第10話 ザ、非常時めし

春が来るたびにあの震災からもうすぐ7年になるのかあ…


と遠い目をして丸3日間余震に揺さぶられ続けたあの避難生活を思い出す。


幸い近所に市指定の避難所で寝泊まりはする事ができて、飯も水も配給してもらえた。


二日後の朝にな。


その間、まさか熊本に大地震来ると思ってなかった私はろくに備蓄食の準備もせずに貴重品とスマホと充電器待って飛び出して、アパートの建物が傾いてたので外からヒヤヒヤ見ていた大家さんが電話で


「お願い、早く出て来てー!」と呼び出してくれたから助かったようなものだ。


慌てて部屋を出る時10センチしかドアが開かなかったので成程、これが地盤沈下による建物と外廊下とのズレのせいか。


と本震発生から間が無かったので割と冷静に考えることが出来た。


避難所に入ってから敷布団がわりにと段ボールを貸してもらい、やっとスニーカーを脱いで壁にもたれて…やっと一息付くことが出来たのだ。


しかし、短い睡眠を取って目覚めてから食糧を持ってない空腹地獄が翌日の昼まで続く事になる。


幸い水分だけは、避難所が支給してくれた。、が、当然近所のスーパーコンビニドラッグストアは閉店している。


従業員さん達も避難しているので当たり前だ。



飯が無い、腹が減った…


歩いて15分ほど先のコンビニが空いているというので行ってみたが食糧はほとんど買い尽くされ、手に入れたのはおつまみ用のタラの干物だけ。


この日はタラの干物と水しか口に入れず。


救いの手が来たのは翌日の朝だった。近所のパン屋さんがラスク用にとっておいたパンの耳を支給して下さったのだ。


まだ柔らかさの残るパンの耳を齧りながらありがたい…と涙が出そうになった。


さらにその昼、はるばる宮崎県からキッチンカーの肉巻きおにぎり屋さんが来て無償で一人一個ずつ肉巻きおにぎりを提供して下さった。


丸一日半ぶりの肉と米である。確実に栄養になるようによーく噛んで食べた。


さらにその昼過ぎ、近所のスーパーが臨時開店すると聞いた。


走って着いた時には既に長蛇の列が出来ていて並んでいる人はお年寄りが多かった。


15分後、ようやく開店したスーパーのお握りだのパンだのお菓子だのが並んでいる棚に皆、並々ならぬ殺気で群がりほとんど奪い取るように食糧を籠に詰めて行った。


一人三品まで、という決まりがあったのでトラブルにまパニックにもならなかったが、メロンパンを巡って一人のおじいさんと私は火花を散らし合い、生きるためだ。と脳内スイッチを入れて素早く棚からメロンパンを掠め取った。


老人と食糧争いをやってしまったよ。と向こう三年は心のしこりとして残った。が、生きるためには汚くもなれるのだ。


避難所にいても段ボールの上で寝転がり続けて腰痛が限界に達し、避難者全員のスマホから鳴る緊急地震速報のアラームでろくに眠れなかったので避難所に入って四日目の昼にいちおう鉄筋の自宅アパートに帰ることにした。


ガスは止められているけれど電気は通る。深型ホットプレートと冷蔵庫の余り物で鶏鍋を作り、冷凍していたご飯をレンチンして飯を食べた。


やっと人間らしい飯にありつけた。とその時は思った。




明日、死ぬかもしれないよ。


という私の死生観はこの時培われたものである。だからできるうちにやりたいことやっとけ。数や星を気にすると病むからどんどん書きたいこと書いて投稿しとけ。


ネットの向こうの誰かは必ず読んでくれている。


読者を信じろ。そして人間を馬鹿にした売り方だけは絶対にしてはいけない。


今日を人生最後の日だと思って生きるように。


とは尊敬する哲学者にしてローマ皇帝、マルクス・アウレリウスの受け売りだが、


でも


もしも


難事が来て生き残った時の備えは最低限食糧と水だけでもしといた方がいい。


巷では備蓄防災セットが売られているけれど、割と高価だと思うので…


近所のスーパーやドラッグストアで缶詰とパウチとレンチンご飯を9食ぶんと一人につき保存水15リットルは確保するだけで十分だと思う。


腹が減ってすぐ買い物に行けない時にこれを食えばいいローリングストック方はなかなかいい智恵である。


と長々書いた私も今から缶詰とインスタントラーメン買いに行くところだが。











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