第50話 ライブ会場には

買い物を済ませ、ライブ会場に戻るとだいぶ人が集まって来ていた。


「人が多いです。」

あまりの人の多さにアヤメは固まっている。

「これぐらいは集まるだろ?」

「ミウさんのライブですし。」

俺とチカは慣れたものであった。

俺とチカはこれまで一緒に見に来たこともあったので特別感は無かったのだった。


「うにゅ〜お人が多いのよ、アズ姉ここでミウが歌うのよ?」

アヤメと同じような感想をもらしている声が聞こえたので振り返るとそこには、源グループ後継者の源アズサと小さな少女、そしてリョウの姿があった。


「・・・子持ちか。」

俺はボソリと声に出し、振り向くのを止める。


「誰が子持ちだ!」

俺の声が聞こえたのかリョウが青筋を立てて俺の肩を掴んでくる。

「リョウ、お前も勇気があるな、嫁さん連れて愛人のライブに子連れで来るか?

もう少し気を遣えよ。」

「嫁でも愛人でもまして子持ちでも無い、この子はヨシノブの娘のシモちゃんだ。」

「ヨシノブの子供か?うん、似てないな。」

「養女だからな。」

「あーなんか色々ありそうだ、あいつ変に優しい所があるからな。」

「まあその通りなんだが・・・」

「それで何で家族連れになった?

お前がカラカイに来るぐらいは予測していたが。」

「出かけるときにシモちゃんに捕まった。」

「お前、こんな幼女に捕まるぐらいに鈍いのか?」

「この子普通じゃないから・・・」

リョウからくたびれたお父さんの哀愁が漂っていた。


それから各自の自己紹介をおえ、話を聞くとリョウ達はVIP席を用意しているとの事でそれならばと俺達は一緒に見ることにするのであった。


「ミウが立っているのよ、お歌が上手なのよ♪」

「凄いね、シモちゃん、ミウ様のライブを聞いちゃってるよ♪」

「うにゅ、ライブを聞いてるのよ♪うーにゃーなのよ♪」

シモははしゃいで一番前でミウを見ている、その横で興奮したまま騒いてるアヤメの姿もあった。

共にはしゃいでいるもの同士、シンパシーを得たのか、気がつくと肩を組んで一緒に歌い出していた。


「お前の妹、すごいな。」

リョウから訳のわからない評価を受ける。

少女と妹が仲良くするのがそれ程変なのだろうか?

「しかし、今回は悪かったな、少し強引だったな。」

「お前の家庭事情は知ってる、妹にいい格好したかったんだろ?」

「まあな。」

俺とリョウは椅子に座り酒を酌み交わす。


「それでお前に子供を預けてヨシノブは何をしているんだ?」

「あいつはなぁ・・・何をしているんだか。」

リョウからため息が漏れる、どうやら苦労をかけられているようだった。


「まあ頑張れ、目立たなかったアイツが今一番目立っているからな。」

俺はニュースを騒がすヨシノブの姿をテレビ越しに知っていた。

何故あいつは普通にワールドカップを観戦するということが出来ないのだろう。

まあ関わらなかったら笑い話で済む話だった。


「たまにはお前も顔を出せ、巻き込んでやる。」

「お断りだ、それに日陰者が表に出るわけにはいかないだろ?」

「そんなのは盃を貰ってから言いな、この見習い。」

「てめぇ、人が気にしていることを!」

 

「うるさいのよ!」

幼女の声が聞こえたかと思うと俺の意識は無くなっていくのだった・・・


飲み過ぎか?

薄れいく意識の中で少し酒を控えるかと思うのであった・・・

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