九首目 花の色は

  おはよ。九首目です。


・詠み人:小野小町


・花の色は うつりけりな いたずらに わが身世にふる ながめせしまに


・訳:桜の色はもう色あせてしまった、––––私がむなしく、ぼんやりと、長雨が降っている様子に物思い 耽っている間に––––私の容姿もいつか衰えてしまったこと……


・訳の補足:和歌の世界では「花」は桜を指すそうです。どちかと言うと、桜以外を意味しないようです。


「うつりにけりな」は「色がうつる」とも使うので、そこから人の移り気な性を捉えさせ、更には、時が移り変わって、色あせて行く様子、そしてこれは、私見ですが、花に小町自身を写している……投影している。そんなことを読み取って貰えるよう、小町は狙ったのではないでしょうか?

 因みに最後の『な』は、感動の助動詞だそうです。こう言う形で最後に『な』が付いた場合「〜したなぁ」とか言う意味合いになるそうです。


「いたづらに」は、無駄にとか、徒らにを意味しますが、一説には「居た」にもかかっており、かつて桜の色鮮やかな季節のように、そう言う時間を共に過ごした誰かが居た。と言う説もあるそうですが、どうなんでしょう?「居た」って、言います?昔の言葉で……

「居る」とか「をり」とかは聞きますけどね。ん〜、でも、「をり」は一定の状態で留まっていると言うか、継続している状態を表す言葉のはずなので、それはそれで趣があるような………、


 忘れてました、ざっくりでいいのです。


「世にふる」は、この世。現世。の意味の他に「男女の仲」と言う意味があるそうです。さらには「ふる」には「雨がふる」と「経る」つまり「年を重ねる自分」の2重の意味があるそうです。


「ながめせしまに」は、「ながめ」が「眺め」と「物思い」と「長雨」の掛詞で、––––長雨が降っている様子に物思い 耽っている間に––––と、読み解かなければいけません。

素人的には、「長雨」を読み解くのは中々、難しいですね。


 掛かり過ぎです。

 

 掛かり過ぎて、拗れているようにも感じます。

 

 小町は結局、操を一人の男の為に立てたとか、立てなかったとか……

 

 嘆息しなければ、拗れているとは思わないのですが……

 でも、嘆息しなければ、この綺麗な歌は生まれた来なかったかも知れないし、小町も嘆息する自分が好きだったのかも知れません。


 やはり拗れている気がします……


 それにしても、なぜ女の人は自身を花に例えるのでしょう?


 花と言うよりは、Hymenopus coronatusと言う感じですが……、

 あ、ごめんなさい。


 

 小野小町は歴史のスーパーヒロインと言っても、過言では無い人です。

 美人の代名詞ですね。


 関連した逸話はいっぱいありますが、書き切れないので、その生涯の最後だけ……

 小町の墓は日本全国いたる所にあるのですが、京都の補陀落寺と言うお寺で最後を迎えた。

と言うのが有名なようです。(補陀落寺も複数存在するようです)


 齢80を超えた小町は放浪の末、そのお寺で亡くなります。看取る人がいなかったので、小町の亡骸は野晒しになり、やがて髑髏の空いた目の間からススキが生えたので、小町は風が吹くたびに「あぁ、痛い」と嘆いたと言われています。

近くを通った僧(西行とも……)によって、漸く弔われた。そんな話です。


 詳しくは「穴目のススキ」で検索すれば、分かると思います。

 補陀落寺には「姿見の井」なる物が存在します。

 高野山の「姿見の井戸」とは、別物です。


「姿見の井」の言葉を知ると、長雨で出来た水たまりに、もしかしたら小町は歳老い始めた自分の姿を見たのかも知れないと、想像が膨らみます。

 あるいは、池に映った小町自身の姿が、雨の波紋で歪むので、老いを憂いたとか……


 景色の中に、水たまりとか、池が出てきませんか?




 でわ、行きましょう。


「女心は単十二ひとえじゅうに


 女心は一つに見えて、一つじゃないよ。


 って、話し。でした。


 おやすみなさい。




*「学研:実用特選シリーズ 見ながら読む歌の宝典 百人一首」


を参考にしています。


人物については、ネットのサイト等での独自の調査になります。


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