第44話 おクスリは・・・

「これが媚薬?」

ユウヤの元に怪しげな薬が届く。

「そうです、これを飲んだ女は男を欲しくてたまらなくなるのです。」

俺に説明するのは科学者の牧村ヒカリだ、研究内容は感染症対策の新薬を作っているはずだったのだが、何を思ったのか媚薬を持って俺の所に来ていた。


「バカバカしい、こんな薬に頼るなよ。」

「何を言うんですか!これは男の夢です!」

「お前は女だろ!」

そうヒカリは女なのだ、しかも26歳とまだ若く知的美人なのだが、どことなく残念な女である。


「ふふふ、研究に性別は関係ありません!私は作りたい薬を作るんです!」

「格好良く言っても、出来たものは媚薬だからな!」

「ほらユウヤさん、これを使えばどんな女でもあなたのものですよ。何なら私に使ってみますか?」

「お断りします。

それに俺はそんなのに頼るのはどうかと思うし。」

「あなたはそれでも男ですか!

男なら女をメチャクチャにしたい欲求があるはずです!」

「決めつけるなよ・・・そもそも女の子がそんなことを言うもんじゃ無い。」

俺とヒカリが押し問答していると他の組員もやって来る。


「ユウヤさん、何を騒いでいるんですか?えっ、媚薬・・・」

話を聞いたマナブは少し視線が怪しい、媚薬が気になっているようだった。

「マナブ、こんな物に頼るなよ。」

「た、頼りませんよ!」

「怪しいな・・・」

俺がマナブに疑いの目線を向けると他の組員も媚薬を見つめている。


「お前ら・・・これは俺が預かる。ここに置いていたらお前らが悪さに使いかねない。」

俺は媚薬をポケットにしまうのだった。

マナブ達はそれを惜しそうに眺めていた。


「ユウヤ、よこせ。」

その日の夜、おやっさんに呼び出される。

「はい?何の話ですか?」

「媚薬だよ、媚薬。お前が持っているんだろ?」 

「はぁ、おやっさんもですか?そもそもおやっさんはモテるから媚薬に用事ないですよね。」

「いやある!媚薬で淫れた姿なんて楽しいじゃないか!」

「はぁ、おやっさんのフェチはどうでもいいです。そもそもこんな物、効果なんてないでしょ?」

「いや、ヒカリがワザワザ作ったんだ、きっと効果はある!」

ヒカリの評価は高い、クセはあるが天才の名をほしいままにしており、この媚薬の効果も否定しきれないものがあった。


だから、俺はおやっさんに呆れつつも媚薬を渡す事を拒否する。


「あの薬は捨てました。」

「嘘だな。」

「何で即答!」

「ヒカリが作ったクスリを簡単に捨てれる訳が無い。さあ出せ。」

おやっさんの言うとおり、ヒカリのクスリは危険すぎて簡単には捨てれない。

単純に下水に流したら環境破壊なんてものじゃない。だから厳重に封をしているのだが・・・


「一応、人が飲む物だから害は少ないから大丈夫大丈夫だと思ってます。」

俺は心にも思ってないことで煙に巻こうとする。


「大丈夫な訳が無い!用量療法はちゃんと守らないと・・・死人が出るぞ。」

おやっさんの目はマジだった。


「しかしですね、媚薬を使って女性にどうとかするのはどうかと・・・」

「堅いこと言うなよ、ちょっとだけだって、なあ。」

「だめです!」

「じゃあ、お前もチカに使っていいから。」

「使いません!そもそも娘を何だと思っているんですか!」

「大丈夫だ、お前なら使っても問題ない。」

「問題あります!」

俺がおやっさんを非難しているとチカが顔を出してくる。


「ねぇ、ユウちゃん何をつかうの?」

「チカちゃん?」

「ねぇなにを使うのかな?」

「な、何でも無いからね、使うものなんてないよ。」

「・・・誰に使う気なのかな?かな?」

「き、きいてたね!誰にも使わないから!」

俺は目が笑っていないチカに迫られている。


「チカ、ちゃんと媚薬を確保しろよ。」

「さあ、出してユウちゃん。そんな物必要じゃないよね?」

「・・・はい。」

俺はチカにクスリを渡すのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る