31~40 翻訳小説は、訳者にこだわる方ですか。

031. 無人島1冊だけ本を持っていけるとしたら、何を選びますか。

▼1冊……というと複数巻やシリーズ作品といった分冊になっていないものでしょうか。だとしたらさまざまな事柄が網羅的に記された百科事典を持っていきます。百科事典、意外と生き残るアイデアが豊富に詰まっていたり、単に暇つぶしや娯楽としても申し分ないと思います。さすがに無人島に1冊だけ持っていくという前提で小説作品のタイトルを挙げようというロマンチックな気分にはなりませんでした……。


032. 今、最も欲しい本のタイトルをどうぞ。

▼『淡い焔』(ウラジーミル・ナボコフ著/森慎一郎訳)です。書店に行くたび海外文学棚を見て存在を確認し「今日こそ買うぞ」と思っていても、ほくそ笑みながら手に取った瞬間現実に立ち返り「自分にはまだ早いのでは……」と考えて判断が足踏みしてしまいます。実際ナボコフの著作では最も難解な書とも呼ばれているようで、それが起因していると思います。あとは税込4000円という価格だと思います。今年中には、購入したいです。


033. 生涯の1冊、そんな存在の本はありますか? その本のタイトルは。

▼まだまだ「これさえあればほかはなにもいらない」といえるような1冊には出会えていない気がします。自分が出会ってきた作品はどれも甲乙付けがたく一長一短あり、これと選べない作品ばかりだと思っています。


034. 何度も読み返してしまうような本はありますか? その本のタイトルは。

▼ちょっと答えるのが恥ずかしいですが、これは自作全般です。ことあるごとに読み返していてまったく飽きないので、やはり自分が書いたものは自分が一番楽しめるということだと思います。また、メタフィクションのような構造を有した作品(ポール・オースター作『ガラスの街』など)は、再読の頻度が若干高いかもしれません。好きなんですよね、メタフィクション。


036. 好きなシリーズ物はありますか?

▼トーベン・クールマンさんの絵本「ネズミの大冒険」シリーズです。現在では『リンドバーグ』『アームストロング』『エジソン』の3作があります。とても綺麗な絵でネズミの可愛らしさや躍動感を描いており、物語も優しく万人におすすめします。またフアン・ディアス・カナレスさん、フアンホ・ガルニドさんのユーロマンガ『ブラックサッド』シリーズも大好きで、コミティアで来日した際にサイン本をいただきました。宝物です。小説作品ではレムの「泰平ヨン」シリーズです。


037. 本を選ぶときのポイントを教えてください。

▼こちらの回答をご覧ください。https://kakuyomu.jp/works/1177354055393385575/episodes/1177354055412790640


038. 翻訳小説は、訳者にこだわる方ですか。

▼こと翻訳小説において、この点はある意味で原作者よりも重視している部分です。沼野充義さん、若島正さん、柴田元幸さんはロシア文学、アメリカ文学を読むなら必ず一度は目にするお名前ですし、Twitterでフォローもしております。また『素晴らしきソリボ』(パトリック・シャモワゾー著/関口涼子訳)や、『アコーディオン弾きの息子』(ベルナルド・アチャガ著/金子奈美訳)など、クレオール語(宗主国の言語と現地語が入り交じった少数言語)やバスク語(スペイン・バスク地方で話される少数言語)といった話者が少ない少数言語を研究する学者が少ないなかで、さらにその文学を精彩な日本語に訳して届けてくださった翻訳者さんを心より尊敬しております。世界の文学を知るにはたしかに自前でその言語を学ぶのも手段としてはありなのですが、「広く」を目指すなら一個人の努力にも限界があります。そう考えるとやはり翻訳者の存在が不可欠であり、その意味では翻訳者こそが世界への門戸を開いてくれる立役者でもあると思います。


039. 信頼できる書評家は誰ですか?

▼書評家についてはほとんど存じ上げないのですが、山形浩生さんや松岡正剛さんは知っています(信頼しているというわけではありません)。書評一本でやっている方、現在はかなり少ないのではないでしょうか。個人的な印象としては作品執筆の傍ら依頼された書評案件に逐次対応するというかたちで活動している方が多いように思います。


040. 絵本は好きですか? 好きな方は、好きな絵本のタイトルを教えてください。

▼これは質問36で言及したトーべン・クールマンさんの「ネズミの大冒険」シリーズがそうです。またシリーズではないですが、影絵作家の藤城清治さんの絵本は作風自体が彼独自のシリーズのようになっていて飽きません。絵本は基本的にフルカラーで上質紙を用いた上製本が主たるものなのでどんなにページ数が少なくても1冊1000円以上するのが普通なのですが、この点は正直なところ4000円~5000円もする小説を買うより心理的ハードルが高いです。ただ、小説よりも刷数が少なく、また市場部分でも小説より苦境に立たされているのが現状だと思うので、どんどん買って応援したいところではあります。

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