第11話



~~~


 いくら先輩に頑張れって言われても頑張れないよ! 

 

 シスは夜、ベッドに入りながらじっくり考えていた。なぜなら、明日は社長に提案しようと思っているからだ。


「でも、どういう顔してるんだろう……イケメンって言うし……」


期待と不安が2:8の割合でシスの頭の中に埋まっている。自分の想像に浸かりながら、シスは眠りに落ちていった。




「ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~」


 私は今、社長室に向かう廊下を歩いています。心臓が張り裂けそうなくらい、バクバクしてる。コンコン、と扉を叩く。この日が来たとは……。


「失礼します……」 

 そう言って、ゆっくりと社長室の扉を開ける。そこには、太陽の光に当たって、美しく本を読んでいる男性がいた。


「ここここ、こんにちは」

 その声に反応して、男性は顔をこちらに向けた。


「あの、デザインの提案書を持ってきました」


『ああ』  

 彼は読んでいた本を机に置き、私の顔をじっと見つめている。

 何、この感じ。この人、かっこよすぎじゃない?


『なに、ぼーっとしてるんだよ。書類は?』


「あ、あ、はい。こちらです」 

 焦りながら書類を手渡す。とその時、社長の手と私の手が触れた。


「あ、あ……すみませんっ」

 分かりやすく焦る私。冷静にしろ! シス! 見惚れるな!

社長は何も言わず、ただじっと書類に目を通していた。それだけの行動でもになる。


子犬みたいな丸い目に、高い鼻。シワひとつない肌。そして、ふんわりとしたピンクの唇。一回見ると、もう、目を離すことができなくなりそうなほど美しく、尊い。

 こんな人、本当にいるんだ。テレビの中の存在だけじゃなかったんだ。


『お前……新人?』

 低い声で社長が言った。


「あ……はい」


すると社長は『なし』と言って、書類を投げた。


「です……よね」

 笑いたくないのに、なぜか笑いが込み上げてきた。


『ですよね? お前はそんな軽い気持ちでやってるの?』と社長は、私を見上げながら腕を組んだ。


「いえ、違います! ……すいません」

 私は下を向く。そんなこと言われたら、もう、顔なんて上げれない。


『そんなんだったら辞めたら? お前じゃなくても人ならたくさんいる』


「すみません……」


『話はもう無い』

 そう言って社長は、机に置いてあった本を手に取った。


「はぁ……」と、私はつい溜息を漏らしてしまった。そのため息に反応し、社長は顔をあげた。今にも何か、社長が言い出しそうだったので、私は何も考えずに、ただ社長の名前を呼んだ。


「社長!!!!」

 大声で叫ぶ。すると、社長の瞳孔が揺れた。


「わたし! 頑張ります!! また持ってきます!! 失礼します!!」

 私は勢いよく社長室を出つきた。

 あーイラつく! ジェンさん言ってた通りだわ、最低。







***チェギョンSIDE




 ……なんだあれは。

チェギョンが、はっ、と声をだして笑った。



―――わたし! 頑張ります!! また持ってきます!! 失礼します!!


「何あれ……」


チェギョンが笑ったのは、700年ぶりである。

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