第42話 騒動

ゲレンデにでた俺達は頂上に来た。

「おいおい、初心者は下で遊んでろよ。」

「ねえ、君、初心者の男と遊んでも危ないだけだよ、俺達が手取り足取り教えてあげるから・・・」

さっきの二人組が頂上に来ていた。


「結構です。私は彼と遊びに来てますので関わらないでください。」

「そんな軟弱な彼氏なんかほっとけよ、しかもおっさんじゃないか、君みたいな可愛い子には合わないよ。」

「合うか合わないかは私が決める事です!

それにあなた達より何倍もかっこいいですから。」

チカはハッキリと拒絶するものの、全然聞こうともしない。


それから俺達は無視して滑るが二人組はずっとつきまとってくる。

リフトに乗るときも無理やり相席をしてきてずっとチカに話しかけてくる。


「君達、いい加減にしてくれないかな?」

俺はあまりに鬱陶しくなり二人を注意する。

「おっさんには関係ないだろ。」

「若者の恋愛に口を出すな!」

ただ何度言っても聞く耳を持たない。


「はぁ、ユウちゃん、これじゃ楽しめないよ・・・」

「折角のゲレンデだけど・・・もう止めるか。」

俺とチカは道具を返して宿に帰ろうとするが・・・


「もう終わりかい?それならどっか遊びに行かない?」

「俺達いい所を知ってるんだ、一緒に行こうぜ。」

「もう、いい加減にしてください!」

チカは纏わりついてくる二人に遂に怒り出した。

「なんだよ、俺達は君を楽しませてあげようとしてるんだ、ツベコベ言わずについてこいよ。」

「誰があなた達について行くんですか!

私には彼がいるんですから他を当たってください!」

「うるせぇ!そんな軟弱なおっさん、俺達がやる気になればなんとでも出来るんだ、痛い思いをしたくなければさっさと来いよ!」

男の一人がチカを掴もうとする。


俺はその手を掴み捻り上げる。

「いてて、てめぇ離せよ!」

俺は乱暴に離す。

「子供のナンパと放置していたが流石に度が過ぎるな。」

「なんだとてめぇ、こっちは地元なんだ、一声かければ幾らでも数が揃うんだよ。

おい、みんな出てこい。」

男の言葉に同じ年ぐらいの子が十人程出てくる。


「そこの女も黙っていれば俺達と気持ちいい事をして終わりにしてやっても良かったのに、こうなった以上、全員の気が済むまでヤりまくってやるからな。

ガバガバになっても恨むなよ。」

男は下卑た笑いを浮かべる。


「お前らこんな事をしているのか?」

「旅行者ならこっちに長くいれないだろ?

泣き寝入りしてくれるからな。

まあ、録画もするから何も言えないだけかもだがね。」

チカは怖いのか俺の腕にしがみついている。


「はぁ、てめえらみてぇな悪党なら加減はいらねえな。」

俺は軒先のツララをへし折り、男に構える。


「なんのつもりだよ、俺達を刺すつもりか?

これはいい、刺してみろよ。その瞬間お前は犯罪者だぜ。

ほれ、どうした。

粋がってるんじゃねえぞ、おっさん。」

一人の男が前に出てくる。

俺は迷わず、男の頬にツララを刺す。


「ぎゃあぁぁぁ!!」

刺された男は悲鳴を上げる。

「こ、こいつマジで刺しやがった!」

「こんなことして、てめえの人生終わったぞ!」

男達は次々と非難してくる。


「だからどうした?次はどいつだ?」

「警察に突き出されたく無ければ、女を差し出せよ!」

男は少し震えながらもチカを差し出すように要求する。

「差し出す訳がないだろ?

さあ、次は誰が刺されたい?」

俺は痛みで地面に転がっていた男に刺さっていたツララを踏み、反対側まで貫通させる。


「があぁぁぁ・・・」

男の声にならない悲鳴が漏れる。

「こ、こいつ頭がおかしい・・・」

「だ、だれか警察呼べよ。」

だが自分達の悪行がバレるのが怖いのか誰も警察を呼ぼうとしない。


「何だ、警察を呼ぶんじゃないのか?」

「てめえ前科者になるのが怖くないのか!

会社を首になるぞ!」

「前科者?その程度で首になんてならないなぁ・・・

箔が付いて丁度いいぐらいだ。」

「えっ・・・」

この言葉に気づいた者がいたが・・・


「ユウヤさん、何事ですか!」

「シュン、こいつらチカを攫って輪姦つもりだったらしい。」

「・・・ほぅ、許せねぇなぁ。」

普段穏やかなシュンも一気にキレる。

そして、緊急連絡を回す。するとゲレンデに来ていた若衆20人がすぐさま集まって来た。


「こいつらがお嬢を・・・」

「ユウヤさん、ここは私が代わりに行きますので。」

「いや、俺の前科をつけるのに・・・」

「ユウヤさんにつける必要はありませんぜ。」

「そもそも、身体が出なければ問題無いのでは?」

既に十人の始末方法まで話が進み始める。


「お、俺達に手を出したら、山林組が黙っていないぞ!」

恐怖に負けたのか、男の一人が口を開いた。

「そうか、山林組とやらがお前のケツ持ちか・・・」

俺はすぐにおやっさんに連絡を入れる。


「おやっさん、今いいでしょうか?」

「なんだ?もめ事か?」

「ええ、チカを攫って輪姦そうとした奴らから、山林組とやらがケツ持ちをしていることがわかりました。

これから戦争に入りますが構わないでしょうか?」

「山林組か・・・そっちは俺が方を付ける。

そこのガキどもの始末は任せた。」

「はい、社会復帰できなくしておきます。」

俺はあっさりと電話を終える。

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