第12話
***シスSIDE
社長に提案した日から二週間たったが、私は前よりも良いデザインが浮かばず、悪戦苦闘していた。だがこの頃、一つ分かったことがある。それは、デザイン部はそんなに楽じゃないって事。私は、デザイン部を甘く見過ぎていたようだ。
デスクに肘をかけ、回る椅子を左右に行ったり来たり……。そうしていたらどんどん時間は過ぎていき、昼だったのは一気に夕方の暗い時間にまで迫っていた。
「あ、もうこんな時間か」
他の先輩たちはまだ残ってデザインの試行錯誤を重ねている。その中で新人が悠々と先に帰るのはどうかと思うけど、全然アイデア浮かばないし、仕方がない。シスは結果、先に帰ってきたが帰り道も、家の中でも、頭の中はデザインの事だらけ。シスは自分の家に帰ってすぐにソファに身を預けた。すると、シスの目に大好きなぬいぐるみの姿が飛び込んで来た。
「あ! そうだ!」
シスはすぐさまペンと紙を取り、頭に浮かんだデザインを書き出した。
「よし! これだ」
明日、二度目の社長への提案をしようと思ったシスだった。
「失礼します」
前より、自信ありげに扉を押す。入ったら、前と変わらず本を読んでいる社長がいた。
「新しいアイデアです」
社長に近づき、書類を手渡す。今回は、自信がある。シスは胸を張り、社長から出る言葉を待っていた。
『お前……ふざけてるのか?』
書類をデスクに叩きつけると、社長は立ち上がった。
「な、な、何か問題がありましたか?」
『問題だらけだろ、このクマ! お前は、子どもの服をデザインしてるのか? この会社は、大人の人を目的とした洋服を手掛けているんだ。知ってるか?』
「はい……」
『もう一回自分のデザインを見ろ、ほら』
社長が私の前に書類を置いた。書類のデザインには可愛いクマのデザインのユルふわのワンピースが書かれていた。
「そういえば、子どもっぽいですね……」と言い、私は、あはは、と乾いた笑いを漏らす。
『あはは、か? ……なし。真剣に考えろ』
社長室から出た後、自分のデスクに戻った私は自分の書類を見て笑った。なんて酷いデザイン。そりゃあ、社長も怒るわ。
―――あはは、か? ……なし。真剣に考えろ。
『なに笑ってるの?』とジェンさんが寄って来て、座っている私の横に立った。
「自分のデザインが馬鹿らしくて……。ダメですね、もっと頑張らなきゃ」
***チェギョンSIDE
本を読んでいても、さっきシスが持ってきたデザインがどうしても頭から離れない。どうして離れないんだ、あのクマ! ダサいし、子どもっぽいし、子どもっぽいし……子どもっぽい。……子ども? 子ども……あ……!
秘書に、もう一度シスを社長室に呼ぶように指示した。
『社長、御用でしょうか……』と、シスが強張った様子で近寄って来た。
「シス……お前のデザインを採用する」
社長椅子に座りながら、シスを見て話す。
『はい!? あの、デザインがですかぁ?』
棒みたいに固まって動かないが、顔だけが動いている。
「でも大人の服ではなくて、子どもの服だ」
この会社では、大人の洋服しかつくらないとシスに言った。が、シスのお陰で思いついた。子どもの服もつくろうと。
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