15話 プロローグ うどんの国の人々 野武士に出会う

 今回は、普段とちょっと志向を変えて現実レポートをメインに書きたい。


 仕事場でのひととき。

 仕事を忘れあれこれ雑談をする。

 M君という人がいる。

 何故かよく話す。

「最近、珍しいものより美味いものが食べたいねぇ」

「わかります」

「丸……」

「ストップ!……隅田先輩。○○や△△(有名なうどんチェーン)の本社、何処にあるか知っています?」

「? 香川?」

「いいえ、神奈川県とかですよ」

「!?……まあ、ほら、安いし別に美味けりゃあいい……」

「先輩、香川の讃岐うどんの奥深さを知りませんね……」


 その時の心象風景はオフィスではない。

 草原だった。

 そして、目の前に野武士がいた。

 イメージとすると『セカイの三船』(個人的イメージ、椿三十郎)がいた。

 野武士がいた。

 M君ではない。

 M君改め三船は私を見て、にやりっと笑った。

「時に聞くが、○○饂飩で一番安い饂飩はいくらだ?」

「釜揚げ饂飩二百九十円。個人的にはリーズブルプライス」

 三船はこう言い放った。

「俺は今は群馬県にいるけど親の都合で香川県さぬき市という(うどんの)修羅の国で学生時代を過ごした。正直に言う。それは高い」

「!!?……なんだと?」

「讃岐には個人の製麺所が多くてな……一玉百円が当たり前。故に約三百円なら三玉の大盛が食えるぞ!」

「凄まじいな……(うどんの)修羅の国」

「あと、もう一つ。うどんの『コシ』とは何ぞや?」

「そりゃ、しこしこの歯ごたえとか……」

「ならば、言おう。それは違う」

 私は片膝をついた。

 信じていたものが目の前の野武士によって覆る。

 雨が降ってきた。(実際は屋内での会話なので関係ないのですが)

「もう一度、かかってこい。だが、その前に、もう一度○○や△△と向き合え。そして、その時、

 野武士が去った後も、私は立ちあがれないでいた。


 というわけで、うどん編です。

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