71~80 1日だけ作家になれるとしたら、誰になりますか。

071. 本の登場人物になれるとしたら、誰(何)になりたいですか?

▼江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』や『人間椅子』に登場するような奇妙な性癖の登場人物になりたいです。自分が生きていてそうした反道徳的で奇天烈なことをしようと思うこと自体ほぼないので、なにが愉快でそんなことをするんだろうなという興味があります。ただ、そこそこ狭くて暗い場所は落ち着くのでけっこう好きです。


072. 夢中になった作家、現在進行形で夢中な作家の名前を教えてください。

▼作家というわけではありませんが、小学生のころはやはり児童文学をよく読んでいたように思います。それも世界の怖い話や怪談話などを集めたような本が好きでした。中学生のころにライトノベル、高校生のときに一般文芸、大学生から社会人のいまに至るまではもっぱら海外文学です。何度かここでも言及していますが、ナボコフやスタニスワフ・レムは現在進行形で夢中で、おそらくこれからも夢中であり続けると思います。またナボコフほどではありませんが、ポール・オースターやオルハン・パムクの作品も気になっている模様です。個人的にはもう少し開拓したい気はしますが、いずれにせよ今後も積極的に読んでいきたいのは海外文学なので、文学者および翻訳者諸氏のみなさんにはなにとぞ頑張っていただきたい……と強く思っています。


073. 1日だけ作家になれるとしたら、誰になりますか。

▼ナボコフになりたいです。彼の目はなにを見て、なにを見透かし、なにを感じ、それをどういった思考の道すじで言葉に変換しているのか、彼自身になって知りたいという思いがあります。彼が小説の執筆においてその原点にしているだろうと思われる発言に以下のものがあるので、引用します。

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インタヴュアー: 人生において、あなたを驚かせるものは何ですか?


ナボコフ: 何ものも存在しない夜に、不意に光に溢れた景色を見せてくれる窓、つまり、意識というものの驚異です。


─ Saturday Review, 1976

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074. 編集者になるとしたら、どの作家の担当になりたいですか?

▼好きな作家がすでに亡くなっている場合が多いのですが、存命の作家であればポール・オースターかテッド・チャンが挙げられます。彼らの物語の作り方を間近で見て学びたいです。また絵本作家であればやはりトーベン・クールマン。また作家ではないですが、新書を取り扱う編集部も著者を通じて日々新しい情報に触れることができると思うので面白そうですね。記載されている内容の真偽など専門外の作品だと校閲が大変そうですが、その分やりがいも多いと思います。


075. 好きな作家に原稿を依頼するとしたら、どんな作品を希望しますか。作家名とジャンルを教えてください。

▼テッド・チャンにぜひ長編作品を執筆していただきたいです。すでに有名な話ですが彼は短編作品しか書いたことがないので、もし書くというのであれば初長編作品に携われることになるので幸せ者だと思います。個人的には『息吹』内の「商人と錬金術師の門」がファンタジーとSFとヒューマニズムの融合という感じで刺さったので、似た雰囲気で一本書いてほしいという気がします。彼のすごい点は、洞察力のある高度なSF的設定を崩さずに、かつ人間味をも失わせない物語に仕上げているという点なので、ここは大前提とした作品にしていただきたいです。


076.「あの作家に、これだけは言いたい」……ひとことどうぞ!

▼良くも悪くも言いたいことがある作家は無数に存在しているので、正直なところだれになにをどうこうとはいいません。


077. 紙幣の肖像、私ならこの文豪を選ぶ!

▼紙幣の肖像に選ばれる方というと学者が多いですが、あえて文学一本で肖像として選ばれるべきだと思う方は小川未明です。短編作品をあまた輩出した児童文学作家で「文豪」というのは少し違うかなと思いますが、国語や道徳の教科書に作品が多数採用されるなど功績としては申し分なく、作者名は覚えていなくとも、だれしも子どものころに一度は彼の作品を読んだことがあるのではないかと思います。その意味でも日本文学史的にきわめて重要な方であり、紙幣の肖像に選ばれてもまったく不思議ではありません。


078. 文章と作家のイメージが違っていた、そんなことはありますか?

▼文章と作家のイメージを一致させようと思ったことがないのでよくわかりません。が、あまりにも乖離しているとそれはそれで胡散臭くて身構えてしまうので、特別な背景がない限りあまり深く考えないようにしています。


079. あなたにとって、詩人といえば。

▼ジョン・キーツです。中世イギリスでロマン派のファンタジー色の強い詩を書いておられた方です。若くして亡くなられた寡作の方なので日本で知られた著作は少ないですが、『エンディミオン』という叙事詩が代表作です。Twitterの宣伝アカウントのヘッダーにある言葉「Here lies One Whose Name was writ in Water.(水にその名を書かれし者ここに眠る)」は、彼の墓標の言葉です。また、あまり詩人という印象はないですが茨木のり子さんも好きです。


080. 家族……この単語から連想した本のタイトルを書いてください(実在する書名に限ります)。

▼角田光代さん『八日目の蝉』です。誘拐犯と誘拐された子どもが主人公の作品ですが、たんに「家族」と一言にいってもその形態にはさまざまあることがうかがえます。2011年に永作博美と井上真央が主演で映画化もされた作品で、そちらも傑作なので機会があればぜひ観てみてください。

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