第9.5話 わたしの心配事

「はぁ~~~~」


 すっかり辺りが暗くなった学校の帰り道、わたしは大きなため息を吐きました。

 部長と道玄坂どうげんざかくんのドタバタに疲れたからではありません。どちらかと言えば楽しかったくらいです。


 わたしが困っているのはプール掃除の件。

 正確には、プール掃除の時の恰好です。


「スク水は……さすがに恥ずかしいよ」


 紺は細く見えるので水泳の授業では重宝します。だけど道玄坂どうげんざかくんの前で中学のスク水を着るのは、お肉がハミ出たりして恥ずかしいです。


「でも一人で買いに行くのは不安だし。えっちゃんやまゆちと一緒なのもそれはそれで恥ずかしい」


 部長ではありませんが、人前で水着姿になるというのはハードルが高いです。

 もっとも、わたしと部長とでは悩む方向性が全然違うのですけど。


「どうしよう。水泳部の子って絶対みんなスタイル良いよね。こんなぽっちゃり女子は道玄坂どうげんざかくんに嫌われちゃう」



 自分でも不思議に思いました。どうしてここまで道玄坂どうげんざかくんに嫌われることがイヤなんでしょう。

 これから一緒にボランティア部として活動していくからですね。

 道玄坂どうげんざかくんはあまり男子っぽくないというか、万が一にも襲われる心配がないからすごく安心できます。


 もしかしたら多少はエッチな目で見られているかもしれませんが、これからは部長がその役目を引き受けてくれることでしょう。わたしのむにむにお肉なんて誰も興味ないですから。


「そうだ! どのみち道玄坂どうげんざかくんに見られるなら」


 わたしは閃いてしまいました。

 道玄坂どうげんざかくんとプール掃除をするのに必要な水着なのですから、一緒に買いに行けばいいのです。早速お誘いしましょう。


 善は急げとスマホを取り出して気付きました。


「まずは明日、IDを交換しないと」


 すぐに連絡先を聞いてこないのが道玄坂どうげんざかくんらしいし、これがお話しやすい理由なのかと妙にに落ちました。

 不思議と心が躍っているのは、きっとマンションの植え込みに落ちていたごみを拾って綺麗になったからです。

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