第17話 聖女様

山奥で偶然、出会った聖女様に山小屋へと案内された


「小屋の温度は、どうですか?寒くないですか?もう少し、焚き木を拾って来ますね。」


聖女様は、優しい!

見ず知らずの俺らに対して嫌な顔、1つせずに看病してくれた!!


「・・・看病?わたくしは、何もしてません。ただ、ケガが早く治るように祈りを捧げてただけです。」


悪党や山賊かもしれない俺達を無償の精神で救済する行為は、誰にでも出来ることでは、ない!


「相手が善人か悪人か何て、考えたことありません。」


そんな裏表もない笑顔を見せる聖女様には、本当に救われる


「すみません、チェン様、簡辛様!お待たせしました。から食材を分けて貰えました。」

「シスター、お帰り~!何度もゴメンヨ~!!料理は、ワタシが作るネ!!」


簡辛と聖女様は、直ぐに仲良くなった!

同じ女性というのもあってか、打ち解けるまでに時間は、掛からなかったようだ!!


そんな2人の会話を聞いて聖女様の素性や経緯などを知った


聖女様は、武術暴力で納める、この世界の中で、もがき苦しむ弱者を救済する為に1人旅をしているらしい!

各地で奉仕運動や支援活動など様々な手助けをして、立派な聖女様へと日々、近付けるように精進していることなど・・・


聞けば聞くほど、素晴らしい人間なのだと実感する!!


「・・・そ、そんな・・・ケガ人に料理をさせてしまい・・・わたくしは、なんて罪深き人・・・」

「―――シスター、自分を責めないで!適材適所ネ!!ワタシに出来ないことは、シスターが!シスターに出来ないことは、ワタシがやるヨ!!」

聖女様が持ってきた食材を簡辛が炊事場へと運び、料理を始める


「気にしないで下さい!簡辛は、あ~見えて料理屋で働いてたから料理は、出来るんですよ!!」

「そう言って頂けるだけで、心が救われます。」

聖女様が右手で胸の前に十字を切り、祈りを捧げる


「・・・チェン!あ~見えてとは、どういう意味ネ!!料理代は、倍取るからナ!!」

「―――金取るのかよ!この守銭奴めっ!!」


・・・俺達は、運が良かった!

あの場で聖女様に出会わなければ、屋根のある小屋どころか野外で野宿し、飲まず食わずで時を過ごすしかなかっただろう!!


・・・ありがとう、神様!

助かりました、聖女様!!


貴女のお陰で安全と平穏な時間を過ごせました!

神なんか全く信じてないけど・・・


―――聖女様の信者にならなれそうです!!


『・・・・・・オイ、処女!!』

「「―――なっ!!?」」

ロンが平穏な雰囲気をブチ壊す爆弾発言で場の空気を凍りつかせる


「下品、下品とは、思ってたけど・・・―――このりゅうは!!」

「―――あっちゃぁぁーーー!!」

簡辛が料理途中の沸騰した油を床で寝そべるチェンの背中にぶっかける


「・・・オイ、簡辛! いくらロンに守られているとは、いえ! 熱々の油をぶっかけるなんて鬼畜の所業!!動けない人間にやることかぁぁぁーー!!」

身体をくねらせる度に筋肉痛の激痛が全身に走り、チェンが悶え苦しむ


「シスター!このりゅうの悪魔の囁きに耳を傾けないでヨ!」

「・・・そ、そうだよ!コイツの発言は、俺の思考とは、全く無関係だから気にしないで・・・!!」

失礼な発言を受けた聖女様を簡辛とチェンが必死にフォローする


『・・・体力も回復してきたのに、何時までもこんな少ない食料で足りると思っているのか?』

「食っちゃ寝してるだけのクセに、何て図々しいりゅうネ!!」

ロンの発言に簡辛が声を荒げる


「争うのは、止めてください。これは、完全なるわたくしの配慮不足、他に何か食べれる物がないか探して来ます。」

深々と頭を下げて反省した聖女様が小屋から飛び出して行く


「「―――あっ、シスター!!」」

簡辛とチェンの引き止める声も届かず、外へと駆け出してしまう


ロン!今のは、いくら何でも酷すぎないか!?」

「―――そうヨ!助けて貰った恩も忘れたアルか!?」

無神経で配慮のないロンを指摘する


『・・・変だと思わないのか?』

「「・・・な、何が?」」

簡辛とチェンが声を揃えて言う


『―――食材を良く見てみろ!!』

ロンの言う通りに聖女様が持ってきた食材へ目を通す


『我の視力は、全生物の中でもトップだ!上空から周囲、何十㎞と見渡し2、3日の間は、誰にも遭遇しない場所を選んで降り立ったんだ!!』


「・・・ん?・・・何が言いたいネ!!」

『処女は、近隣の方に貰ったと言っただろう!?』


「―――そうか!この周辺には、集落は、ない!!」

「・・・ちょ、ちょ、ちょっと待つヨ!このりゅうが見逃している可能性だってあるし、この貰った食材が何よりの証拠ネ!!」

疑惑を持たれた聖女様を庇い、簡辛が疑いを晴らそうとする


『だから良く見ろと言っている!こんな山奥じゃ決して手に入らない鮮度の魚介類を!街にしか売ってないような甘い菓子を!!―――この辺りには、間違っても存在しない食べ物ばかりだ!!』

「・・・・・・!!」

反論の余地もなく、ぐうの音も出ない


「・・・ロンが言うのも一理あると思う!・・・だけど、それだけで怪しむのは・・・」

『―――何故、我を見て物怖じしない?』


「「―――っ!!」」


・・・た、確かに

言われてみればそうだ!


俺の肉体を見た人は、必ず驚き!

その度に恐れられてきた!!


―――なのに


聖女様は、この異形な肉体を見て、何故、平然と接していられるんだ!?


『まるで何処かで似たような物を見たことがあるみたいに・・・!!』


・・・そ、それなら合点がいく!

初見でこんな肉体をした人間を見れば、俺なら絶叫して100%失禁する自信があるのに・・・


普通の対応をするということは、悪魔デビルズ刺青モンモンを知っているからだ!!


『処女は、何かを隠している!それを探る為に少し長く滞在したが一度も尻尾を出さなかった!!』

「・・・な、なら、シスターは、悪者じゃないよネ?」

「探ってみよう!帰って来たら、然り気無く、なるべく遠回しに聞いてみよう!!」


・・・大丈夫だ!

あんなに優しかった聖女様を信じよう!!


―――俺らで聖女様の疑いを晴らすんだ!!

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