第13話
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『社長、子どもの服もつくるなんて、画期的なアイデアでしたね。おかげで売り上げは前より倍以上です』
僕と一緒に会社の廊下を歩いていた秘書がごちゃごちゃ言っている。
『取引会社も増えましたし、いいことだらけです。社長がアイデアを?』
「いいや。シスだ」
『あぁ……シスさんですか。なかなかやりますね。あ、そういえばディナーの予約、取れました』
「あ、そう」
売り上げが伸びたのはシスのおかげでもある。だからお礼といっても何だが、食事を二人分予約してもらった。
「じゃあ、予約の日にそのレストランに来るようにシスに伝えておいて」
『あ、もう一人の方はシスさんでしたか。お二人でお話ですか?』
「別に。ただのお礼だ」
***シスSIDE
さっき、社長の秘書さんに会った。『今週の土曜日の夜、ここのレストランに来るように、そこには社長がお待ちだから』と言われた。
私なにか悪い事したかな。社長と二人で、レストラン……怒られたりして……。
シスの頭の中で悪い想像だけが膨らむ。デスクの上のパソコンは開いたままで、電源すら入れていない。ただ黒い画面をみて考え込むシス。すると、『どうかしたの?』とハニ部長が話しかけて来た。
「あ、何でもありません! ただぼーっとしてて」
『この頃疲れてない? 夏バテ? この頃、猛暑が続いているわよね』
「そうですね」
『あっ、今日金曜よね? 飲みに行く?』
ハニ部長は優しくほほえんだ。
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「えっ!? 部長、彼氏いないんですか!?」
『そうなの、もうこんな歳だっていうのに、みっともないよね』
「え、失礼ですが……年齢は?」
『30。来月で31よ』
「そんな若さで部長を。すごいです」
『もっと若い頃は仕事が楽しくてバンバンやってたけど、今は人肌が恋しいのよ。彼氏欲しいなぁ!』
そう言ってビールをグイッと飲み干す。二人は洒落たお店で、酒をつまみに語らっていた。
『シスちゃんはどう? 彼氏いるの?』
「いません」
私なんて、過去に彼氏が居たのは一度だけ。それも別に長くは続かなった。だから恋愛経験なんて、ゼロに等しい。
『そう、じゃあ私たち、お仲間さんだね』
「部長は、彼氏、すぐできると思いますよ!」
『そうかな~。あ、あとシスちゃん! ここではプライベートなんだから、「部長」じゃなくて「ハニさん」ね。もういっそハニって呼び捨てでもいいのよ!』
「年上なので、呼び捨てはちょっと。ハニさん、でいきます!」
『よし!』
ハニさんは笑いながらビールを飲もうとする。が、さっき飲み干したのでビールなどない。
『あ、もうビール無かった』
ハニさんは恥ずかしそうに笑う。そして、店員を呼んで追加で注文をした。
『あれ? そういえばシスちゃん、お酒飲まないの?』
「あ~」
私はあまりお酒は強い方ではない。前なんて、ベロベロに酔っぱらってたくさんの人に迷惑をかけた。それからお酒は飲んでいない。
「私、お酒弱いんです。すぐベロベロになっちゃうので」
『そうなの? でも、一杯ぐらい飲んだら? ほんのちょっと! 気分が良くなって~ストレスなんて忘れるわよ』
お酒飲むのは怖いけど、でも今日は飲みたい気分。
「じゃあ、一杯だけ! 酔いそうになっていたら止めて下さいね!」
『了解!』
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シスは自分の家に帰り、ベッドにそのまま寝転がった。今日のお酒はおいしかった。ハニさんとの話も楽しかった。予想以上にハニさんが良い人でびっくりした。人間性も私と合わないわけではなくて安心した。あ~あ、今日も良い日だったな。そんな幸せに浸かりながら、シスはゆっくり眠りに落ちていった。
プルルルル プルルルル、というアラームでシスは跳び起きた。
しまった! 昨日の服のまま寝てしまった! でも今日は土曜日! ゆっくり休め……ない!!! そうだ、今日は社長と会う日。全然休んでいられない!
シスは、お風呂に入り体をきれいに洗い、午後になったら服を選ぼうと思う。
「たしか場所は……」
秘書に言われた場所をスマホで調べている。
「はぁ!?!?」
驚きのあまり、変な声がでてしまった。
私、こんな高そうな所行くの!? そんなにお金ないよ。
高級レストランに見合った服を探して、高級レストランに行っても恥ずかしくない化粧をしていたら時はどんどん過ぎていき、社長との約束の時間に刻一刻と迫っていた。
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