立呑居酒屋

 ビールとナッツが届き、乾いた喉を潤すためにビールジョッキを傾ける。アルコールじゃ喉は潤わないだなんて無粋な事を言う連中もいるが、この瞬間だけは確かに潤っている。そう感じる。なので細かいことは気にしてはいけない。美味しいんだから良いじゃないか。


 ナッツを口に放り込みながらビールを煽る。ほろ酔いの身体に入れる何軒目かの“とりあえずビール”は、その日の最初に飲む一杯目のビールとはまた趣が違って良いものだ。


 小腹が空いたので少し胃袋に何かを入れよう。一枚ペラのメニュー表を手に取り、なにかちょうど良いものは無いかと目を通す。何も考えず入ったが、どうやらこの店は炭火で焼く焼き鳥やトンテキがウリらしい。焼き鳥5種盛り合わせなら、今の胃袋でも入るだろう。これと漬物、あとハイボールといったところか。


 店員を呼びつけ、焼き鳥5種盛り合わせと漬け物、それとハイボールを頼む。ビールは半分近く残っているが、ハイボールが来る頃には飲み終わっているだろう。店内の喧騒を耳に入れながらナッツを口に放り込み、ビールを煽る。程よく塩味の効いたナッツと、口の中をリセットしてくれるような清涼感のあるビール。この組み合わせは外で飲む時でも家で飲む時でも、鉄板ではないだろうか。


 あっという間にビールを飲み終わってしまった。ペースが早すぎただろうか。空になったグラスを見つめながら空虚な気分に浸っていると、すぐに店員がハイボールを持ってきてくれた。飲み物の提供に時間がかからない店はやはりいいお店だと思う。なんとなく入った店だが、かなりのだ。


 家にまっすぐ帰らず繁華街に足を向けたおかげでいい店に出会えたことに感謝し、店の場所をスマートフォンの地図アプリでピンを打ち込んだ。

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