おきがえ

ゲーム→https://kakuyomu.jp/works/1177354054934585268/episodes/1177354055265093632

対戦相手→https://kakuyomu.jp/works/1177354055265660855/episodes/1177354055303768266




「最後の最後にイロモノが来たな⋯⋯いや、全部そうか」


 高月あやか。

 自己顕示欲の果てに世界の摂理すら超えてしまった女傑。彼女はマッパで下着コーナーを物色している。


「これ俺様に似合う?」


 淡い水色のレースの一式。裸を見られても恥ずかしくないタイプの店員が小刻みに跳ねる。肯定らしい。彼は喋れないのだ。


「五枚か⋯⋯少なくね?」


 タグ入りの服を着なくてはいけないのは最低五枚なのだが、常にギリギリを攻める彼女にしてみればこの通りだった。脇にある更衣室に入らず、その場で下着を試着する。


「もうワンサイズ上」


 店員を顎で使いながら、戦略を組み立てる。真正面からぶん殴って、衣服を剥ぎ取ってしまえば済む話ではある。だが、警戒をするに越したことはない。高月さんはコスプレエリアに足を進める。


「へー、こんなんあるのか」


 ブラとショーツ、敢えて若干きつめのサイズを身につける。適当にぶん取ってきた衣服を雑に身につけ。


「俺様はこれでいくぜ!」


 ドン★

 謎の効果音を響かせ、高月さんは獰猛に笑う。彼女には勝利のビジョンが見えていた。


「はっはっは! 『そりゃねえぜ!』て言わせてやるよ!」







 ジョッキ一杯のコーヒーをグビグビ飲みあげる。


「プッハアア!! このために俺様は生きていたあ!!」


 見栄を張ったブラックコーヒーをノリノリで飲み干す。カラシの効いたホットドックを口一杯に頬張り、高月さんは窓の外を見る。


「すんげえ吹雪。こんなの見たことねえや」


 マイナス50度の、極寒のブリザード。猛吹雪で視界が確保できない。ホワイトアウトという奴だ。そして、見える限りでも分厚い氷だけ。まるで南極大陸のようだった。

 衣服を剥ぎ取る余興も、この舞台ならば恐るべき死合に変貌する。どんな敵が現れるか分からない。ある意味強い信頼を寄せるエンドフェイズやメフィストフェレスが敗れたのだ。あまり楽観はできない。


「さて、時間か」


 渡された携帯端末を弄びながら、極限の極寒世界に歩み出す。信じられないことに、彼女は裸足だった。


「俺様の相手はだーれだ?」


 大きく息を吸い込む。肺が凍りつきそうだった。


「リロード。リロード! リロードッ!」


 氷の大地にヒビを入れるほど、強く深く踏み込む。


「インパクトマグナムッ!!」


 放つ拳撃。膨れ上がった威力は猛吹雪すら吹き飛ばした。一気に開けた視界。高月さんは視界を確保する。そして、聳え立つ敵の姿を見た。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯?」


 最初、理解が追いつかなかった。敵はあまりにも巨大だった。脱がし合いというゲームの特性上、なんとなく自分と同サイズの相手を想像していたのだ。

 頭が赤、胸と腰が黒、足が緑で左手がピンク、右手が黄色の人型ロボット。全長51m。全長1.5メートル強の少女は見上げるばかりだ。いくつもの四角が組み合わさったデザインで、彼女が知る由もないが2000万馬力。背中のジェットパックがイカしてる。


「こりゃ、なんだ――――」


 五体合体ガソリンオー改。

 なんせ戦隊ヒーローの合体ロボだ。高月さんは目をキラキラさせながら見上げた。まさか野球拳バトルでお目にかかれるとは思っていなかった傑物。少女の少年心に火が着いた。

 それはそれとして、感じることはあった。

 高月さんは言うのだ。



「――――そりゃねえぜ!」

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