、ヘリコプターが見える2階に到着した。ここから飛び出し、クラベス鈴菜はそれを見計らい起爆させた。その爆風に押された千尋は、ヘリコプターにしがみついた。その時の彼女はこの通り。
「はっはっ、ヘリをよこせ。さあ、ヘリを。」
ヘリコプターを奪わんと頭で割ろうとするも失敗、反動で落下した。
終点は会社のすぐそばの溶鉱炉、三人はそこへと移動した。追いかけてくる千尋の打開策はここなのかもしれない。
「私が時間を稼ぐ。あなたたちは奥まで走って。」
姉弟は溶鉱炉の奥まで走り、クラベス鈴菜は千尋を迎え撃つべく捜索モードに切り替わった。さすがに視界が悪かったのか、千尋の奇襲に遭い、そのまま戦闘を繰り広げた。相性が悪かったのか、クラベス鈴菜は劣勢に立たされてしまい、歯車に右腕を挟まれてしまった。身動きが取れないクラベス鈴菜、それを放置して千尋は姉弟のもとへ向かった。
「だめだよ姉ちゃん!」
「姉さんがあの警官を足止めする、その隙にビィは奥まで逃げて!」
「やだよ!!それじゃあ姉ちゃんがやられる!!」
「仕方ない、さぁ、いったいった!!!」
まるで奥まで詰めるかのようにビートを押し出した。千尋が歩いてきた。
「こいよ、僕が相手だ!!」
彼女の持つホームランバットで振るも千尋は驚異的な再生力でロドゆいの攻撃はびくともししなかった。
「きゃああああ!!!」
溶鉱炉の頂上まで迫り、姉弟は逃げ場がなく絶望的になった。しかし、千尋の背後に歯車に挟まれたはずのクラベス鈴菜が登ってきた。アヒル人形を詰めたショットガンを手に持ち、千尋の頭に向けた。
「Good bye.」
「ふぁあ?」
着弾時、千尋はよろめき、溶鉱炉に落とされて。
「しーにーまーちぇぇぇぇぇ!!!」
そして沈んでいった。
「どうなったの?」
「上がってこない。」
意味のないマジックハンドとポテトチップスだが、両方ともそのまま溶鉱炉に放り込んだ。
「終わった。これで次代Dr.デカボットこと凌魔による恐怖政治の脅威は去った。」
「でも、君はサイボーグなんでしょ?ここにいたらまずいのでは?」
「...確かに。右腕も実は義手だし、それに私の頭に本当のマイクロチップがあるそうね。私が存在したらまた、現在のDr.デカボットに悪用されるかもしれない。早いうちに私を沈めて。」
「そんなぁ...。」
涙ぐむビートの目を拭き取るクラベス鈴菜は、人が涙する理由を理解していた。
「人間の泣く気持ちが初めてわかった。自分で命を絶つことができない。ボタン操作で私を沈めてほしい。」
最後に握手を交わすも、右手ではなく左手で交わした。左利きゆえに。
「Good bye.」
鎖に掴まって、ロドゆいがその鎖を動かすボタンを押して、彼女を溶鉱炉に沈めた。姉弟は最後までクラベス鈴菜を見送り、溶鉱炉を後にした。そのときの姉弟はまだ気づかなかった。その追いかけっこの真相とは......。
もう一人の未来人「ジャズ賢一」は既に原作者と接触していた。
「あの舞台を用意したのはお前か?」
「ああ、もちろんさ。仲間を増やすためなら、これくらい用意しておかないとね。」
「...Dr.デカボットと協力したのか?」
「ありゃ、ばれちゃった?」
例のマジックハンドとポテトチップスは未来の出来事とはまったくの無縁で、溶鉱炉の溶鉄は下から光を当てたシロップのプールだった。原作者の目的はあくまで未来人とその姉弟を釣る、そのためなら仲間ではないDr.デカボットとの協力を惜しまない。レベッカ達に偵察を頼んだという話は、ロドゆいとビートを我が手にするため。一部始終を見届けた今、レベッカは姉弟の前に姿を現し、勧誘した。
「ちょうど二人を連れてきた。」
「ごくろう、我が看板娘。」
ロドゆいは初めて原作者の顔を見た。『噂には聞いたが』という顔になっていた。
「あれが噂の原作者?はじめまして...。それで、僕とビィをここまで連れてきて何の目的なの?」
『人気者になりたい』という当初の目的は変わらない。かたかたじかじか全てを話した。仲間が15人揃えたことで、原作者の夢がもうすぐ叶えられそうであった。
「俺の夢は、我が看板娘と皆さんを全国に名だたる人気者にしてみせることだよ。俺の理想と夢を実現したくて頑張って皆を集めたのだよ。来月楽しみでわくわくだよね。...そうそう、もう一人の仲間をサルベージしてきたよ。十分ごっこ遊び楽しかっただろう。」
原作者がサルベージしたのは、意外な人物だった。姉弟は驚いた顔で彼女を見ていた。
「I'm back.」
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