第3話 (空くんが高校生……。あんまり実感わかないね)


「んー! いい天気だよね! 入学式びより! 通学路も晴れやかで楽しい!」

「…………」


 だなあ。桜も咲いてるし春って感じだ。

 ……って伝えてくれ。ウミ姉。

(うん。わかったよ)


「うん、春だよ春! 今日から新しい学校生活だもんね! 新しい生活が始まるときはいつも春風が気持ちいよね!」

「…………」


 今日から高校生だし、なんか今までの春とはちょっと違う気がするんだよな。小学校から中学っていうのもだいぶ変わったと思うけど、高校生はなんか、大人になる一歩手前って感じがして、今まで以上に新しい春っていうのを感じる。

 そう思わないか? ウミ姉。

(そうだね。私もそう思うなあ。空くんが成長してるのをひしひしと感じてる。でも、ちょっとはかまってあげないとかわいそうだよ? ハナちゃん)

 わかってるけど……。登校中にハナと話したら、中学の入学式みたいに変な奴扱いされるだろ。今は他の生徒もちらほら見えるし。会話は分けたいんだ。……別に、クラスメイトに関わる予定もないから、気にする必要はないんだけどさ。でもやっぱり、怪奇の目で見られるのはいつになっても慣れないっていうか……。

 家に帰ったら沢山話してやるから我慢してくれって伝えてくれないか?

(さすがのツンデレだね。空くん)

 今の話でどうしてそう思った。

(あれ? 家に帰ったら沢山話したいって、デレだと思ったんだけど……)

 ウミ姉、俺の頭の中ちゃんと見えてる?

(見えてるから言ってるの。ハナちゃんのこと大好きなくせに)

 ウミ姉、黙ってください。


「あ、そらくんそらくん! 学校だよ! あれ、学校だよね! 今日からそらくんが通う、快晴高校!」


 俺はハナの言葉で意識を現実に戻す。

 ウミ姉と話しているとつい現実を忘れてしまうな。ウミ姉の声は天使だからな。仕方ない。

 快い晴れという名前にふさわしい明るく青い屋根。雲のように真っ白な壁をした校舎。創立から数年くらいしか経っていないというのは本当のようだ。


 心臓がバクバクと言っているのがわかる。俺はとてつもなく緊張している。

 なぜなのか、なんとなくわかっている。


 今まで何度も失敗してきた。次こそは、絶対に成し遂げる。


(恋人、ヘタレなのにできると思ってるんだ)

 違う。恋人じゃないから。

(生徒会長は空くんには向いてないかな)

 違う。俺だって御免だそんな役割。

(え、そんな……まさかまだ諦めていなかったなんて……ハーレム)

 一度もハーレムを作りたいなんて言ったことないからな! ちょっと興味あるけど。

(友達は作らないの? 作れないのか)

 作らないんだよ! そもそも俺は平穏に過ごしたいだけなんだからな。

(なんか正体を隠す系の俺つえーラノベの主人公みたいなこと言ってるけど、安心してね。空くんは至って平凡だよ)

 うるせえっ! 結構傷つくからなそれ!


 俺は絶対に、クラスメイトの前でハナやウミ姉とは話さない!

 目立たない! 空気になる! 必ず!


(こういうのをフラグっていうのかな)

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