第10話 彼の本性
3時間後、ジェンが社長室から戻って来た。
「ジェンさんどうでし……ジェンさん?」
ジェンさんは、気が抜けた様子だった。まさに、死にかけの病人だ。
「大丈夫ですか?」
『あ、ああ……やっとわかったよ……社長がどういう人か』
ジェングさんは、デスクの椅子に腰かけてくるくると回り出した。
「どう……でしたか?」
『最低だった』
最低? それは一体……。
「どういう事ですか?」
***ジェンSIDE
3時間前。
コンコンとジェンが社長室のドアを叩く。
「失礼します」
僕はおそるおそる扉をゆっくり開ける。中に入ると、いかにもカッコいい雰囲気の人がそこに座っていた。相手は、本を見たまま、じっと動かない。僕はゆっくりと近づいた。
「社長……あの、デザインの提案書を持ってきたんですけど」
『タイミングが悪い』
相手はそれだけを言い捨てて、本を見つづけている。
「は、はい?」
『今は見る気分じゃない』
「でも……社長に提案するんじゃ……」
バン! と、社長は手に持っていた本を机に勢いよく置いた。
──ビクッ!
『仕方ない。……見るから、貸せ』
「は、はい」
ジェンが社長に書類を渡す。
初めて見る本物の社長。とても若くて凛としている。社長が僕の書類に目を通していると、なんか緊張が増してくるなぁ。この沈黙がすごく長く感じる。
しばらく待っていると『なし』という言葉が聞こえてきた。
「はい? なしですか?」
『そうだ』
それだけ言ってまた手に本を取り、読み始める社長。
「具体的にどこら辺がダメなのでしょうか」
『そうだな、まず、ここの襟はいらない。一気に圧ぐるしくなるから。で、ここの緩やかな感じは、無い方がいい。……そして、これは何? ……はい、直してきて』
「すべて直したら、僕のデザイン性が無くなります」
『ん? ……君にデザイン性などない』
ガーーーーーーン。
『君、この会社の事分かってる?』
「は、はい……」
『なら、真面目にやれ。こんなデザインなんだったら、いちいち持ってくるな』
~~~
『君、この会社の事分かってる? だってさ~』
馬鹿にした感じで真似するジェンさん。
「それは、さすがに酷すぎますね……」
『あーあ! もう提案しに行く勇気ないよ~』
そんな事聞いたら、私も勇気なくなったよ……。
コクンコクンと頷きながらジェンさんの話を聞く。
『あれは相当な性格の悪さだな、うん。(・∀・)ニヤニヤ』
はぁ……デザイン完成したくない……社長に会いたくないよ。先輩でさえそんな最低な事言われてるのに、新人の私なんて……はぁ。
ドン! といきなり私の肩に重みがのる。
──ビクっ
『まぁ新人ちゃんよ、頑張りたまえ!』とジェンがシスの肩を叩いて言う。
「あっ、はい……」
いやいや、ムリーーーー!!!!!
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