第51話 倒された？
俺が目をさますとそこは知らない天井だった。
「ここは？」
「ユウちゃん！」
俺が状況を把握する前にチカが飛びついてくる。
「えっ、なに？チカちゃんどうしたの？
それにここはどこ？」
「ここは近くのホテルだよ、アズサさんに用意してもらったの、あっ、アヤメさんは源グループの人に送ってもらって、お家に帰ってもらったから安心して。」
アヤメも残ろうとしたのだが、宿泊許可まで取ってなく、親の目を考えて帰宅することになっていた。
「えーと、何時間寝てた？」
「3時間、隣の部屋でリョウさんも寝てるはずです・・・寝てるのかな？」
「あいつもか、呑んだ酒が強かったのかな？」
「・・・覚えてないの？」
「何かあったの？」
「シモちゃんがね、お歌の邪魔をしていた二人をこう・・・」
チカは水平チョップを見せてくれる。
「・・・俺、幼女にのされたの？」
「そ、そういうことかな・・・」
チカは言いにくそうにするが非常に恥ずかしい。
「チカちゃん、このことは組員にはナイショだよ。」
特に倉田さんの耳に入りでもすれば強制訓練が待ちかねない。
「うん、わかってる。ちゃんとお父さんに宿泊理由は大人に成る為って言っておいたから。」
チカは少しは頬を赤く染める。
・・・その理由も別の意味でまずい。
「ちょっと待って、チカちゃんは部屋を別に取ってるよね？」
「ううん、一緒の部屋だよ。
アズサさんに何部屋も取ってもらったら悪いでしょ？」
「大丈夫、アズサさんならそんなことを気にしないから。」
「でも、もう遅いかな♪」
「くっ・・・」
部屋を見回すが味方が誰もいない。
ちなみに他のベッドも見たらない、今寝ているキングサイズが１つだけだった。
「ちょっと待とうか、流石にアズサさんに取ってもらった部屋でというのはね。」
「大丈夫、頑張ってって言ってたから。」
「アズサさん！！」
アズサも待たされる気持ちには非常に理解がある。
チカの状況を理解した上でわざわざ複数あったベッドを片付け、キングサイズのベッドを１つ設置するほどだった。
俺が壁際に追い込まれる中、ドアをノックする音が聞こえる。
「チカちゃんお客さんだよ！」
「今留守です。」
「いるから！こんな夜中に来るぐらいだから緊急に決まっている！はいはい！すぐ出ますよ〜」
俺は慌てるようにベッドから降りドアへ向かう。
「もう！」
チカは頬を膨らませていた・・・
「はいはい、俺を助けてくれたのは誰ですかね・・・ゲッ！」
扉を開けるとそこにはヨシノブが立っている。
「おいおい、何で嫌な顔をするんだよ、こっちは急いで来たというのに。」
「いや助かった事に違いは無いけど・・・
お前が来るとは。」
「そりゃな、うちの娘がお前をのしたと聞いたからな、慌てて来たよ。」
「そうかシモちゃんはお前の娘だったか、ってまあ取り敢えず部屋に入れよ。」
俺はヨシノブとシモを部屋に案内する。
「ユウちゃんそちらの方は？」
「チカちゃんは初対面か、こいつはヨシノブ、色々世間を騒がす迷惑な奴だ。」
「裏稼業にいったお前が言うな、そもそも裏稼業ならちゃんと犯罪行為をしろよ。」
ヨシノブはチラリとチカの方を見る。
その目は俺の事をロリコン野郎と言っているのは明白だった。
「ほう・・・ヨシノブ、お前も言うようになったな、さすが神とやらになった奴は違うな。」
「ちょ、何を言ってる、急におかしな事を言うな！」
パンパン！
俺は2回オジギをしたあと手を叩きもう1度オジギをする。
「神へのお参りってこうだっけ？」
「てめぇ喧嘩を売ってるんだな？」
「お前からだろ？」
俺とヨシノブは互いに睨み合う。
「おとうしゃん、やめるのよ、シモは誤りに来たのよ。
けんかをしにきた訳じゃないのよ。」
ショボンとした表情でシモはヨシノブの裾を引っ張っていた。
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